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木と森:楽器

木を見るのか森を見るのか。

楽器の習得において、①ひとつの技術をとりあえず出来るようにすることも、②それを磨いて柔軟に応用できるようにすることも、③とりあえずいろんな技術を幅広く身につけることも、どれも必要だ。

例えばポジションについて。弦楽器は音程が命だけれども、ひとつのポジションで音程が取れるまで次のポジションを習わないと言っていたらいつまでも弾けるようにはならない。
なんとなくできるようになったら次に進み、どんどん進み、時々確認しては精度を上げ、人前で聞かせるくらい磨くこともし、また基礎を満遍なく確認する。開放弦やオクターブやフラジオレットの位置関係が分かってくると、俄然音程が定まってくる。

森をどんどん広くしていくことで、1本の木の適切な在り方が分かるようになることがある。

1本の木を完璧にしようと拘りすぎると、かえって歪でバランスの悪い木が出来上がってしまう。だから、どんとん広げる。広い森の中にバランスよく生えている木々が、全体として有機的に活かされているのが良い。

もうひとつ例えを。
速く弾くためには、まずゆっくり弾けてなくてはならない。それは真理。
でも、速く弾いているように聞こえるためには、ゆっくり弾くのとは違う体と耳の使い方をする。それは速く弾くこと自体の練習が実際にはたくさん必要。もちろんまずはゆっくり弾けるようにするのは当然だけど。
木と森。
ゆっくり弾ける。はやくも弾ける。その両方で歌い方や重心の移動の仕方、弓の節約や音が抜けないようにすることなど、違いを意識できること。

頭の中にゴールの音楽があって、そこに近づくために登っていく階段があって、どこの段が足りないかとか、どのルートが近道かとかそういう試行錯誤が必要。
それほどパターンは多くなくて、いくつかのお決まりの練習項目があり、工夫していれば最短経路が出来上がる。スケールとアルペジオを基本として、タッカのリズム練習など。そういう工夫を常に考えること。

速く弾く箇所を、口でも速く音名を読み上げられるかを確認するのも、意外と大事だ。見ていても認識していないことがある。

何が納得いかないのか。どんな練習をするとそれをクリア出来るのか。問題の箇所はどこか、厳密に特定し、その部分を取り出して重点的に練習する。

チェロの左手って、本当に必要な力はすごく小さい。ましてや速く弾く時にはもっと楽に弾く必要がある。ともかくその音が出ておればいい。大事なのは腕の重みが適切に弦に載っていて、指がバタバタせず、フォームがスムーズに平行移動していること。あと、1本ずつ上げ下げするのではなくて下の指を押さえる時は上の指も同時に押さえる、つまり小指を押さえる時は4本押さえている。それが先を読んだ正しい位置に指が開いていること。指は弦に、ぎゅっではなくすっと載せる感じ。

硬くなく、柳のように指板を押さえる。ビブラートはリラックスして、平行移動。ビブラートも、速度調節が出来ること。


練習の目的は、出来ないことをできるようにすることだ。

音楽は、聴覚、視覚、触覚、運動神経、空間認知、図形的認知、いろんなものが複雑に絡まっているので面白い。

#楽器 #技術 #木を見て森を見ず #早く全体像を #完璧を目指さない #成長を目指す

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