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2年ぶりに推し地下アイドルのライブに行った話

こんにちは。卒業した女性地下アイドルにガチ恋していた女ヲタクの感情(主に悲哀)を定期的に書き記している人間です。

※読んだほうが今回の内容も分かりやすくなるであろう今までの4記事はマガジンにまとめてあります↓
https://note.com/usagoe716/m/me0fc91f73815

ただ量が多いのでここで簡潔に言うと「もともと女性地下アイドルの女ヲタクで、ほぼガチ恋のような感じで足繫く現場に行って騒いでいたけれど結局推しは卒業してしまい、でも推しとした「私が卒業してもグループのことを見守っていてね」という約束を守るためにワンマンや生誕祭など節目の大きいライブはなるべく見に行っていたが、結局そのグループは解散しちゃった」という流れです。


おや…?2020年11月、最終回と銘打たれた日記が更新されたはずでは…?

話はこの翌月、2020年12月2日に遡る。

推しメンが流星のごとくTwitterに現れたのだ。

もう二度と顔も見られないかもしれないと思っていたのに。動揺、号泣、そして歓喜に打ち震えた私は、それから今日に至るまでほぼ毎日推しメンに長文リプを送る妖怪と化している。

誤解なきように伝えると、特に彼女が「また事務所に所属してアイドルをやります」というような意思を持って、このアカウントを作成したわけではない。卒業後、職に就いた彼女は、仕事への責任感ややる気を感じながら日々を生きているそうで、今はお仕事を頑張りたい、と述べてくれている。

私はそれで十分すぎるほど嬉しかった。エルフロートでアイドルをやり切ったと話す彼女が、お仕事を頑張って「人間界」(エルフロートのメンバーは『妖精』なので卒業すると人間になる)で生きていて、時々疲れたときにヲタクに寄りかかったり、楽しいことを報告してくれたりすれば、それはまさしくこの上ない幸せである。だって、Twitterを開設する前までは今何を考えて、何をして、どう生きているのか、何もわからないままただ「好きだ」という気持ちが宙に浮いている哀れな地縛霊だったのだから。

そしてその宙に浮いては抱きしめて投げ捨てようとしてきた「好きだ」という気持ちを、直接本人に伝えられるというだけで何という果報だろう。もう好きだという気持ちを投げ捨てようとしたり忘れようとしたりする苦行に身をやつす必要もない。投げ捨てたり忘れたりしなくていいということだ、Twitterの開設というのは!

……話がそれたので戻そう。推しメンがTwitterを開設してからしばらく、平和な日々が続いていた。しかし、さらなる幸福が私を待ち受けていた。

4月29日、私を襲ったのは「7月3日ソロライブ決定」との告知だった。

私の中に住まう感情たち全員がスタンディングオベーションをして耳が割れるほどの拍手を送っている。その日は泣いて寝た。

推しメンが卒業したのは2019年の8月19日。卒業後のサプライズ登壇は一度あったものの、ゲストではなく彼女自身がステージに立つのはほぼ2年ぶり。そして私が彼女のライブに赴くのも、当然2年ぶりだ。

(※サプライズ登壇についてはこちらの記事↓にあります)

https://note.com/usagoe716/n/nad84051fadb8

私はもう、とにかく浮足立っていた。減量に励み、ライブのために服を買い、靴を買い、かわいい靴下を買い、当日朝いちばんの美容院も予約した。会える!世界で一番好きな人に!職場のカレンダーの7/3にハートマークを書き、毎日めくってそれを眺めていた。当然、体調管理や感染対策にも気を遣い、とにかく何の心配もなく当日を迎えられるように努力した。恋かな?

そして当初はソロライブということで告知がされていたが、ゲストが来ることが6月に判明。しかも……1部・2部制で、1部はバンドメンバーを迎えての生音ライブ。そして、2部は元エルフロートのミズキ(現在は完全引退して社会人)、そしてモモ(現SAY-LA ももちもも)がステージに上がるというのだ。

ミズキ、モモ、マアヤ……この3人は平日夜のZepp Tokyoに1200人を動員した、忌憚なく言えば「エルフロート全盛期」のメンバーだ(一応書いておくが、私はこのとき以外のエルフロートを否定するつもりはまるでなく、どの時代もそれぞれ別の良さがあったと考えた上で、分かりやすさを重視してこの表現を選んだ)。そして2018年の4月にミズキがエルフロートを卒業してから、このメンバーが集うのは3年以上ぶりということになる。

界隈は沸き立っていた。この当時のエルフロートには根強いファンが多く、待ちわびていた人もかなり多いはず。そしてミズキは社会人になってからSNSもやっていないので、顔を見たいミズキファンも当然多い。新宿の決して大きくないハコに、マアヤが立つ。そして、かつてのエルフロートが集結する。私もそこにいられる。想像しただけで、心臓がザワザワした。

