異端村

小さい頃、戦隊ごっこが流行っていた。僕はいつも悪役を選んでいた。信念を持っていて、敵が多くても屈せず、自分の願いを叶える為に努力する。そんな悪役が好きだった。友達は戦隊ごっこをする度に悪役を選ぶ僕を不気味がった。ある日、いつも通り戦隊ごっこをしていた時、僕はどうしても負けたくなかった。その場に落ちていた石を拾ってリーダー格のヒーローに目掛けて投げつけた。石はヒーローの顔面に当たった。僕はヒーローが蹲った瞬間にヒーローの腹を蹴り上げた。悪役がヒーローに勝った。僕はとても嬉しかった。僕は蹲ったヒーローの頭に足を乗せ「どうだ!みたか!僕の勝ちだ!」と言って歓喜した。ヒーローの周りには大人や他の子ども達が集まって来た。僕はヒーローから引き剥がされた。
ヒーローは石が目の辺りに当たって、視界に黒い部分が出るようになったらしい。ヒーローは二度と戦えない体になった。僕の完全勝利だった。

それ以来僕は監視されるように日々を過ごしていた。誰もがぎこちない優しさと確かな警戒心を持って接してきた。

僕は皆んなに褒められるように頑張った。落ちているゴミをゴミ屋敷と呼ばれている家に捨てたり、電車で騒いでいる子供を黙らせようと口を塞いだり、クラスで殴り合いの喧嘩をしている二人に椅子を叩きつけて辞めさせたりした。

それでも皆んなが僕を遠ざけた。笑顔で接しているようで、そこには限りなく距離があった。
僕はどうしようもなく普通ではないのだと自覚した。

皆んなが高校に上がる頃、僕の事が手に負えないと言った親は、僕を異端村に引き取らせた。異端村は僕のような世間では手に負えないと判断された人達が集められているという場所だ。異端村には僕と同じような歳の子や、遥かに歳上の大人まで居た。

そんな異端村の皆んなはとても"普通"だった。まるで異端村以外がおかしいのではないかと思う程に異端村の人間は"普通"だった。
誰に媚びる訳でもなく、ただ"普通"に過ごした。僕はこの"普通"を手放したくなかった。だから、僕は"普通"であり続けた。

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