おわりに

 最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。前書きでも触れている通り、この体験記では編集部が原稿の加筆・削除を行っていません。非進学校から東大を目指した契機、乗り越えた逆境などに関する「生の声」をどのように感じたでしょうか。

 通信制高校から仮面浪人を経て東大に入学した経歴を記してくれたねこまっしぐらさん、過去の経験を述べてくれた清水くん、好奇心の大切さを教えてくれたヘンリーくん、自身の学校生活を語ってくれた鰯くん、自分の道を伝えてくれた⻘りんごさん、孤独な戦いを綴ってくれた未来くん、そして進路決定を振り返ってくれたあいだくん。彼らの声が少しでも記憶として残れば幸いです。

 原稿を私の元に寄贈してくれた方々以外にも、たくさんのメンバーの協力のおかげでこの第 7 版を発行することができました。入学当初に学内で全く伝手のなかった私たちがこの団体を通じて出会わなかったならば、この体験記が発行されることはなかったでしょう。東大内部での非進学校出身者というアイデンティティが高校時代の孤独を越えたことを嬉しく思います。

 そして今、非進学校出身の東大生たちは人生の新たなステージへ、誰もいない道を進み続けています。進振りで文理選択を変える人、大学院で海外へと羽ばたく人... UTFR で支え合いながら、東京大学への入学後も新たな世界へ向かって進んでいます。一般的な東大生が高校時代に経験したものとは遠く離れた、独特な環境にいたからこその挫折と葛藤は、またいつか大きな壁にぶつかることがあったとしても、新たな挑戦を力強く後押ししてくれるでしょう。

 以下は編集での裏話、私の感想です。後書きが冗⻑になるのは申し訳ないので、右ページへ読み飛ばしても差し支えありません。

 スケールの大小に関わらず、挑戦には乗り越えなければならない壁がつきものです。2 年ぶりに駒場祭で新作を出版することになり、そして編集作業に終わりが見え始めた今、ここまでの過程を振り返ると、決して平坦な道だけではなく、いくつかの壁もあったように思います。

 東京大学では、2 年生になると「進振り選択」が行われ、夏には後期課程の学科が決まり、秋以降は内定した学科が開講する授業を履修することとなります。これらの授業の多くは本郷キャンパスにて行われ、五月祭のときに比べて駒場キャンパス内の 1 年生とは対面で連携することが困難になりました。さらには授業のコマ数、授業後の課題の量も格段に増え、学生団体の活動の継続が難しい時期もありました。また、1 年生も勤勉なメンバーが多く、彼らは履修登録していない授業にも教員の許可を得て足を運んでいます。そのような忙しい中でも自分の時間を削り、団結して執筆や編集に協力してくれたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

 原稿を受け取る際には、「⻑くなってしまったけど、これだけは絶対に伝えたい」との声を何度も聞きました。なかには、原稿を推敲して再提出してくれた人もいます。また、執筆者へ書く内容の指示を出していなかったのですが、どれも周囲への感謝、挑戦する人への応援で締めくくられています。「あのとき乗り越えたこと」が、どれほどにかけがえのない経験だったのか、それこそが「絶対に伝えたい」と言っていたことの根幹なのではないでしょうか。文章の冒頭で触れた「生の声」が、執筆者たちの強い信念と共に、読者の皆さまに届くことを強く願っています。

 この体験記を発行するにあたり、私たちの挑戦を通して誰かの力になりたい、何かに挑戦する人を応援したいという気持ちがあります。(かつての私にとってそうであったように、) この体験記が東大を目指すきっかけとなれば幸いです。読み物として、あるいは受験の参考資料として、どのように見るかはお任せいたしますが、この冊子を通して関わることができた読者の皆さまに心より感謝し、締めくくらせていただきます。

 改めて、ありがとうございました。

                      2022年11月18日 編集⻑ 柴田翠國

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非進学校から孤独に東大を目指したメンバーたちの受験体験が記されています。

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