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妄想孤独インタビュー【宇佐江、ネコ似顔絵について語る。】



──まず基本的なことから伺います。あらためて、「ネコ似顔絵」とはなんでしょう。

宇佐江:ネコ似顔絵というのは、私が考えた“人をネコ化して描く似顔絵”のことです。

──ふつうの似顔絵とはどう違うんですか。

宇佐江:顔をネコ化するという特徴以外でいうと、ふつうの似顔絵は「表面的」な部分を似せて描くものかなと思うんですが、私のネコ似顔絵はその方の空気感、佇まい、姿勢、仕草とか。そういったことも含めて似顔絵にする、自称「雰囲気似顔絵」です。色紙の中にどれくらいのサイズでその人を入れる(描く)かっていう、構図や余白も雰囲気に繋がると思って意識しています。

──所要時間や場所はどういった形で行われてますか。

宇佐江:時間はだいたいおひとり20分です。場所は今のところカフェとか雑貨屋さんとか、そういったお店の端っこの1テーブルをお借りしてやることが多いですね。似顔絵中はそのお店のドリンクを片手に、気軽な感じでご参加いただいてます。

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──どういうきっかけで始められたんでしょうか。

宇佐江:もともと、私が『ミュージアムの女』という人をネコ化した美術館漫画を描いていて(現在も岐阜県美術館twitter、Facebook、Instagramにて連載中)その書籍(2017年/KADOKAWA)の出版記念イベントを―残念ながら今、店舗はなくなってしまったんですが、「長月さん」というお店でやっていただくことになったんです。その打ち合わせ中に、店主さんから「例えば私をこの場でネコにして描くこともできるんですか?」と訊かれて。「やったことはないですけど、やろうと思えばできると思います」ってその場の勢いでさらさらっとその場にいたスタッフさん3名を描いたんですね。それをすごく気に入ってくださって。「これイベントでもぜひやりませんか!?」というふうに誘っていただき実現したのが、似顔絵会の始まりです。

──そのままコンスタントに開催を?

宇佐江:いえ、最初は長月さんでやらせていただいた1回っきりだったんです。その次は2年後、岐阜市の星時さんっていう喫茶店でトークイベントと合わせてネコ似顔絵を行いました。それで久しぶりに似顔絵を描いた時に、なんか…「似顔絵描くの楽しいな」って自分で思えてきて。その時は、他の内容もあったので似顔絵に割ける時間が限られていて、希望されているのにお断りしてしまったお客様もいたんです。それで、「ネコ似顔絵会」という単体のイベントを今後やっていきたいなって気持ちが沸いて、それを星時の店主さんにポロっと言ったら、他のお店を紹介してくださって。そのご縁がまた次へとどんどん繋がっていったんです。結果的に「ネコ似顔絵会をやりたい」と宣言してから半年で、7回もネコ似顔絵会をやらせていただきました。びっくりするくらいトントン拍子に開催が出来て(笑)本当に人のご縁に恵まれてすごくありがたいなあ~と思ってたんですけれど…。翌年2020年からは感染症の時期に入ってしまったので、それまで順調だった開催が激減しました。今年は先日福井県で開催できたのがやっと1回目です。長月さんから数えると、13回目のネコ似顔絵会でした。

──これまで何人くらいの参加者がネコになったんでしょう。

宇佐江:毎回の参加者数はバラバラですが、トータルすると140人くらい描きましたね。

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──お客さんはどういった方が多いですか。

宇佐江:当初は自分と同世代の20代から40代くらいの女性が多いのかなと思っていたんですが、意外と男性の参加者も有難いことに多くって。あと、ご家族で参加いただく割合も多いですね。お子さんだけを描かせていただいたり、ご家族で一緒に描かせていただく場合も両方です。複数人の場合は、色紙も大きいサイズにして、時間も倍になります。あと、カップルのご参加も何度かありました。複数人をお描きする時はせっかくなので、単独で描くのとはちがう「ふたりでいるときの空気」を出したいなと、様子を観察しながら工夫しています。

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──反応はどんな感じですか。

宇佐江:(私が)目の前にいるのもあると思うんですが、「わ―似てるー!」ってリアクションをしてくださる方が多いので、それを素直に信じたいなと…(笑)。コンセプトとして、ただ似顔絵を描くだけじゃなく“ネコへの変身”っていうエンターテインメント性を出したいなとも考えているので、描いている最中はこう、片手で隠すような描き方(相手から見えない)をしているんですけど、描き終わって初めて「出来ました!(クルッ)」と見せるような、ちょっとでもワクワク感を演出できたらなという感じでやっています。

──描いている最中はお客さんとお話されますか。

宇佐江:その人の雰囲気を知るためにも基本的にはおしゃべりをしながら描くことが多いです。ただ、私としてはネコ似顔絵の時間を美容室のようなイメージでやっていて。美容室って、美容師さんと話すのが苦手という方もいれば、逆に、たまに会う美容師さんと何気ないおしゃべりをするのが楽しいって方もいて、人それぞれだと思うんですよね。なので私とも、まったく話すのは興味ないという方は黙って私が一方的に描くという場合もあるし、そういう時のためにそれこそ美容室に置いてある雑誌的な意味で、私の絵とか本とか、過去のネコ似顔絵集のファイルを持参して20分間暇をつぶしをしていただいてます。基本、動いてもらって全然構わないんで。目を描くときだけは「ちょっと目線いただいていいですか?」とお声をかけますが。

