こんにちは。数学系の女子大学院生です。

今日はあえて数学科の悪い面について、書いてみようと思う。

私は大学４年間と大学院の２年間、合計６年間、数理科学系（わかりにくいので数学科と言ってしまう）の学部にいる。数学系は女性の少ない学部だとは当然覚悟した上で大学受験をしたし、この選択を今は後悔してない。

でも正直、女子大の数学科に行けばよかったと思ったことはある。女子大には女子大のデメリットがあるだろうだから、これも甘い考えではあったが。

だから無責任に『女の子も(共学の)数学科おいでよ！』とは言えない。

とはいえこのnoteの目的は、以前の記事で述べているように『女子は数学が苦手、とは限らない』と感じてもらえるきっかけを作ること。

だから今回の記事も単にデメリットを紹介するというよりは、その裏返しの良い面も合わせて書きたい。

「理系女子は優遇されてる」

大学１年生の時、同学科の顔見知りの男性の先輩がTwitterで「理系女子は優遇されている、贔屓されてる」とぼやいているのを見た。

今思えば全く真に受ける必要のない言葉だ。大体もしも本当に女子が優遇されているとしても、優遇している誰かに文句を言えばいい。

でも当時はショックを受けた。

ショックと言っても、その場で絶句するようなショックではなくて、「確かにそうなのかも知れない…」とじわじわ噛み締めるようなショックだ。これをなんと私はたっぷり４年間も引きずってしまった…！

実際、変にチヤホヤされることはあるのだ。

私の大学の場合、数理科学専攻は１学年約３０人。そのうち女子は大体２〜５人。どうしたって女子学生は目立つし、先生の目にも止まるし、どこに行っても歓迎される。

その分、男性の先生の一部には、女子学生に対して面と向かって「見かけがいい」とか「綺麗な子がいると場が華やぐ」とか平気で言ってきたり、「（女子学生）さんが綺麗になった」とかを本人のいないところで話題にする人もいる。

私が一番イヤで一番悩んだのは、一部の教授に妙に気に入られて、妙に褒められたことだった。

成績は確かに悪くはなかったが、ちょうど上位1/3に入るという程度だ。気に入られるほどズバ抜けてない。でもなぜか「あの発表よかったよ」と褒められたり、授業中もやけに指名される頻度が高かったり、なんとなく期待されている感じがした。

でも「女子は優遇されている」という言葉と相まって、「女子だから贔屓されているのだろう」と思えて仕方なかった。『私が男性だったら褒められてなかったはず』と思うと、やけに優遇する先生からの評価はどれも自分の中で無効化された。

（自分でも気にしすぎだとは思っていたが、次のエピソードを余談として付け加えたい。このやけに評価してくれる先生の一人に「女性だからという理由で優遇されてしまう環境は女性のためになっていないのかもしれない。女性が自信を付けるのを難しくさせるから。」という旨の主張を飲みの場で軽くしてみたことがある。その時のお返事は概ね「いいじゃない。武器は使えば。」だった。）

今もし「理系女子は優遇されている」と面と向かって例の先輩に言われたら「優遇されてるのは舐められてるから。優遇されてみたらあなたも分かる。」と言ってあげたい。

女子が数学科に進学するデメリット。私の思う最大のデメリットは、優遇されてしまうこと、言い換えれば舐められること。そしてその結果として自信を持つのが難しくなることだ。

優遇されないからこそ、自信が持てるようになる

もちろん女子学生を舐めている人ばかりじゃない。私の指導教官はまさにその一人で、女子学生だからと私を特別視することはなかったように思う。私を特別扱いしていないだろうという信頼があるから、指導教官が稀にくれる褒め言葉はどれも自分にとって特別なものになった。もちろん自信にもなった。

同級生の男子学生もそうだ。正直大学一年生の入学したての頃を思い返すと、若干舐められてた感はある。でも一年もすれば状況は変わる。同じ課題やテストを当たり前にこなしていくのだから、女子学生が劣っているなんて誰も思わない。今は、完全に対等に接してくれていると思う。私は彼らを尊敬しているし、彼らも私を尊敬してくれていると感じる。多分だけど、『女子は数学が苦手』なんて未だに思っている人はほとんどいない。彼らが私を対等な存在として扱ってくれていることも、私の自信につながった。

女性だからと特別扱いしてもらえる方が安心だと感じる人もいるのかもしれない。それはそれで良い。でも私は、特別扱いされないことが”認めてもらえている証拠”であって、これは確かな自信をくれると思う。確かな自信は、一時的な特別扱いよりもずっと価値があって長持ちすると信じている。

数学科の環境は優遇されないことの心地よさを教えてくれた。ときに女性だからという理由で優遇されてしまうことは数学科のデメリットだが、この学びはそれを超えるメリットだと思う。