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ミリスパ定期公演11 〜新穂純麗プロデュース〜

未完成リップスパークル(以下ミリスパ)の定期公演が新宿NINE SPICEで行われた。前日の、同じ芸能事務所アクセルグローに所属しているCUPIDOLICの2周年ワンマンライブの興奮が覚めやらぬなかでの開催となった。

定期公演は3人のメンバーがひとりずつ順番に企画を出してプロデュースしている(次回は例外的に事務所プロデュース)。運動会企画や昭和アイドルカバーなど行われていたようで、今回はメイドコスプレでキュートさを追求する趣向らしい。

ミリスパのことを書くのは初めてであるが、ミリスパはアイドル界ナンバーワンのパフォランを誇るグループである。文句なくナンバーワンである。私の絶対的推しグループである。ナンバーワンであるがゆえに、どう書いていいか、書いて表現することが恐れ多くてたじろいでしまっていた。
しかし、今日は書こうと思った。
ピンクのブラウスの上に薄いブルーのメイド服でステージに現れ、M1 SWEET SWEET、M2 ファンファンファンタスティックと、装いどおりのキュートなナンバー。これらを生で聴いたとき、久しぶりに浴びているこの感覚を「清涼感」という言葉で表せるのではないか?もしかしたらこの「清涼感」という言葉をたよりになにか書けるのではないか?ふと、そんな気がした。

ファンファンファンタスティックの清涼感、水滴のような電子音で奏でるメロディは憎いほど正攻法だ。でもそれを陳腐にしない。それは楽曲そのものでもあるし、メンバー三人の技量の賜でもある。
「わかっているのに、何度聞いてもすごい」
ミリスパのライブを見て毎回ため息とともに心の中でつぶやくことだ。

ミリスパはアイドルの教科書のようだ。未完成ミュージック(M8)のようなロックチューンもレザーの衣装なしで決めてみせる。私信津々恋愛CHU(M9)、ガチ恋♡Melody(M5)のようなエピソード曲、めっちゃラブ♡サマータイム(M7)のようなコミカルな曲、そして映画の主題歌になった加速FANTASYやStarlight Storyなどのエモーショナルな曲まで、ありとあらゆるジャンルを歌い、踊りこなし、それでいてミリスパという個性と一貫性を持っている。恐るべき完成度。見た瞬間、誰もが「どこが未完成やねん!」とツッコむだろう。

みんな似たような曲になりがちなポピュラーミュージックにおいて、まったく飽きることなく、複雑ではないが、Cメロ、落ちサビの演出など、ありとあらゆる引き出しをみせる音楽プロデューサーの才には脱帽である。完全なテクノポップかどうかはわからないが、それを基調としているところは、テクノポップの黎明期に興奮した私の年代からすると、Perfumeのブレイクとともにうれしいところだ。
そしてまた、それを6年にわたり、同じ楽曲でもステージごとに違った魅力をみせるメンバーのスキルは毎回うならされる。同じ曲を飽くことなく聴きに行けるクラシック音楽のコンサートのようだ。

最近のライブではいたずらさまーキュンラプソディ(M6)をよく聴くようになったが、それ以外のキュート系の曲にややご無沙汰していたところ(私がただ単にそのようなライブを逃していただけかもしれないが)、このように前面に出してきた今回の企画は、私のみならず引きつけられたファンは少なくなかったと思う。

定期公演ならではのカバーだが、TicTokでバズっているHoneyWorksの「可愛くてごめん」ここでもキュート系を持ってきたのだが、まさかの歌詞が飛ぶ事故。練習不足と平謝りのメンバーだったが、やはりここでも「素人芸の笑って許して」とはちょっとレベルが違う。音楽としては壊れていなかったし、サビの「可愛くてごめん」のフレーズのハーモニーはグッと引きつけられた。
2010年のショパンコンクールで、女性2人目となる優勝に輝いたのはロシアのユリアンナ・アヴデーエワだが、彼女はコンクールの最終日、コンチェルト1番をミスタッチしたが、問題とされなかった。初来日した際には最初の女性優勝者、マルタ・アルゲリッチの前でこのコンチェルト1番をノーミスで演奏しきって喝采を浴びた。それからちょくちょく来日し、私が聴きに行ったときはショパンの時代の古いピアノでこのコンチェルトを演奏したが、コンクールと同じどころをまたミスタッチした。それでも、それが問題とされず、ショパンプレイヤーとして確固とした地位を築いているのは卓抜した音楽性故である。今日の彼女たちのミスはこれと同等である。謝ったり言い訳する必要はまったくなかった。HoneyWorksの曲を台無しにして歌っている、謝るべきグループは他にあると思う。

ショパンコンクールでのユリアンナ・アヴデーエワ

こんなミスと盛り上がりのせいか、キュートに滑り出したライブもやや混戦模様に。「脇」関係のissueで迷走。まあ、百戦錬磨のメンバーだけに、「素」をみせてくれるのも一興ですが、「素」を前面に出している女系家族に育つと、こういうときにあまり触れて欲しくないところもなくもない。男の前で「女子校」のノリはあまりウケはよろしくないものです。その辺をthroughしている雪梨さんの立ち回りがおもしろい。ちょっと年の離れた新メンバーが入るとこういう局面もやりにくいから今のうちにやりたかったのかな?とも考えた。

https://twitter.com/milispa_idol/status/1594329725853261824?s=61&t=N7ykc2WkWI6Aul6H1HryFA

いつになく「脇」問題が尾を引いたが、気を取り直して未完成ミュージックと私信津々恋愛CHUという、最近の対バンでも多用されるパターンで無事に締めた。

ウイバナさんのときも書いたけれど、なぜ、このステージが1000円なのか。そして無銭だったり、ディスカウントされるのか。ユリアンナ・アヴデーエワのショパンとなにが違うというのだろうか。
どんな環境にも屈しない絶対的パフォーマンス。同じテクノポップ系のPerfumeにできたこと、ドームだって明日にでもできるスキル。美しい七瀬さんの舞、情熱的でパワフルな新穂さんのボーカル、キュートな雪梨さんのビジュアル、すべてアリーナのモニタで映し出されて、響き渡らせてしかるべきもの。しかもPerfumeと違って生歌でできる。そう、生歌なのに、生演奏をつけてあげられていない。もどかしい。どうにかして実力に見合った評価と舞台を手にして欲しい。

パフォーマンスだけでなく、今日の定期公演はミリストが熱かった。昨日のCUPIDOLIAN'Sに負けじとばかりの声援。新参者の私にはわからないコロナ前の声出し; 由緒正しいミリスパのコールとミックスをミリストのみなさんに見せていただいた。推しである七瀬さんの自己紹介のときには「ポッポー」と言うことをはじめて知った。どの楽曲だったか、後ろに下がって雪梨さんにウサギ跳び(しゃがまない)をしながら進むのは壮観だった。
この密度で、この熱さで、セレネb2いっぱい埋められれば、そして次の段階に登れれば、そう思った。

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