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ただ、私が美術館に勤めているというのもあって、美術館の話題をしてくださる方も多いですね。“美術が好き”っていう方って、あんまり周りではそういう話ができないというお声も多くて。美術の話で盛り上がれる交流の場という意味でも、私のネコ似顔絵が役に立てばという気持ちも今はあります。お子さん相手なら、「美術館って行ったことある?」とか話しかけたりもします。このご時世になってからは、会話にはやはり気を遣うことも多いですけれど…。

──似顔絵会の開催自体もやはり、減少したり中止になってしまったこともあると伺いました。逆に、この状況化で開催した場合で困ったことや変化などはありましたか。

宇佐江:(延期や中止は)そうですね。ある程度はしょうがないのかなと思っています。私の描くスタイルが、マスクを外して対面しなければならない内容なので…。“マスク姿を描く”というのもご希望でしたら対応するんですが、やはり残るものなので、せっかくならマスク無しの状態を希望される方がほとんどです。色々と試行錯誤もしていて、例えばマスクをつけた状態で描きつつ、口元とかを描くときだけマスクを外していただく…というやり方も1回試みてみたんですけれどかなり難しくって。マスクを外した時の残像で全体像を…というのはまだ自分には修業が足らないなと思いました。あと、アクリル越しで描いていると、相手の目や髪の色の微妙なところがわからなくて。真っ黒なのか、少し茶色がかっているのか、お客様自身にお尋ねしたり、断ってちょっとアクリルから外れた場所から覗かせてもらったり。これは、やってみないとわからなかった弊害ですね。

──最近、イベントというとリモートが増えていますが、そういった方法は。

宇佐江:リモートでは描いたことないですね。ただ、写真は何度かあります。個人的にはあまりおすすめしないんですが。写真だけで描くと…似ないんですね、自信がないんです。過去、完成した絵をお見せした際のリアクションで「お…?もしかしたらちょっとイマイチかな…?」っていうふうに私が感じたのは、写真で描いた場合が多かった印象があります。なので、リモートもやはり難しいのかなと現段階では思いますし、今のところ企画はしていません。

──写真で描くことを希望されるのはどういう状況が多いですか。

宇佐江:たとえばご家族で集合した似顔絵にして欲しいというご希望で、当日旦那さまがお仕事で参加できないとか。ご友人へのプレゼントで描かせていただいたことも何回かあります。そうした場合は、「実物より似ない可能性が高いです」ということを重々ご説明して了承いただいた上で、お受けします。描く時もふだんと少し手順を変えて、途中経過を依頼者に時々見せながら「こんな感じで合ってますか?」と確認したり情報をもらいながら描きます。あと、スマートフォンで画像を見せていただきながら描くんですが、最低限3~4枚はご用意いただきたいです。1、2枚だと圧倒的に情報量が足らないので…。

──今まで印象深かった参加者や出来事などはありますか。

宇佐江:想定外のことがいろいろありましたね。例えば、おひとりで2枠予約を取ってくださって1枚目と2枚目で(別室でお着替えされて)衣装チェンジをして描かせていただいたりとか。あと、お子さんを単独で描いた翌年に今度はご家族で描かせていただく…つまり、その子の1年後の姿をまた描けたりとか(笑)。とても光栄で、嬉しかったですね。

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──さいごに、今後の目標を教えてください。

宇佐江:時間を短縮して描けるようになりたいです。今のところご挨拶から似顔絵の受け渡しまで20分という制限でやっているんですが、お子さんを描くとき…特に複数人のお子さまが参加されるときはどうしてもお子さんが飽きちゃうんですよね(笑)。3人家族だと単純計算で60分になり、とてもじゃないですがじっとしているのはツライと思います。お母さんやお父さんが大変そうで、毎回申し訳ないなあ…と思うことがすごくあります。同時進行ではなくお子さんを先に描き上げてしまうなどの工夫はいちおうしているんですが、単純に、もっと早く描ける技術を磨きたいなと思います。15分でも余裕が持てるくらいになりたいですね。あと…今のところは岐阜、東京、福井の3都県でしか開催ができていないので、いつか全国の都道府県で開催したい。もっと大きな野望では、外国でもやってみたいなあっていう妄想も…恐れながらしています。頑張ります。

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「宇佐江みつこネコ似顔絵会」の開催情報は、ご覧の宇佐江みつこnoteにて随時掲載。イベントのご依頼も随時承っています。詳しくは「仕事依頼」ページをご確認ください。




インタビュアー/宇佐江みつこ
写真協力/TERAMAKI SinoR

①カカミガハラスタンド(2019/岐阜)
②岐阜ホール(2019/東京)
③女の子単独で描いた似顔絵
➃③の翌年、その子がご家族と再び参加してくれた
⑤休憩時間に店主さんからそっと差し出された猫のラテアート。ネコ似顔絵会はいつも優しい方たちに支えられている(カフェリバーブ/岐阜)





今週もお読みいただきありがとうございました。ネコ似顔絵会を今後より一層広めていきたいという願いから、その魅力をどのようにお伝えしたらいいか熟考の末、インタビューという形式が理想であると思いつき、単独で実行致しました。掲載にいたる過程を想像されるともれなく淋しい気持ちに陥りますのでふわっとさせておいてください。

◆次回予告◆
『接客業のまみこ⑤⑥』

それではまた、次の月曜に。





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