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MBTIとビッグファイブの相関から見る様々な考察

まえがき

今回は、ビッグファイブについての研究を見ていくことでMBTIへの理解を深めていくものである。

また、普段、私は個々の考察について具体的データやエビデンスを示すことが少ないが、今回は積極的に提示していく。

1.ビッグファイブとは

MBTIが性格傾向について性格タイプで把握する類型論であるのに対して、ビッグファイブは性格を構成する要素から捉えた特性論である。

具体的には、外向性、開放性、協調性、誠実性、神経症傾向の5つの特性から人の性格傾向を説明する。

各特性はさらに細かく6つのファセットに細分化され、その細かさと心理学方面での研究の進展により、科学的に信頼されるとされている。

ここでは、ビッグファイブそれ自体について細かくは述べないが、詳しくはwikiなどを参照のこと。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ビッグファイブ_(心理学)

2.ビッグファイブとMBTIの相関

まず、ビッグファイブの各特性とMBTIの心理機能の間に以下の表のような相関性の報告があることを紹介する。

https://narukinhonda.com/narushinrigaku/mbti/psf-te.html

他のある研究によると、たとえばビッグファイブの開放性とMBTIの直観には、以下のように相関が確認される。(数字が高いほど相関が強い)

General Openness (E, N, P): E=.28, N=.64, F=.13, P=.26

  • Actions (E, N, P): E=.33, N=.42, F=-.06, P=.25

  • Values (N, P): E=.13, N=.64, F=.03, P=.26

  • Feelings (E, N, F): E=.33, N=.29, F=.20, P=.08

  • Fantasy (E, N, F, P): E=.18, N=.52, F=.17, P=.30

  • Aesthetics (N, F): E=.15, N=.44, F=.17, P=.08

  • Ideas (N): E=.07, N=.56, F=.03, P=.14

https://personalityjunkie.com/09/openness-myers-briggs-mbti-intuition-big-five-iq-correlations/

また、別の研究からも、MBTIの心理機能とビッグファイブの特性の間に相関が確認されている。

https://www.scirp.org/journal/paperinformation.aspx?paperid=120220

これらのデータをまとめて、文章として記載すると以下の通りになる。

外向型(E)(MBTI)は外向性と強い相関があり、神経症傾向と多少の逆相関が、開放性とわずかな相関が認められている。

感覚型(S)(MBTI)は協調性が高く、開放性と誠実性が低いことを示唆しているが、他の次元と比較して感覚直観(MBTI)とビッグファイブの特性との相関性は比較的低い。

思考型(T)(MBTI)は誠実性と確かな相関があり、協調性と明確な逆相関が、神経症傾向とも逆相関が確認される。

判断型(J)(MBTI)は誠実性が高く、開放性が低いことが示されている。

ただ、ビッグファイブのファセットを細かく見ていくと、特定の項目の相関が強く、一方で特定の項目に相関が無いことが指摘される。

また、MBTIの各性格タイプにおけるビッグファイブ各特性の分布域は以下のリンク参照

https://www.traitlab.com/blog/mbti-big-five-personality-traits

3.各特性の成長、変化

ビッグファイブの各特性は年齢の推移とともに変化(成長)することが指摘されている。

ただし、特性のうち開放性だけは20歳程度まで成長するものの、それ以降はほとんど成長しないことがいくつかの研究で示されている。

https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/tsuru/37.html

以上の事実と、ビッグファイブとMBTIに相関があることを考えると、MBTIの心理機能も年齢とともに変化することが考えられる。

MBTIは性格傾向に関する類型論であるが、心理機能の成長もその説明に入っているため、これらのデータはMBTIの性格タイプが先天的に決まっているという説と必ずしも矛盾するものではないが、性格傾向それ自体は加齢で変化することを示している。

ただし、データからは、たとえば成人後に感覚型と直観型の性格が入れ替わるような変化をすることは考えにくい。

また、青年期以降の感覚型にとって第三以降の機能に相当する直観の成長が難しいことが示唆される。

4.遺伝的影響

いくつかの研究によると、各特性の遺伝率は、外向性が53%、協調性が41%、誠実性が44%、神経症的傾向が41%、開放性が61%であることが示唆されている。

これらの特性とMBTIの心理機能に相関があることを考えると、性格タイプへの遺伝の影響は強く考えられる。

同時に、半分くらいは環境の影響を受けることも示唆しており、性格形成における環境選択の重要性が認められる。

https://kruchoro.com/big-five-personality-traits-2/

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120120/296812/?P=5

5.自己肯定感

いくつかの研究により、自己肯定感と各特性に相関が見られることが示されている。

外向性、開放性、協調性には有意な正の相関があり、神経症傾向とは有意な負の相関が認められる。

また、誠実性についてはある程度の負の相関が示されている。

遺伝により性格傾向に偏りが見られるということは、自己肯定感の持ちやすさも遺伝の影響を受けるということを意味する。

また、自己肯定感の変化が性格傾向に影響を与えることが予測される。

自己肯定感は学習や能力啓発とも密接に関係する。

これらのデータは国ごとの研究によって若干の相違が見られ、国ごとの文化や環境の影響が考えられることに留意が必要である。

https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/KO/0032/KO00320L041.pdf

https://www.aomori-akenohoshi.ac.jp/wp-ontent/uploads/2022/05/kiyo46.pdf

https://www.shogai-soken.or.jp/research/non-cog4_202210.pdf

6.神経症傾向とMBTI

ビッグファイブにおける神経症傾向は、MBTIにおける心理機能と直接的な相関は示されないが、性格タイプ末尾の-A、-Tと関係すると考えられる。

-Aは神経症傾向の低い自己主張型、-Tは神経症傾向の高い慎重型である。

上で見てきたように、神経症傾向は遺伝、環境、自己肯定感などと相関があり、そのためMBTIの-A、-Tも成長や環境、気分の変化に伴い変化することが考えられる。

あとがき

ここまでビッグファイブとMBTIについて、主にビッグファイブの研究の側面から見てきたが、ビッグファイブには特性論としての性格傾向の把握の正確さが認められる。

それに対して、MBTIには類型論としての性格傾向の把握の容易さと簡便さがある。

ビッグファイブとMBTIには相関が認められるため、それぞれの側面から人の性格傾向を捉えることで、より正確な人間理解に近づきやすくなるものと考えられる。

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