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知らなかった ~勝つために手を抜く~

まさかオリンピックでジャイアントキリング(番狂わせ)が見られるとは・・・

といってもジャイキリの本来の意味である「格下のチームや選手が大勢の予想を覆して強い上位の相手に勝利」したのではなくその反対、世界ランク一位・金メダルに最も近いといわれた競泳の瀬戸大也選手が男子400メートル個人メドレーで予選落ちしたのである。

「スポーツの世界に絶対はない」のは分かっている。どんな名選手でも体調が悪ければ負けることもあるし、運に見放されて負けるケースだってある。しかし瀬戸選手は試合後のインタビューで「いい感じで泳げていた」と答えていた。「海パンの紐が切れた(笑)」といった不運の事故があったわけでもない。

ではなぜ負けた(予選敗退)したのか?理由は瀬戸選手自身が語っている。

「(決勝への)進出ラインを4分11秒0くらいだと読み間違えた。余力は全然ある」

そう、瀬戸選手は 自ら手を抜いて泳ぎ、予選落ちしたのである。勘違いしてはいけない。「他の選手が格下」だから全力を出さなかったわけではない。「予選だからこの程度で十分」と慢心して手を抜いたわけでもない。2016年のリオデジャネイロ大会。瀬戸選手は予選で好記録を出したものの、決勝ではタイムを落として銅メダルに終わっている。その二の舞を避けるべく、計画的にセーブして泳いだのだ。

瀬戸選手は「4分11秒0台で泳げば決勝に残れる」と考えていたらしく、実際に4分10秒52で泳いでいる。しかし決勝進出ラインである8位のタイムは4分10秒20。瀬戸選手の設定タイムがあと1秒短ければ・・・実に悔やまれる。


以前「世界新記録だけど銅メダル?」で

100mを9秒00で走れるけど、体力がないから一日に一回しか全力で走れない。だから予選で世界新記録を出し、決勝は棄権する

といった趣旨の文章を書いたが、まさかこんな現実が待っていたとは・・・


どうやら陸上競技や競泳の世界では「全力で走る(泳ぐ)」練習をしているだけでは勝てないようだ。ベストコンディションで決勝に臨むために、体力温存・セーブして予選通過する技術も身につけなければならない。まさに「勝ちたければ、手を抜け」「手を抜く練習をしろ」である。個人的には

「記録がすべて。予選だろうが決勝だろうが、記録を出せばいい。作戦ミスで予選落ちするくらいなら、予選で大会新記録・世界新記録を狙った方が・・・」

と思うのだが、選手の立場からすればそうも言ってられないのだろう。記録はいつか破られるが、「〇〇大会優勝」「オリンピック金メダリスト」といった記憶は永遠に残る。それに俗物的な話だが、「記録」よりも「記憶」の方が金になる。アスリートが金儲けのためにスポーツをしているとは思わないが、スポーツを続けるにはお金がかかるのだから仕方がない。とはいえ

「手を抜かなければメダルは獲れない」

とは・・・うーん、出来ることなら知りたくなかった。

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