谷口真由美「おっさんの掟」感想文

 「ラグビープロ化の旗振り役だった清宮氏が、旗振り役から降ろされた」という話を以前聞いて、「ラグビー界大丈夫か?」と心配していました。谷口真由美「おっさんの掟」にラグビープロ化の顛末が書かれていると聞いて、読みました。

 2019年W杯後「W杯も成功したし、現状維持でいいじゃないか」と考える人がラグビー界に多かった(P9)というのを読んで呆れました。「ラグビーを4年に一度の競技ではなく、毎年楽しめるにはどうすればいいか?」を考えた末のプロ化ではなかったの?

 川渕さんはJリーグを立ち上げるとき、ヨーロッパサッカーはもちろん、プロ野球、アメスポ四大スポーツとあらゆるプロリーグを参考にしたそうです。本書では競技問わず世界のプロリーグを調べたという記述がなかったです。下敷きにしているプロリーグがわからないのでは、ラグビーのプロ化、リーグワンはどこに向かって走っているのかわかりません。「これでよくプロ化しようと考えたね」と呆れるのを通り越して、感心しました

 プロ化にあたり、ラグビー界の人間ではない法学者である谷口氏を招聘したのはいいのですが、支給されるのは交通費、宿泊費のみの無報酬、ボランティア(P33)というのには呆れました。プロリーグ立ち上げは街のゴミ拾いとはわけが違うので、相応の報酬を用意するのがスジでしょう。ラグビー協会に谷口氏に支払えるだけの予算の余裕がないなら、プロ化は10年早いというしかありません。

 清宮氏がラグビープロ化の旗振り役を務めるという話を聞いたときは、「大学、社会人で何度も優勝を果たした清宮さんの次の仕事がプロリーグの立ち上げなんてカッコいいな。何度も優勝を果たした原さんが未だに一チームの勝ち負けにこだわる監督をやっている野球界とは大違い」と思ったものです。なので清宮氏は志半ばで退場したのは残念でした。

 本書では清宮氏はトップダウンで事を成そうとして、周囲の反感を買い、理解を得られなかった(P68)とあります。だからこそ、清宮氏に周囲の根回しなり理解を得るための努力をした方がいいと助言する参謀役を着けた方がよかったのに。それは本書でも指摘(P75)しています。清宮氏は2019年W杯開催地(札幌、釜石、熊谷、東京、横浜、静岡、豊田(愛知)、大阪、神戸、福岡、大分、熊本)にチームを置くオリジン12というプランがあったそうです。現実のリーグワンは関東に集中しすぎている(12チーム中8チームが関東)ことを思えば、魅力的なプランでした。

 確かに「トップリーグのどのチームが地方に行くか?」を決めるのは難しかったでしょう(P74)。それでもうまくチームを分散させて、ラグビーをどこでも見られる環境を作ればリーグワンは魅力あるものになったと思います。さらには50代始めの清宮氏がリーグワンのコミッショナーに就任したら、青年コミッショナーとして売れるので、リーグの大きい魅力になったと思うんですよね。

 リーグワンはディビジョン分けでも呆れさせることになります。トップリーグのチームに30項目以上の審査基準を示して、参入審査をしたそうです(P112)。もちろんちゃんと資料を提出して熱意のあるレポートを用意したチームもありますが、適当に作ったレポートを用意したチームもあったとか(P117)。そのチームにはプロ化に対する真剣度が足らないとしか言えません。政治力でそのチームが一部に入った(P114)というのは呆れました。

 リーグワンの一部12チーム中8チームがチームの頭に地域名ではなく、企業名を着けているのにも呆れました。例えばプロ野球の埼玉西武ライオンズのように、地域名をチーム名の頭に着けているのは、「地域を大事にしている」というアピールであり、地域に対するリスペクトでもあります。リーグワンのチーム名の頭に地域名を着けないのは、「地域密着をしています」というアリバイ作りとしか思えません。リーグワンは地域に根ざしたプロリーグにはならないでしょう。

 プロリーグを作るときはブレてはならない大義を置くべきで、大義なきプロリーグには成功するイメージが持てないというのが本書を読んだ結論です。残念ながらリーグワンには「トップリーグの看板を付け替えただけで、ラグビー村(本書の表現です)とコアなファン以外には響かないプロリーグになるだろうな」としか思えませんでした


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?