そして迎えた7月3日……

新宿は朝から雨だった。ライブのためにかわいいサンダルとかわいい靴下を購入していた私は、一旦どうでもいい靴下を履いて家を出て、足を拭くためのタオルと替えの靴下、本命の靴下をカバンに詰め込んだ。会場で履き替えるまで堂々と足を濡らしながら、髪を推しメンカラーのピンクに染め、新宿Club Scienceに向かう。

ハコの中は、もうどこを見てもほぼほぼ見知った顔しかいなかった。360度、オタクの同窓会である。そして普段の地下アイドルのライブではめったに目にしない、バンドセットが暗いライブハウスに鎮座している。いつもの定位置(一番好きな曲で、推しメンがソロパートを歌うところを目の前で見やすい上手2番目のポジション)について、息をつく。かつて、推しメン卒業後初めてライブに行った日、立とうとしてやめたポジション。悲しくなった場所。今は一番ワクワクする場所だ。

本当にまあやさんに会えるんだ、あと30分もしないうちに。胸が張り裂けそうだった。何度も夢に見た。彼女に会える日を、彼女と喋る日を、彼女が歌う日を。そして目覚めては絶望した。それが、今から、本当になる。手の震えを押さえつけるように彼女のサインが入ったペンライトを握りしめ、開演を待った。そして場内の照明が絞られて、バンドメンバーがポジションにつく。

スポットライトに照らされながらステージに立った彼女は、2年前と何も変わらない、最高の女の子だった。

てっきり「会えた喜びで号泣しちゃうかも……」と予想していた私だが、楽しすぎて、嬉しすぎて、泣く暇がなかったことに自分でも驚いた。マスクの下で笑顔がはじけ飛びそうで、頬の筋肉が痛かった。MCで「バンドだからカッコいい表情で決めようと思ったのに、楽しくて笑っちゃう!」といった彼女がかわいくて、愛おしくて、最高の気分だった。

しかも、4月に推しメンが「私に歌ってほしい曲があったら教えてください!」とリプを募ったときに私が送ったうちの2曲が、セットリストにあった。7曲やったうちの2曲が…!??推しメン、大好き…

そうしてあっという間にライブパートは終わり、緊張しながらチェキ列に並ぶ。1回2000円で、2ショットを撮ったあとだいたい90秒~120秒ほどトークができるものだ。こうやって顔を合わせてしっかり喋れるのも2年ぶりである。いつもTwitterで片道リプするだけなのに、相互のコミュニケーションをしていいなんて……。ああ、次はもう私だ……

「初めまして~」って言ったら「違うだろ~!」って突っ込まれた。

2年ぶりだったけれど、まるでついこのあいだ会ったみたいに変わらない推しメンがそこにいた。よく笑い、目をぱちくりさせながらこちらの話に耳を傾けて、ころころと変わる表情が何よりかわいい。ああ、変わらないな~好きだな~と思って、そのまま言った。違うのは、2人の間にビニールカーテンの仕切りがあることくらいだ。(これめちゃくちゃ寂しいですね。声も聞こえづらいし。早く今のご時世を乗り越えたいなという気持ちがより一層強くなりました)

とりあえず時間いっぱい、5回並び終えて1部は終わった。とんでもない満足感にうちのめされそうになりながら、早足で空いているファミレスを探す。次なるミッションは「1部の感想を2部が終わるまでに手紙に書く」である。

今回のライブでは「お手紙返信券」が物販で売られることがあらかじめ告知されていた。これはファンが書いてきたお手紙を当日渡すと、推しメンがその手紙を読んで返信を送ってくれるという読んで字のごとくの代物である。私はライブの前日までにあらかじめ長い手紙を書いていたのだが、その途中で「1部と2部のあいだに頑張れば1部の感想もお手紙で伝えられる…!」と気づいたのだ。天才かと思った。そのために便箋とペンを持参していた。歌舞伎町近辺では唯一空いていたびっくりドンキーに流れ込み、爆速でハンバーグを食べ終えて手紙の作業に差し掛かった。あまりにも時間がギリギリだったので胃痛をもよおしたが、なんとか開場15分前に書き終えて封筒に押し込める。そのまままたClub Scienceへと早足で向かった。雨は上がっていた。

余談だが、私は手紙という媒体がすごく好きだ。そもそも手書きで文字を書くことと、手書きの文字を読むことが好きなので、その最たる手段である。だからこうやって手書きの文字で推しメンとやり取りができることを本当にありがたく思った。お手紙の返事がいつ届くかはわからないが、嬉しすぎて食べないように気を付けないと。(ヤギ?)

