はじめに

 この度はUTFRの合格体験記を手にとっていただきありがとうございます。弊団体は創設から6年目を迎え、合格体験記は今回で第8弾を発行することとなりました。コロナ禍での学園祭も徐々に入構制限が緩和されつつあるなか、非進学校出身東大生の声が活字として記録に残され、そして読者のみなさんの手元へ届いていることを嬉しく思います。
 この合格体験記がどのようなものか、それをお話しする前に、まずはUTFRがどのような団体かについて説明させていただきます。弊団体は非進学校出身東大生によって構成され、高校からの繋がりが周囲にない東大生にとってのコミュニティを営んでいるほか、同じような境遇の高校生や受験生を支援しています。今年度の五月祭でもまた、全国の非進学校に在籍する東大受験生たちへ私たちの声が届くことを願い、合格体験記を執筆して出版することとなりました。
 合格体験記の説明にあたり、どのような人たちが執筆したのか、執筆し発行することにどのような意味があるのかについて触れさせてください。
非進学校とはどれくらいの偏差値か、これは講演会をはじめ教育活動を行うときによく聞かれることです。弊団体では東大合格者1名、旧帝大合格者10名未満が入会の目安とされ、ざっくりと言うならば、母校が数年に1人東大合格者が出るような高校であれば入れる、といった感じです。もちろん、東大生を輩出しているからには地元では進学校と見なされるだろう高校の出身者もなかには在籍しています。しかしながら、この合格体験記を執筆したメンバーに紛うことなく共通することは、「かつて孤独に東大を目指していた」ということです。そのようなかつての境遇、同じような過去を持つということこそが、UTFRでのつながりを媒介するだけでなく、この合格体験記に読み物としての価値を与える役割を果たしています。東大へ進学するという本来向かうはずのなかった道が何をもって現実となったのか、その契機やその過程で乗り越えた逆境を温かい目で見ていただけたら幸いです。
東大に合格するための受験戦略として、大手予備校の合格体験記が優れていることは疑問の余地がないでしょう。非進学校出身東大生による個人の経験談を誰にでも通用するように一般化して考えるのは、極めて困難なことだと思います。一方で、この合格体験記では受験の背後に「大きな物語」があり、それを記録に残すことに意味があるのだと思います。
 最後になりますが、今回合格体験記を書いてくれた8人の東大生は全員が1年生です。執筆時には新入生として入学式を迎えたばかりでしょう。今年度の祝辞では馬渕俊介氏が「夢」、「経験」、「人生のリスク」について述べられ、非進学校出身者には特に思うところがあったことと思います。孤独な大学受験が終わり、再び人生の転機を迎えた今、合格体験記の執筆を通して自らの過去を着地させ、新たな世界へ向かうことができるのを願っています。
 ここまで前書きに目を通してくださり、ありがとうございました。読み物として、あるいは受験の参考資料として、どのように見るかはお任せします。みなさんに何か一つでも届けられたら嬉しいです。
 それでは、本編をどうぞお楽しみください。
 
2023年5月13日 編集長 柴田翠國

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非進学校から孤独に東大を目指したメンバーたちの受験体験が記されています。

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