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写真展『遠い青』を終えて


せとうち暮らし写真展『遠い青』。先日、無事終了しました。

遠くからわざわざ会いに来てくださった方、たまたま見かけて立ち寄ってくださった方、何年か越しに再会できた方。この展示をきっかけにたくさんの新しい出会いや再会を果たせて、胸がいっぱいです。

1ヶ月以上にわたる写真展を経て感じたことを、ここに綴り残しておきたいと思います。


写真展の空間づくり


会場は、広島県尾道市にある、ONOMICHI U2さんのイベントスペースをお借りしました。

ONOMICHI U2


ONOMICHI U2さんの施設内には、ホテルやカフェ、ショップもあるため、観光や食事ついでにふらりと立ち寄ってくれる方が多かったです。
スタッフさんがご厚意でソファなどの腰掛けるスペースをたくさん準備してくださり、たまたま訪れた方がソファに腰を下ろして写真を眺めてくださっていました。
このソファの座り心地がとってもよくて、ついウトウトしてまうほど。

写真展の会場(ONOMICHI U2イベントスペース)


布を一枚隔てた空間。
大きな窓から光が差し込み、その奥に瀬戸内海を眺めることのできる会場は、時間の流れとともに差し込む光の形が変わり、ショップの入り口が開いて誰かが入ってくるたびに、冬の空気がすんと流れ込む。
そのゆるやかに変化する流れがとても心地よく、わたし自身、その流れの中にずっといたいと思えるような空間でした。


写真展のテーマを自身で体感した、あるご夫婦との出会い

ある日、在廊しているときに一組のご夫婦が立ち寄ってくださいました。
最初は挨拶を交わしたのみでしたが、しらばく会場で過ごしてくださったあと、女性の方がわたしに声をかけてくださいました。
「わたしも昔、ちょうど同じ場所で、この景色を見たことがある」と。
聞けば、若い頃(彼女曰く、隣にいらっしゃる旦那様と出会うよりもっと前とのこと)、悩みがあったときには何度もこの景色を見に来ては癒されていたというのです。
それはまさに今のわたしと重なっていました。


時間軸は違えど、同じようにこの景色を見た人がいたこと、そして今日、同じ空間でこうして出会えて、言葉を交わせたこと。写真展をしていなかったら知ることのなかった遠い日の思いに触れて、心があたたかくなったできごとでした。
「たまたま写真展を見つけて、来れてよかった」と微笑み合うお二人。素敵なご夫婦だったなあ。写真展をやってよかったと思えた瞬間でした。



会場に残された言葉たち


会場にはノートを一つ置いていたのですが、そこへ、たくさんの方が言葉を残してくださっていました。
友人からのメッセージもあれば、顔も知らない方からのメッセージや、旅のひとこと日記のようなもの、外国の言葉での文章まで。
在廊日に訪れるたびに、このノートを読むのがわたしの楽しみでした。

「佐木島の祖父母の家を思い出しました。壊してしまってもうないけれど、帰りたくなる青ばかりでした。」

「手を伸ばせばいつでもたぐりよせることができそうな、私の記憶の中を見ているのかと錯覚してしまいそうな、なんだか懐かしい景色が広がっていました。どの“青”も、きっと私も見たことがあります。」

「高校生の頃の思い出に浸りながら、尾道の美しさを再度実感しました。どの青も美しい。」

会場のノートより

誰に宛てるでもない、やさしい青の記憶。
普段思い出すことはなくても、人にはいつか見た遠い日の記憶が片隅にあるのでしょう。
写真展をきっかけに、心の隅にあった記憶に触れていただけたこと。わたしにとって、写真の可能性を新たに感じたできごとでした。

ほかにも、たくさんの心あたたまるメッセージで、ノートはちょうどまるまる一冊埋まるほどに。
言葉を残していってくださったみなさん、本当にありがとうございました。


最後に

改めまして。
一緒に展示を作り上げてくれたcalmのお二人(萬壽洸樹 平末健人)、
企画してくださったDANさん、ONOMICHI U2のスタッフの皆さん、
写真展に足を運んでくださった皆さん、SNSで気にかけてくださっていた皆さん。

おかげ様で、無事に写真展を終えることができました。本当にありがとうございました。

静かな瀬戸内海に波紋が広がるように、これからもそれぞれの中にある遠い青の記憶が、場所や時間を超えてやさしく広がりますように。


(写真展で販売していたポストカードやフォトブックを数量限定で販売していますので、よかったらご覧ください。)


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