能登半島地震:被災自治体の調整機能がボトルネックになっていないか?/ジェンダー/志賀原発、他


被災自治体のキャパ、調整機能

能登半島地震への対応に関して、市町村合併、広域化、職員数削減/抑制がどう影響しているのかが気になっている。あくまで印象だが、元日夕方の発災と現地の地理特性の下での道路寸断という悪条件への対応をさらに難しくしたように思える。検証時の課題とすべきだと思う。

能登半島地震での被災者支援のスピード感の問題だが、現地自治体の職員が足りていないことがあるのではないか。また、職員にかかる心身の負担の影響は時を追って顕在化してくる。国や全国自治体からの災害対応の経験がある職員の派遣を急いだほうがいいのではないだろうか。

うーん、やはり石川県と市町への災害対応経験のある応援職員の派遣が急がれるのではないかと思う。避難所含めた状況把握、支援物資の分配、ボランティア・コーディネート等全般的に人員が足りていないのでは。

能登半島の地理的特性と被害状況を考えた時に、ただでさえ人口比で多いとは言えない自治体職員数がなおのことネックとなっているのではないか。国がプッシュ型支援をし、また自立型組織である自衛隊が活動するにせよ、自治体側のキャパが制約になる。

報道をざっと見たところ、全国自治体からの職員派遣が4日5日と本格化しているようだ。東北や熊本などから経験ある職員が送られているようで、力になるはず。

道路の問題のために、3日時点で「NGOがケアする避難所にも物資がほとんど届いていませんでした」。元々陸路のルートが限られている能登半島では継続的な支援の上でも支障となり得るし(今度の余震の影響を含め)、このような状況は全国各所で起こり得る。検証と共有の課題。

道路の寸断等を含めて当然防災計画の想定に入っていたはずだが、問題は人員面での十分な裏付けがあったか、職員派遣要請の出し方を含め適切に落とし込まれていたか。国や他自治体の側も派遣決定のタイミングや規模など十分に想定できていたか。元日の発災ということの影響はあったか。

国の支援物資輸送等における海路、空路の活用もワンテンポ遅れたように見えるし、着岸・着陸地点からのルート確保の問題が完全に解決されていないようにも見える。隆起のために大型船の着岸ができない箇所もあるようだ。安定したルート確保は現在進行形の課題だろうし、初動含め検証項目になる。

やっぱり地理的条件に人員不足が合わさったことが円滑な支援や連携を妨げるボトルネックになっているのではないか。全国の自治体からの職員派遣が進んでいるので改善、円滑化に向かっていると願いたい。政府も職員派遣や調整機能の強化を急ぐべきだろう。

地理的特性やインフラの障害は防災計画の想定に当然入っていたはずだけど、人員面含め現実的な裏付けがあったのか、他自治体・国からの応援派遣含め円滑に進んだのか、市町村合併の影響や自治体のキャパを補う形での政府の初動が的確だったのかなども含めて気になっている。

検証で言えば、今回の状況を踏まえた、志賀原発ややはり地理的条件が厳しい福井県内原発の原子力防災計画の実効性も厳しく確認しなければならない。道路寸断とか大型船が着岸できないとか今回起こったようなことが要避難時に生じて本当に避難ができるのか。

これはこれで説明としては筋は通っているが、であれば逆に、このような難条件下での想定をもっとしておけなかったのかという課題は残るのではないだろうか。日本において決して特異な条件ではないのだから。

「陸の孤島と言われている半島での未曽有の震災。一番起きてほしくない場所で起こった」(自衛隊幹部)、「アクセスが非常に難しい場所で、通信の状況も悪く、状況把握が難しかった。そのなかで非常にスピーディーに部隊投入ができた」(防衛省幹部)。自衛隊に限らず、状況把握、情報収集は検証課題。

うーんやっぱりそうか。恐らく、人手があってもそれを捌く司令塔・調整機能がまだ脆弱ということもあるのだろう。自治体・国の応援職員も大分入ってきているようだが、人員のミスマッチが生じていないのかも気になる。

津田大介さんの報告、そして報道から見える状況と平仄が合う分析と提案だと思う。やはり、国・自治体からの応援職員含めた人員配置、司令塔・調整機能の抜本的強化で改善できる部分は大きいように思うのだが。

