うた・こうた

コチという童話を書きました。チラッと読んで頂けたら嬉しいです。

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コチという童話を書きました。チラッと読んで頂けたら嬉しいです。

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  • コチ

    1匹の蛾、コチの物語です。コチの小さな願いを叶えるため、コチはきっと頑張ります。子供から大人まで楽しめる内容になってたら嬉しいです。

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コチ1〜再会〜

四角い空の下、一輪、花が咲きました。 ✳︎            轟音が響き渡る。  ここは、工事現場。 力強く回るタイヤが地面を削り砂煙を出しながら移動する。高い塀に囲まれたこの場所では砂煙と轟音が溢れかえっていた。  そこで動く機械は、何かを作っているのか、破壊しているのか、理由も聞かず無表情。無表情の割に、動けばいちいち騒がしい。そこでまた人間も叫ぶように怒声をあげるから、この場所では音が顔をギュウギュウに寄せながら満員状態だ。  大きなショベルカー。こいつも

    • 【創作ショート】たった40秒のものがたり〜そどむ〜

      2匹の猫が毛繕いしながら話している。 🐈‍⬛「ソドムって知っているかい?」 🐈「いきなりなんだよ」 🐈‍⬛「いきなりじゃない。最近の俺の頭の中ではソドムがやたら登場するんだ。」 🐈「僕の頭の中じゃ今産声をあげたよ。それって、おとぎ話に出てくる怪物だっけ?」 🐈‍⬛「街の名前だよ」 🐈「へえ、そうなんだ。いったいどこにあるんだい?」 🐈‍⬛「もう滅んだよ」 🐈「えっ!?滅んだの?どうして?」 🐈‍⬛「神様が怒って滅ぼしたんだよ」 🐈「なんで街を滅ぼす程、そんなに怒ったんだよ」

      • 【創作ショート】たった40秒のものがたり〜せみしぐれ〜

        蝉時雨。 あー。うるさい。 窓を閉めて、エアコンをつける。 それでも蝉は鳴き続ける。 あー。うるさい。 イヤホンを耳の奥に押し込みボリュームを上げる。 それでも蝉は鳴き続ける。 必死だね〜 木陰のベンチ、3行読んだ本を置いて、微笑み空を見上げる。 こいつだけは蝉オシッコの集中豪雨が降りますように。 そんな暇はないと 蝉は鳴き続ける。

        • 【創作ショート】たった40秒のものがたり〜すかる〜

          生きてるカエルは頭蓋骨を見つけた。 「君は一体、誰だったの?」 生きてるカエルは頭蓋骨を見つめて考えた。 「君は生きていたら俺を食べたかい?」 生きてるカエルは頭蓋骨の今は無き目玉のあたりを覗き込んだ。 「ここの目玉はどんな景色を見て来たんだろうね?」 生きてるカエルは頭蓋骨の中に入って考えた。 「生きてた証はここには無さそうだ。」 頭蓋骨は何も語らない。 生きてるカエルはぴょんと頭蓋骨の上に飛び乗った。 そして歌を歌う。 生きてる証はここにしかない。

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        コチ1〜再会〜

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          16本

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          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜しおかぜ〜

          モグラの独り言。 子供の頃、潮風の歌を聴いた。 湿った土の香りが漂ういつもの場所で いつものように木の根に耳を傾ける。 そこで潮風の歌を聴いたんだ。 あの頃ははまだ子供だったよな? 間違いない。発想がどこまでも幼稚だ。 僕のいる場所? 土の中。 これからもずっと土の中。 そう、馬鹿げてるね。 風とは無縁の土の中だ。 知るわけないのさ。 潮風だろうが 北風だろうが。 きっと会う事がない。 きっとじゃない。間違いない。 太陽がいる世界なんて行きたくもない。 今も昔も変わ

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜しおかぜ〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜さすらい〜

          コマドリがまた田んぼに戻って来た。 さすらいのバカ鳥 誰かがそう言うとコマドリは不機嫌に再び飛び立った。 カエルは羨ましそうにその羽を目で追った。 カエルは今日こそはと灰色の道を見据える。 この道は用水路を泳いでも辿り着かない栄光へと続く道。 この灰色の道から栄光を目指したカエルの相棒は車に轢かれ落ち葉みたいにぺちゃんこに潰れた。 「そこに夢があるんだ。行かない理由なんてないだろ?」 そう言って相棒はカエルの目の前で落ち葉になった。ヒラヒラと吹く風はその落ち葉をどこへも

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜さすらい〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜コマドリ〜

          コマドリは方向音痴だ。 見知らぬ土地にやって来た。 ここに来たかったわけではない。 戻れなくなってしまったのだ。 コマドリはここでご自慢の歌を歌ってみる。 その歌をトラックの走音が掻き消した。 ここは自慢の歌を歌い上げる事の出来ない場所だった。 ここは僕のいるべき場所じゃない。 そう思ってコマドリは電線を飛び立った。 羽を休める為に降り立った場所もやはり電線だった。 コマドリはご自慢の歌を歌ってみた。 カァー カァー 次々と甲高い声が現れて、コマドリの歌は掻き消される。 気

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜コマドリ〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜くにやぶれてさんがあり〜

          「いいかい。そんなに根を張ったって意味ないんだよ。」 捨てられたうさぎは、イボ草に言った。 イボ草は何も答えない。 「ここはきっと駐車場になって、コンクリート地獄だよ」 捨てられたうさぎは続けた。 「僕は知っているんだ。人間と一緒に住んでいたからね。テレビだって観ていた。なんでも教えてくれたよ。僕は世界を知っているんだ。知っているかい?世界は灰色なんだよ。ここももうすぐ灰色さ。」 風に揺れるイボ草を見て、うさぎは何か答えてくれたのかと期待したが風は自分にも吹いていた。 「君は

