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Lies of Pはソウルライク界の達人王、になってくれ。

 Lies of Pをプレイされましたか。
 されていない方はこちらをどうぞ。否定的な記事ですが私も同意見です。

 その昔、ゲームは難しければ難しい程良いという時代がありました。
 これは冗談でも比喩でもありません。例えば1986年の作品ロマンシアは、キャッチコピーに「かわいさあまって、難しさ100%」と難度が高いことを強烈にアピールしています。
 日本ファルコムがニッチ需要のために高難度ゲームをリリースしていたメーカーだった訳ではなく、他にも東亜プランからリリースされテンゲンによって移植されたMD版ヴイファイヴのパッケージ裏には難度アピールがなされ、ゲーム雑誌のレビュワーは難度が高いことを美点であると評価していました。

「無数の敵弾」「強いボス」こんな事言われたら泣いちゃう。
実際には達人王の反動、東亜の低難度化路線の鏑矢となった作品なのが皮肉です。

 もっと有名なもので言えば、1990年ファイアーエムブレムのオープニングには歌詞があり、「手強いシミュレーション」であると高らかに歌い上げています。これをCMで流すことができたのは、難しいことをアピールしても良いという時代背景があり、これを2000年代にいきなりやったら逆張り過ぎて顰蹙だったと思います。
 ……ええ、確かに2002年、封印の剣でまたこのCMソングは採用されました。だからこれは懐古でありつつ、随分な逆張りだったのです。

 難しいから面白い時代の最も大きな終わりは、きっと2000年、真・三國無双だったと思います。
 今でも一方的に圧倒し蹂躙する様を「無双」と呼ぶように、簡易な操作で大量の雑兵をなぎ倒すゲームプレイの爽快感は口コミで広がり、あっという間にゲームのキモは「達成感」から「爽快感」にすげ変わりました。PS2にはこの爽快感の言い換え、バッサリ感やらストレス解消やらを標榜したタイトルが沸き上がるように産まれ、そして元祖爽快感たる三国無双は続編で決定的な方針を打ち出します。それはアクション部分の複雑化を避け、プレイ時間をつぎ込んでレア武器と経験値を集める、年功序列式のハクスラスタイルでした。

パッケージ裏は雄弁に時代を語る、と思っています。
もっと「簡単操作」「ド派手なアクション」みたいなコピーいっぱい見た気がするけど、
少なくとも本家無双シリーズではなかったみたいです。

 しかし、それすらもまた春の夜の夢。2009年デモンズソウルがこれまた口コミで広まり、2011年に精神的続編ダークソウルが一大ムーヴメントとなった時、爽快感の時代は終わります。
 今はまだ、ソウルの時代、即ち難しいゲームを面白くなるまで頑張ることをよしとする時代なのでしょうか。それは皆様ご自身の肌感覚に委ねます。

 さて、私はLies of Pをプレイした結果、これはソウルの時代の終わりなのでは、いや終わりにするべきだと思いました。
 正直付き合ってらんないほど煩雑な致命手順を何度も繰り返し、全身にのしかかる疲労を達成感にすげ替え、オリジナリティに失敗した意地悪な仕様に苦しみながらクリアした時、もう難度競走はここでおしまいにせねばならない、と思いました。
 それはこのゲームを少しでも面白いと思ってしまったからであり、クリアしたことを自慢したいと思ってしまったからです。

 悪辣な出来栄えに反しSteamのレビューは87%好評です、これは過去に起こった難度競走と同じ自家中毒に陥っているのではと推測します。
 ゲームの高難度化は、クリアできてこそ真のゲーマーであり、真のゲーマーにしか面白さは理解できない、エアプの雑魚共とは違うのだという自意識を否が応でも想起させます。その選民思想的優越感が人々を高難度賛美へ走らせるのです。私もクリアして早速友人に「クリアしたから言うけど~」とマウント兼愚痴を吐きに行きました、即ち選ばれし民である優越感を得ました。
 そして我々の高難度賛美に呼応してメーカーも、次はもっと難度の高いゲームを送り出してくるのです。
 それが昔、1992年、達人王でした。
 そして今、2023年、Lies of Pが私の目の前にあります。

おい、そこのお前。Lies of Pをやるのだ!

 もし難度が限界を迎えたら、そのジャンルはどうなるでしょうか。
 後のケイブシューは高難度路線を強行し続けましたが、それでも達人王が残したべからず集、『硬すぎるザコ作るべからず』『画面下部から衝突死するザコ出すべからず』『取ってがっかりするアイテム作るべからず』等々は必ず守っていました。
 これはケイブに限らずポスト達人王時代のメーカーは皆守っていたように思えます、90年代後半のシューティングは全体的に遊べるものが多く存在します。

 そろそろソウルライクは、この方向性での難度競走を止めるべきです。
 今後このジャンルにはLies of Pによるべからず集が徹底されていることを祈ります。



 以下、苦しかった思いをどこかに吐き出したいので、ぱっと思いつく具体例もいくつか挙げておきます。もっと詳細な部分はもう忘れてしまった。
・ソウル系のもっさりモーションとSEKIROのいつでもキャンセル弾き前提パリィアクションを合わせるべからず
・パリィアクションならパリィアクションでボーク3回取られるようなディレイに次ぐディレイ攻撃ばっかり大量に作るべからず
・パリィの報酬をあんまりにも迂遠な位置に置くべからず
・というか「頑張って連続パリィしたのにスタッガーチャンス中一生逃げられて致命できなかった!」みたいながっかり要素を最初から想定して仕様に組み込むべからず
・せめて「致命ポジションが壁にめり込んで致命できなかった!」くらいは勘弁してください
・自キャラのリゲインがガード削り分のみで、生ヒットで全部消し飛ぶのに、これ見よがしに敵に生リゲイン付けるべからず
・起き上がり回避や連続回避等、防御系統の行動は制限するべからず
・ましてやエストと指輪と起き上がり回避を選ばせて、エストと指輪選んだのはキミだよね?起き攻めでハメ殺されても受け入れるってことだよね?みたいな後ろ向きすぎる選択をさせるべからず

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