そう、南海トラフ、四国は即座に想起したし、伊方原発周辺はまさに問題になる。福井の原発群、特に大飯原発周辺もそうだし、六ケ所、大間、東通の下北半島もそう。

片や、「独断で被災地に入るな」が自治体・NGOとの連携の下で入った人にまで浴びせられ、片や「支援が遅い」とザックリと政府批判がされ、どちらの側もボトルネックがどこかをすっ飛ばして言葉のきつさだけが先走っている。「問い合わせも控えて」と言わざるを得ない状況を早急に解消しないと。

政府や県などが把握済みで現況だとしたら、対策の立て方や実行のスピード感、あるいは情報の軽重の判断に問題があるということになり、切迫感ある報告、提案に意味があるということになる。そもそもNPOに帯同したという事実に触れず「渋滞の一因」と印象操作を加え、全くの独自行動かに言うのは卑劣。

能登半島地震被災地で渋滞が問題になるのであれば、支援物資運搬や現地作業の人手が確保できても、陸路での人や物資の輸送量が確保できるのかあるいは人や車両の配置を効率的にコントロールできるのかの問題になるよね。

一部指定避難所が損傷で使用できず、帰省中の家族もいて収容人員を超過、かつ道路寸断でたどり着けない場合が多い。それで自主避難所が200か所以上で、未把握もある可能性が高い。物資運搬以前に、自主避難所の把握やニーズ聴取の人員も足りていないのだろう。

何度も出てくる「想定外」「未想定」。道路や通信の断絶の広範さが想定外で、そもそも被害規模想定は97年のものを見直し中だった。避難者は想定の10倍、出勤できた職員は5~6割。市町村合併の影響を指摘する県議も。政府、自衛隊の初動も状況把握から躓きがあったようだ。

やっぱりここまで指摘してきたことが当たっていると思うし、何より津田大介さん、山本太郎さんが現地に入って、報告、提案していることが的を射ている。


能登半島地震への対応に関して、半島という「条件の悪さ」が説明として挙がることが多くて、「想定外」とか「対策の議論がされてこなかった」といった言葉すら出てくることに驚く。日本では特異な条件ではないし、3.11以後の原子力防災の議論でも焦点になってきたことなのだが。

市町村合併による対応能力の低下の問題ももっと議論、検証されるべき。全国の自治体からの応援は続々と入っているし、個別には機能しているのだが、特に初動・初期における地元自治体のキャパの問題は全国どこでも起こり得ること。職員自身が被災者で、この悪条件下では参集にさらに困難も生じる。

日経2月1日「能登地震『半島防災』練り直し 伊豆・紀伊など国土の1割、自治体に危機感 備蓄や輸送手段確認」

災害対応とジェンダー、マイノリティの視点

被災地・避難所における性暴力やトイレ、生理用品など災害とジェンダーに関する提起、提案が攻撃の標的となり、「素朴な」疑問の対象となるというのが今回も繰り返されているし、まだまだ意識すらしていない男性も少なくないだろう。優先順位が低いどころか避難生活の安全・安心の根幹に係ること。


女性の他、性的マイノリティーや精神障害、発達障害を含む障がい者のことを含め、少なくとも行政の文書レベルでは盛り込まれているのだが、現実の対応、対策ではギャップがあるし、現地・現場では意識に上らない、後回しにされるということになりがちだ。そこは関係省庁、県などが確認、徹底すべき。

「みんな我慢しているのだから」という意識や空気のために、必須のニーズまでもが「必須」とみなされずに後回しにされ、オプション扱いされてしまう。それが既に男性・異性愛者・健常者等を標準とし仕様とする設計故であることになかなか気づかれない。

日常的にも蔑ろにされがちで当事者に負担がかかっているニーズが非常時に無視されることは、ストレスを加重するものであり、心身に深刻な影響を生じさせ得るもの。また、避難生活における女性のケア役割は当然視される一方で、当事者が日常的に必要とするケアは被災時には「贅沢」「負担」扱いされる。

