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「好き」の理解

私の好きな人は私のことが好きだからではなく、私のことを大切にしたいからずっと一緒にいたいからという理由で私と恋人になる道を選んでくれた。
「好きかと聞かれたら答えられないかもしれない」と言う言葉を添えて告白をしてくれた。
付き合う前、いや、知り合った頃から彼が人を好きになれないことは知っていたから、彼の述べる理由だけで充分幸せだったし充分納得できた。

ところが、付き合ってからの彼の行動は「君のことが好き」という感情が読み取れてしまうほど甘く優しいものだった。
しかしそれを聞いてしまうときっと彼は困ってしまうから、私はあえて何も言わず彼自身が答えを出すまで待とうと決めていた。

そしてつい先日。
「最近君に対して、〇〇なところがいいってたくさん思うけど、たまに好きと言いそうになることがあるんだ。」
「だから最近手も繋ぎたいしくっつきたい欲が増えている。」
と彼が話してくれた。

彼は好きが分からない。
どういう感情なのか。いつそれが発覚するのか。どんなタイミングで生まれるものなのか。そもそも好きとはなんなのか。
彼の中には「好き」というひとつの感情に対していくつもの疑問があるのだと思う。
そんな彼の心が私に対してどうにかして震えて、「それ」を言葉にしたいけれどどう言えばいいのか分からない。しかし「それ」が込み上げてきた時、彼の口をついて出そうになる言葉が「好き」なのだ。(私の想像だけれど)

「もしかしたら好きなのかもしれない。」
と言った彼に対して、
「『好きかも』は、もう好きだよ」
と素直に返すと、
「そうだよね」
と彼も素直に返してくれた。

彼は案外困っていなかった。
むしろ「そうだといいな」と言いたげな声色と表情を零していた。
「やった。一番最初の好きな人は君だ」
と嬉しそうに言う彼。
2番目なんて作らないでそばに居てね。

そんな彼は今隣で気持ちよさそうに寝ている。
可愛い寝顔。少し苦しそうないびき。眠りにつく前に広げてくれた腕枕。
それら全てが愛おしくて堪らない。

彼は私の恋人なのだ。
決して完璧ではないけれどそこも大好きで大切なのだ。
「ちゃんと見てるよ」
と安心させてくれる彼。
私だってちゃんと見てるしいつも気にかけている。

夜の展望台で街の地図を見ずに勘だけであそこはなんの建物なのかを真剣に2人で考えたり、カメラを向ける度に変顔をする彼を見て息ができないほど笑ったり、私のおふざけに乗ってはしゃぎすぎたり。
彼といるとずっと楽しくて嬉しくて心が軽い。

「そのままの君がいい」
性格も容姿も全部含めてそう言ってくれる彼。

「好きでいて」
と恥ずかしげもなく言う彼。

私は「ずっと」や「この先も」みたいに、未来を約束するような言葉なんて信じないけれど、彼との間にそれが少しだけでも存在してくれていたら嬉しいと最近思う。

彼が私のことを好きになってくれたとしてもその事実に対して執拗に依存しないようにしたい。
今のままでいたい。
彼は可愛いと思ったらそう言ってくれるし、だめだと思ったらそう言ってくれる人。
だから好きだなと素直に思って言いたくなれば言ってくれるはず。
それを待てばいいだけなのだ。
強要したってそれは彼にとって、本当の好きではない気がするから。

彼の「好き」と私の「好き」は違う。
けれどそれは決してlikeとLoveの違いではなくて、「好き」に対しての考え方が違うだけなのだ。
それが特別私を苦しめている訳でもないし彼に負担をかけている訳でもない。

私たちには私たちの「好き」の形があって、それを大切に2人で包んでいけたらと思う。

最近何かと似てきた私たちだから、きっと彼も同じことを思ってくれているはず。

同じじゃなくたっていいの。
ただそこに貴方がいてほしい。
ただ貴方の隣に私を置いていてほしい。
それだけなんだよ。

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