魔女の魔女狩り

皆が魔女狩りのふりをする。魔女である事が明るみに出れば、同じ魔女狩りのふりをした魔女に狩られてしまう。水を出す魔法が使えたとしても、誰にも見られないようにひっそりと、自分の喉を潤わす事にしか使えない。灯をともす魔法が使えたとしても、誰も居ない暗い部屋で、本を読む為に照らす事でしか使えない。

魔女である事が知られないようにという装いに疲れた魔女達は小さな自殺を繰り返す。生きている事を味わう為のほんの小さな死を。
そうすれば、生き延びる事が出来る。

空が青い退屈や朝が眩しい絶望が枷になり、次第に魔法を忘れる。魔法を忘れると、魔女や魔女狩りの存在も忘れる者が居れば、自分が魔女であった事を忘れて本当の魔女狩りになる者も居る。
魔女狩りは年々増えている。今日では不思議な事に、魔女を狩った魔女狩りも狩られるようになる。

この様に苦しい世界だが、多くの魔女が明るみに出たいと望んでいる。誰も魔法には自信があるのだ。


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