【観劇感想】メメントC「ともしびー恋について」@荻窪・東京オメガ

観劇日2022年8月13日 マチネ・ソワレ

MEMENTO-C

 チェーホフの短編ともしびは1888年にかかれた作品で、恋についてはその10年後の1898年に書かれた作品だ。その10年のあいだにチェーホフが作品の中で見せる絶望の色合いはより濃くなっているが、今回の上演では、恋についてが前に置かれ、ともしびが結末に配置されていることで、まるで10年後の人物たちが10年前の登場人物と交わり合うような形式になっている。

 メメントCのともしびは2011年に初演され、その時には六号病棟(六号室)という精神病院を舞台にした作品のリーディング公演と2本立てで上演されていた。今回はさらに作品同士の関係が密になり、一つの世界を形作っている。また、六号病棟の医師ラーギンが登場人物の一人として引用されており、恋についての展開に組み込まれていた。

 恋についてと組み合わされたことで最も大きく変わったのが、ともしびに登場する若い技師シテンベルクで、本来彼の世の中に対する厭世的な態度は、自分の専門的な仕事をもってしても一向に変わらない世界に対する後進性に起因するものなのだが、恋についての登場人物になったために、上手くいかない恋に起因するものとなっている。そのため、2011年のシテンベルクは大分落ち着いた青年だったのに対し、今回は俳優の違いもあれど、かなり熱量の高い青年(久井正樹)へと変貌を遂げていた。

 今回の作品では恋における後悔が一つのテーマになっているのだが、やりなおせなかった後悔の恋を担うのは医師ラーギン(山口雅義)に与えられており、やり直すことが出来た恋を担う技師アナニエフ(清田正浩)を以前よりも強く印象付けるようになっている。

 舞台装置にはターニングポイントをイメージさせるような斜めの大きな道が二つ置かれ、象徴的な役割を果たしていた。そしてエピソードの合間合間には、生演奏による歌や音楽が挿入され、物語に花を添えていた。

 演劇動画配信サービス「観劇三昧」: メメントC公演「ともしびー恋について」 (kan-geki.com)

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