さて。1部よりもさらに多い人数がライブハウスの前に集まっていた。やはりどこを見ても見知った顔ばかり。1部に出演していたゲストアイドルが「昔馴染みの親戚のおじさんが集まってるみたい!」と称していたが、まさにである。

数年以上アイドル現場から離れていたような人まで見かける。少し早いが、さながらエルフロートのヲタクの霊たちのお盆とでも言ったところか。

私はそれなりに入場番号が早めだったが、ふと気づいて後方を見やるとライブハウス内はかなりの混雑具合と化していた。コロナ禍以前よりは当然ソーシャルディスタンスを保っているものの、昨今のアイドルライブではあまり見ない集客だったと思う。それくらいこのライブに期待している人が多いのだと思った。

開演時間が来る。照明がステージに絞られ、BGMが大きくなる。ああ、この瞬間が好きだ。心臓がどきどきして、足先にきゅっと力が入る。舞台袖を見つめながら、最愛の人を待つこの数秒が、好きだ。

そして、1分も経たずにClub Scienceは新宿で一番熱い場所になった。

かつて多くを熱狂させたエルフロートが、まさにそこにあった。

エルフロートは3人編成が主である。だがダンスは非常に激しく、ステージ上でのポジション移動も頻繁で、体力がない新メンバーはついていくのに精一杯どころかついていけない、みたいなことが発生するグループだった。

そして今回「復活公演」に望むメンバーは、SAY-LA ももちももを除いて2人ともアイドルから退いて1年以上経過している「現役社会人」である。だから、ある程度ダンスにキレがないだとか、ヘトヘトになってしまうだとか、パフォーマンスをかつてと比べてしまえば劣るだろうなとか、そこそこハードルを下げてライブにのぞんでいた。

3人の暴力的ともいえる圧倒的なパフォーマンスが、確かにステージから「舐めるなよ」とそんな不届き者の私を殴った。私はそれが嬉しくて、たまらなかった。

今回のライブでは当然声出し禁止だったのだが、耳を痛くさせるようなうるさいほどのコールの幻聴があまりにも強く聞こえてくるようで。まるでここの空間だけ切り取って2018年に連れ戻されたような感覚すらあった。声も出していないしジャンプだってしていないのに、ライブハウスの中は歓喜の熱気で満たされて、私の髪から汗がしたたり落ちた。

最後の挨拶が終わりメンバーが捌けると、アンコールを希望するクラップが始まった。普通、予定調和的なアンコールの場合、1分くらいでメンバーが再度ステージに戻ってくる。だけれどこの日、彼女たちは何分経ってもステージに帰ってこなかった。あれ?本当にアンコールがない感じだった?

しばらくして、慌ただしく音響スタッフさんがフロアに入ってくる。そして、照明が落ちた。

「ちょっと、本当にアンコールを予定してなくて音源がなくて…みなさん、アンコールありがとうございます!!」

慌てた表情で登壇してきた推しメンたちを見て、つい笑みがこぼれる。そして始まった、「時折マーメイド」。これが今日、本当に最後の曲だ。

以前のnoteに書いたが、マアヤ卒業公演の最後の曲も「時折マーメイド」だった。そして卒業後、サプライズ登壇したときの曲も、私がエルフロートを、マアヤを好きになったきっかけも「時折マーメイド」。この曲には数えきれないほどの思い出が詰まっていて。しかもアンコールを用意できていなかったことが分かる、インスト音源、完全被せなしの生歌がライブハウスを揺らしていた。

この曲の落ちサビは、ミズキ(当時のリーダー)が歌っている。だから落ちサビに差し掛かる前、ミズキ推しの人が前に行けるように道を少しあけていた。ミズキのメンバーカラーである赤色のペンライトを掲げたファンが中央に集まろうとする。……だが、そこでセンターに立ったのは、マアヤだった。

客席からも若干困惑の声があがる。マアヤがこの曲の落ちサビを歌ったのは、ミズキ卒業後初めてリリースされたシングルCDのリリースイベント期間内だけという非常に短くレアなものだったのだから。そのリリースイベントにめちゃくちゃ通っていて、もう一度マアヤの落ちサビを聞きたいと願っていた私は半泣きで前に出た。ピンクのペンライトに、声に出せない気持ちを載せて、懸命に振りながら推しメンの顔を見て。

この曲の最後の歌詞は「一番あなたのことが大好き」で、ヲタクが「俺もー!」と叫んで終わる。本当は。

でも今はできないから。マスクの下で声を出さず「俺も」と言って、推しメンは口パクで「おれも!」と言っていて、そのシンクロが嬉しかった。身体の力が抜ける。本当に今日のライブが終わってしまった。

前述のとおり、この3人は1人は現役別グループアイドル、2人は社会人である。集まるのは容易ではない。でも、本人たちにもファンにも、またこれがやりたいという気持ちがあることはみんな言わずとも理解できていたと思う。ライブハウスに蒸した幸福の匂いで。

推しメンのこと。会わなくてもずっと好きでいられたけど、会ったらまたもっと好きになってしまった。期間が空いたとしても、もし次が本当はなかったとしても……次会えるときまでにもっと私も沢山頑張ろう!と思える幸せを痛く感じている。推しのいる明日が当たり前でなくなってから2年、ようやくだった。

1年に1回でもこういう機会がまたあればいいな。あれ、やっぱりお盆じゃん

最後に、今回のチェキを撮っている間に一番衝撃的だった推しメンのことばを書いておこうと思います。

「ねえ、note読んでたよ~!ありがとう!」

これも読まれる……ってコト!?

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楽しかったな~~~~~~ッ!!!!!!!

おわり


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