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電話になんか出なくても運命の人には出会えますから

嵐の前触れもない空を見て、「嵐は本当に来るのか?」とドクが訊く。「天気予報なんて当たるわけないんだ、30年経っても。」とマーティーは言う。1955年11月12日22時4分、時計台に雷が落ちるという変わらない運命を頼りに、マーティーは過去のドクの手を借りて現代に戻る。最近よく「運命が変わった」なんて表現を聞くけど、変わったんじゃない。予め知らないだけ。もし運命が変わったら、BTTF方式で考えれば、写真から「私」が消えちゃうことになる。運命が変わるなんて言葉に騙されちゃいけない。運命が変わったら、元も子もない。

KDDIの通信障害で、初めて会う人と待ち合わせをしていた人が会えなくて困ったというニュースをやってた。スマホがないと人に会えないなんて、なんて不便な世の中だろう。科学が発達すればするほど、世界は不便になった。繋がらないというストレスが増えた。余計な心配事で人々が病んでしまった。1985年なら、そんなものなくても、みんなもっとご機嫌に暮らしていた。現代では、便利ですよと言って持たされた機械に主導権を持ってかれ、せっかちになり、みんながイライラ暮らしている。そして何より、運命には鈍感になった。

通信障害の陰で、土曜の夜のテレビでは、バック・トゥ・ザ・フューチャーが放映されていた。よくできた映画で、今見てもかっこいい。ファミリータイズで見てたお兄さん、マイケル・J・フォックスは、コメディも完璧。細かい仕掛けが満載で、何度も繰り返し見るほどに面白い。モレなく、ムダがない。運命の人には約束しなくても、電話なんかなくても出会える。マーティーは一人で過去に行って、公衆電話を使うために入ったカフェで父に会い、祖父の車にはねられて目覚めると母に介抱されていた。携帯電話もないのに、ちゃんと運命の人に出会っていた。

「電話は留守番電話にして、永遠に出ないでください。電話になんか出なくても、運命の人には出会えますから。」

これは、私の先生が授業中に言った名言。実際には、生徒の携帯電話が派手に鳴ったので、多分イラッとして咄嗟に出た言葉。

それにしてもデロリアン、ピーボディさんの納屋に突っ込んだ時はほんのり湯気が上がってるだけなのに、現代に帰ってきた時は凍りついてるのがコントみたいで面白い。ちなみに、映画はたくさんの時計がカチカチするシーンから始まるけど、時を刻む星、土星は約30年で太陽系を一周する。

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