現地に入るマスコミや支援者も、事後的な検証項目としてではなく、リアルタイムのチェック項目として目を配り、現場の関係者や行政に要対応事項を随時伝えていって欲しい。

能登半島地震の避難所等での活動のために他自治体や連携する団体から派遣されている職員・スタッフで女性はどれだけいるのだろうか。特に保健師や医療職、心理職。他の職種でも、例えば警察は熊本地震などで女性警察官のチームを作っていたが今回はどうだろうか。

特に今回は自主避難所含め避難所の環境や物資供給状況が良くないため、なおさら女性がニーズ、不安、困り事を口に出せず我慢してしまっている場合が多いのではないかと思われる。構えた聞き取りということではなく、女性の職員・スタッフがいてまず雑談ができる状況があれば、問わず語りに出てくる。

避難所の男性は女性のニーズや困り事等に気づかないし、性別役割分業意識、ケア役割意識で女性に役割を割り当てたり当然に期待したりする。訪れた男性もその歪さに気付かない。そんな男性たちに女性はニーズ等を話せないし、「積極的」「自発的」に役割を引き受け、我慢してしまう。未だ多い光景。

こういう話で厄介なのは、当たり前のように「非常時だからジェンダーなんて後回し」と言われがちなこと。いや、その非常時対応の初期設定が男性標準、男性仕様だから最初っからジェンダー視点が不可欠な訳で。避難所運営に関わる意思決定に女性が加われない、加わらないあるいは形だけ入っているというのがデフォルトになっているのも珍しくない。

これも厳しく、もっと知られるべき状況。一般の避難所を避けて車中泊や自主避難所で耐えている人たちがいる。高リスクの人がさらにリスクを高める環境に身を置かざるを得ない矛盾。

災害便乗のデマ

これも災害便乗のデマの一つなんだよ。暇空は、阪神大震災以来、NPO、ボランティア、医師・看護師、精神科医・カウンセラーなどの支援・連携の経験、ノウハウが蓄積され共有されてきたことも全くわかっていない。支援活動にケチを付けたり思い込みでドヤって提案したりする連中もそう。

自治体も国も同様で、阪神、東日本、熊本などでの経験、教訓から対応が更新されてきているし、災害対応を経験した職員が派遣されたりする等で実地に共有もされている。それでも情報の目詰まりや支援が手薄い地域・地区がある等の問題は毎回生じるし、ジェンダーや障害等に係る対応の不備、欠落は課題。

これは右にも左にも言えることだが、リアルタイムの非常事態の最中にただ非難したり攻撃したりしていても意味はないし、しばしば有害。ましてや、過去の経験・知見に基づく取り組みや指摘、提案に対して攻撃を浴びせるのは妨害に等しい。ネット・SNSの玉石混交を冷静に見極めることが肝心。

志賀原発のトラブル

以下1月2日時点のポストだが、「安全上の問題はない」で済ませず検証が必要。

志賀原発の状況。部分部分が誇張されて危険視されているように思うと同時に、この地震動でトラブルが起こり過ぎていないか、シナリオに入っていたのかが気になる。この状態から同規模以上の地震が続いてトラブルが累積、連鎖するシナリオがあるのかどうか。

https://rikuden.co.jp/press/attach/24010201.pdf

つまり、①今回の地震動でこれだけのトラブルが起こる想定があったか、②今トラブルが生じている状態から同規模以上の地震が続いた時に、(a)同様のトラブルが別の箇所で起こる可能性、(b)そのようなことを含めトラブルが累積、連鎖するシナリオがどれだけ想定されているか。

志賀は長期冷却中の使用済燃料プールのみなので急速な事象進展はないにせよ、今回のようなトラブル群が安全性評価におけるシナリオに入っていたのかは大事なポイントだと思う。

志賀はBWRだがトラブルは炉以外の部分で起こっているので、仮に十分にシナリオに入っていない脆弱性であったとしたら、運転中の炉もある福井のPWR原発群も含め対応すべき問題となるだろう。

(1月10日)

当然こう考えるよね。「生き残った変圧器が今後の余震で壊れる可能性についても考慮する必要がある」「発電所内の不具合で受電できなくなることはおそらく想定していなかった」「今回の対応で十分と考えるのか対応を強化した方がいいのか検討する必要」


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