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脳の発達①

「子どもたちに関わる仕事をしている以上、目に見えない部分の発達について知らないといけない」
私が小学校教員の時に強く思ったことです。
ちょこちょこ書いていこうと思います。

脳は三層構造

「頭がよくなる」という言い回しを耳にしたことがある方、自分が言った経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
(私も子どもの時に「頭がよくなりたい!」とよく言っていたような…)
頭が良くなる、かしこくなる、というのは小さな子どもたちも口にすることがある言葉ではありますが、実際にどのような仕組みで頭が良くなる・かしこくなるかはほとんどの子がわかりません。

「頭がよくなる」ということは正確に言うと「頭の中にある脳の神経繊維のネットワークがより広く、複雑に、強く結びついている」という状態になっています。

「気持ちってどこにあるのかな?」と聞くと「ここ!」と心臓のあたりに手を置く子もいます。
でも、実際には気持ち(感情)も脳の働きによるものです。

脳は外からは見えませんが、私たちの全ての動きを司る、大事な大事な部分です。
今回は、人間の脳がどのように発達していくのか?ということについてお話ししていきます!

脳と神経細胞

人との脳は千数百億個の神経細胞が集まってできています。この神経細胞のことを「ニューロン」と言います。
神経細胞には「神経細胞体」と「神経繊維」があります。
図で表すと、本体のところが神経細胞体、しっぽのようになっているのが神経繊維ですね。


人の脳の容積(大きさ)は、ある程度の年齢になったらもう大人と同じになります。
さて、ここで問題です!
人の脳は、だいたい何歳までに大人とほぼ同じ容積になるのでしょうか?
4択から選んでみてください。

1. 3歳
2. 6歳
3. 9歳
4.12歳

決まりましたか?
正解は…

2.6歳です!
人間の脳の容積は、だいたい6歳で大人とほぼ同じになるのです。
「え!そんなに早いうちに?」
と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

脳の容積は6歳頃から変わりませんが、中が大きく変化していきます。
実は神経細胞のうち、神経細胞体は新生児から減っていく傾向にあります。
冒頭にも述べたような「頭がよくなる」状態は、細胞がどんどん増えていくようなイメージがありますが、細胞自体はなんと減っているんですね。
増えているのは「神経繊維」なのです。
蜘蛛の巣のように、神経繊維同士が増えてつながりを作っていくことで、脳は発達していくのです。

三層構造とは?

脳は大きく三つの層に分かれていると言われています。

①生命維持の脳(脳幹・中脳)

一つ目の層にあたるのは「生命維持の脳」です。脳幹や中脳という部分が該当します。
生命維持と言われる通り、生きるか死ぬかに関わるようなことを司っています。
脳幹は呼吸や睡眠、姿勢維持など。中脳は食欲、性欲、睡眠欲に関係しているのです。
この「生命維持の脳」はは虫類にもみられるため、「は虫類の脳」とも呼ばれています。

②情動の脳(大脳辺縁系)

二つ目の層にあたるのは「情動の脳」です。大脳辺縁系という部分が該当します。
大脳辺縁系は記憶、感情、快楽、興奮、共感などを司っています。
この「情動の脳」はほ乳類にもみられるため、「ほ乳類の脳」とも呼ばれています。

③思考の脳(大脳新皮質)

三つ目の層にあたるのは「思考の脳」です。大脳新皮質という部分が該当します。
大脳新皮質は言語、認知、運動、感覚処理、抑制などを司っています。
言葉が関係しているということで「人間脳」とも呼ばれています。
また、大脳新皮質の中でも「抑制」に関して特に重要な部分を前頭前野(前頭葉)と言います。

教育は大脳新皮質を育てる

脳は全て同じように発達していくのではなく、部位によって成長の仕方が違います。
生まれた時からある程度発達しているのは「生命維持の脳」です。

なので赤ちゃんがお腹を空かせた時には、泣いて知らせますよね。
それは「生命維持の脳」が
栄養をもらえないと死んじゃうよー!!
という命令を出しているからなのです。

また、オムツがぬれて気持ちが悪い時や
なかなか寝られずにいる時にも赤ちゃんは泣きますね。
それは、生まれながらに備わっている最も原始的な感情が「快・不快」と「興奮」だからです。
感情は「情動の脳」が司っていて、生まれた時から大人のようなあらゆる複雑な感情を持っているわけではありません。
生活や社会経験、他者とのコミュニケーションを通じて感情は分化していきます。

「思考の脳」は生まれた時にはほとんど発達していません。
これも「情動の脳」と同じように、少しずつ発達していくのです。

思春期に入ったお子さんに、どう関わっていいのかわからない…という保護者の方のお悩みを聞くことも少なくありません。
思春期特有の行動は、実は脳が大きく関係しているのです。

車に例えてみます。
車には動きを進めるアクセルと動きを止めるブレーキがありますよね。
運転する時、アクセルとブレーキをうまく使って目的地まで向かいます。
もしどちらかの効きが悪かったり、片方の効きがやたら良かったら、安全に運転ができませんよね…。

実は脳も、車のようなアクセルとブレーキの関係があるのです。
大脳辺縁系が司る「情動・欲求」はアクセル。
大脳新皮質・特に前頭前野が担っている「抑制」の働きはブレーキ。
ブレーキの役割を持つ前頭前野の発達は、情動・欲求(アクセル)の大脳辺縁系の発達に比べて遅いです。
なので、まさに「ブレーキの効きが悪くて、アクセルの効きがやたら良い」という状態になっているのです。
思春期になると子どもへの対応が難しくなるのは、思春期はまさに前頭前野と大脳辺縁系のバランスが崩れている時期だからです。
なので思春期の子どもたちは、自分の行動を抑えることが難しくなります。

なので、思春期に入る前の小学校中学年くらいまでに「抑制の仕方を教える」という教育がとても大切になってきます。
主に感情のコントロールですね。
これについては、また別な記事に掲載しますので、ぜひそちらをご覧になってください!

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