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アニマルホーダーとは|飼育崩壊をゼロにするために私たちができること

◎愛玩動物飼養管理士の資格保有者執筆◎

「アニマルホーダー」という言葉を耳にしたことはありますか?日本では「劣悪多頭飼育者」を指す言葉であり、飼育崩壊を起こしてしまった人によく見られます。

今回は、アニマルホーダーの意味となりやすい人の特徴を解説いたします。意外と身近な存在であるアニマルホーダーに私たちができることはあるのでしょうか?

アニマルホーダーとは?

「アニマルホーダー」の「ホーダー」は英語でゴミや物を集めてしまう人、捨てられない人を意味します。精神的病理のある人に対して使用される専門用語で、わんちゃんやねこちゃんなどの動物を集めてしまう人のことを「アニマルホーダー」と呼びます。

アニマルホーダーを知る上で注意したい点は「動物を多く飼育している=アニマルホーダーであるとは限らないことです。飼育頭数が多くても、予期せぬ繁殖をさせず、すべての動物たちの体調・栄養管理をしっかりと把握している飼い主様も存在しています。

まずは、アニマルホーダーの定義について紹介していきます。

【定義①】多数の動物と暮らしている

「何頭以上の飼育でアニマルホーダーである」ということは、一概には言えません。何頭という指定はなく、劣悪な環境で動物と共に暮らしている飼い主がアニマルホーダーに当てはまります。

県によっては飼育崩壊を防ぐために指定頭数を超える数を飼育する場合は保健所に提出することを定めているケースもあります。例えば、石川県ではわんちゃん・ねこちゃん合わせて6頭以上、埼玉県であれば10頭以上と暮らす場合は申請が必要など、独自にルールを定めています。

【定義②】最低限の栄養、衛生状態、獣医療が提供できない

アニマルホーダーが、わんちゃんやねこちゃんに対して不妊・去勢手術を行うことは少なく、繁殖が止まることはありません。飼育頭数が増えれば衛生状態を保つことは困難であり、すべての個体に十分な栄養が行き届いているか身体に異常はないかを把握することは難しいでしょう。

結果的に感染症の蔓延や、栄養がいきわたらず餓死するといった事態に繋がります。

【定義③】動物の状況悪化・環境悪化に対応ができない

アニマルホーダーは「動物が生きている」ことにしか関心はありません。糞尿にまみれた身体や、やせ細った身体を見ても、生きていればアニマルホーダーにとって問題はないのです。

外部から見れば明らかに劣悪な環境であっても、本人に自覚がないため、状況・環境が改善されることはありません。

【定義④】本人やその他家族への健康や幸福度にも興味・理解がない

劣悪な環境は動物だけではなく人にも悪影響を与えます。糞尿は適切に処理しなければ感染症の元になりますし、場合によってはアニマルホーダー自身や家族が病気になったり、最悪の場合死亡したりするケースも考えられます。

そういった自分自身や家族に危険が及ぶ可能性があることを理解できないそもそも興味関心がない点も、アニマルホーダーの特徴のひとつでしょう。

◎アニマルホーダーになりやすい人

アニマルホーダーになりやすい人の特徴としては、未婚女性の50~60代に多く、外部では人と多く接するような職業に就く人物のケースもあります。教師や看護師、中には獣医師がアニマルホーダーだったケースもあります。

アニマルホーダーの2つの事例

飼育崩壊は度々ニュースでも取り上げられますが、以下のような事例があります。動物好きの人には信じられないと思いますが、日本でも多くのアニマルホーダーが存在しています。

【事例①】牧場で暮らす100頭のわんちゃん

北海道のアニマルホーダーは、牛舎内でわんちゃんを増やしてしまったケースです。

元々捨てられたわんちゃんを保護したことがはじまりでしたが、不妊手術をしなかったために100頭まで増えてしまい、手の付けようがなくなってしまいました。牛舎には、もちろん牛も一緒に生活しています。そのため、わんちゃんの糞尿だけでなく牛の糞尿も清掃されずに放置されている劣悪な環境です。

リードをつけていないわんちゃんは、牛舎を抜け出し度々小学校に侵入。危険を感じた町が動物愛護団体に要請することで、わんちゃんに対して不妊手術を行い、救出を始めました。

【事例②】ゴミと一緒に暮らす動物

「ホーダー」はゴミを集め、捨てない人を指す言葉ですが、ゴミ屋敷に暮らす人の中にはゴミと一緒に動物も収集するケースがあります。実際に、ゴミ屋敷では糞尿が袋に入れられ異臭を放っていたり、ゴミの下から動物が死骸となって発見されたりする事例が多くあります。

アニマルホーダーは身近な存在

アニマルホーダーは、案外近くに存在しています。家族や親族がアニマルホーダーだというケースも多く、どのように付き合っていくか悩んでいる家族も少なくはありません。

私の叔父もアニマルホーダーの定義に似ている部分が多く、ねこちゃんが緑の鼻水を垂らしていても病院に連れて行かない。去勢・避妊手術をしないため、増え続けてしまうといった状況でした。

幼い頃の私は「動物が好きだから、たくさん飼っている」といったイメージでしたが、大人になってみるとアニマルホーダーだったのかもしれないと感じています。

アニマルホーダーから動物を守る方法は?

アニマルホーダーは、精神疾患によるものが原因であるとされ、本人に悪びれる様子はまったくありません。「自分が保護してあげている」「飼育放棄はしていない」といった気持ちが強く、すべての動物を保護したとしても、再びアニマルホーダーになってしまう確率はほぼ100%と言われています。

私たちにできることとしては、飼育崩壊の可能性のある自宅があれば、行政や愛護団体に連絡をすることです。一刻も早く動物たちを保護するためには、アニマルホーダーの可能性がある人物を知ることからはじめなければなりません。


アニマルホーダーから保護されたわんちゃんやねこちゃんの中には、人に心を開くことができず、そのまま命を落とすケースも少なくないと聞きます。

一体、どのようにすれば、そのような不幸な動物たちを減らせるのか。まずは、1人1人がアニマルホーダーの意味や存在を知ること飼育崩壊から動物を救い出せる環境を整えることが解決の第一歩なのではないでしょうか。

●ライター:バーニー
愛玩動物飼養管理士の資格を保有
●編集:うしすけチーム

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