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜くにやぶれてさんがあり〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜きみがよ〜

          「いいですか?私はあなたの歌が不快です。」 捨てられたうさぎの声はカエルには届かなかった。 それを掻き消すほどの罵声や暴言が歌うカエルに注がれていたからだ。 聴くと呪われ、頭がおかしくなると噂のカエルの歌を多くの者が耳を塞ぎ、大声を出し耳に入れる事を拒んだ。 それでもカエルは歌い続ける。 そこは狂ったように音が重なり合う 田んぼの大合唱 どうせ消えてしまうのならと うさぎもここで叫んだ。 「なんで捨てたんだ!馬鹿野郎!」 田んぼにうさぎの声が響き渡る。 聞き馴染みのない音に

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜きみがよ〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜からすえんどう〜

          悪夢から現実に戻る時、ホッとする気持ちと他の者を残して僕だけこの悪夢から出て行く事に少し罪悪感を覚えた事を覚えている。 ただ今なら他の者を押しのけてでも我先にとこの悪夢から逃げ出す事だろう。 悪夢から現実に戻る時、現実が悪夢の続きだと分かった時、眠りたくないし、目を開けたくない。 昨日捨てられたうさぎは、 ただ目を瞑って涙を堪える。 ぐすん ぐすん ぐすん 涙を流したらゲームオーバーな気がした。 何が?全てがだ。 ズシシ、ズシ。 鼻水はセーフというルールにしよう。 ズシ、 「

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜からすえんどう〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜オリオン〜

          星座の形に納得できた者はこの世にいるのだろうか? 昔の人は、よほど暇だったんだろう。星を結んで無理くり形を想像して 「ほら、あれ双子にみえない?」 なんて言って隣に座る気の合う仲間と夜空を見上げながら語り合っていたのだから。 いや、気の合う仲間だったら 「えっ、どことどこを結んだの?いやいや全然見えないわ」 そう言って正直にその答えに行き着くには無理があると隣の者に伝えただろう。 「本当だ!双子に見えてきた。」 と言った隣の者は、相手に気を使い過ぎている。 隣の者だけならまだ

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜オリオン〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜エーテル〜

          分断された空に虹がかかった。 檻から見たその光景はなんだかずっとやってくる。 あれは初めて見た虹だった。 くだらない。虹なんてただの光の反射だろ? あれから何度も冷ました。 二度目に見た虹はテレビ画面に映った。 七色の光は簡単に加工され、それから何度もテレビ画面で出会う事になる。 テレビは親切に虹の出来る仕組みまで教えてくれた。 虹は僕らだけの特別なものではなかったと知った。 あのビスケットだって。そう。 あれを初めて食べた時、こんな美味しいものがこの世界にある事に喜び

          【創作ショート】たった40秒のものがたり〜エーテル〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜うしのこく〜

          今は何時だろう? 夢と現実が分からない時がある。 でも瞼を閉じているのなら、それは大抵の場合夢である。 でも、それが今日田んぼに捨てられたうさぎの場合それは幻想で、恐怖で頭がおかしくなったと先生は診断し適当なお薬を処方する事だろう。 そして、うさぎは「本当なんだ。」と先生に訴える。 うさぎは何度も目を凝らして、その月明かりに浮かぶ影を見た。 「本当なんだ。カエルの歌が聴こえて来たんだよ」 鳴いているんじゃない。 本当に歌っているんだ。 ほら、見てよ。先生。 だからお薬はいら

          【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜うしのこく〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜いとすぎ〜

          あの家にクリスマスツリーはなかった。 本日田んぼに捨てられたうさぎは、ふと思い出した。 夏の終わりになぜ? 暗闇に怪しく揺れる木の影が今にもこちらに襲いかかってきそうで怖かったからだ。 あれはただの木。楽しい楽しいクリスマスツリーだ。 クリスマスツリーを知ったのは、テレビが教えてくれたからだ。 とても煌びやかな光。 あれがサンタを呼ぶ光。そう思った。 サンタから何をもらったっけ? 小さなリボンが結ばれたいつも食べてるビスケットだった。 あの日、僕にもサンタが訪れた。

          【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜いとすぎ〜

          【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜あぶら虫〜

          はぁはぁはぁはぁ…荒い息の音が闇に消える。 だだっ広い大きな夜の下で 潤んだ瞳が見つけたのは 葉の裏に隠れた小さな小さなアブラムシの大群だ。 アブラムシは、日当たりの良い場所が大嫌い。 風通しの良い場所が大嫌い。 風に揺れない葉の裏でいつの間にかこんなに集まった。 ヤバくない? ヤバッ ヤバイ、ヤバイ こいつヤバイよね? じわじわとアブラムシの視線がその見慣れぬ生き物に集まっていく。 ここは、田んぼのあぜ道。 こいつは今日捨てられたんだ。 誰に? 飼い主に。

          【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜あぶら虫〜

          コチ 最終回 〜虹〜

           コチの羽に雫が落ちる。雨が降っていると気付いた年老いた人間は大慌てでホウキで集めた落ち葉をちりとりに運ぶ。ホウキに掃かれて、ちりとりに枯葉とコチが運ばれる。用意されたビニール袋が開かれ、ちりとりに集められた枯葉とコチがその袋に導かれる。  「まだ、行くもんか。」  枯葉に紛れたコチの体は動かない。誰もコチに気付かない。傾けられたちりとりによって次第に枯葉の中に埋もれていく。  「もう少しだ。もう少しなんだ。僕が春を知らせに行くんだ」  必死に体を動かそうとするコチの

          コチ 最終回 〜虹〜