中小企業の現場から:足元の経済がけっこうヤバイんじゃないか?という話

この数ヶ月ほど、多種多様な中小企業さんとお話をすることが多い。かなりの数をまわったと思う。その辺の肌感覚をちょっとみなさんにシェアしたい。

ここではザックリした話しかできないが…けっこう色々な企業さんの経営の内情を聞き出しているので…まあ、その辺はご容赦いただきたい。なんでもかんでもネットに書いちゃうワケにはいかないのだ。こちらにも守秘義務と信用がある。

2023秋~冬商戦の不振

まず、業種を問わずよく聞く話が、2023秋~冬商戦の不振である。「なんか思ったほど売れなかった」というやつだ。

だいたい、多くのtoC事業は、秋~冬、とくにクリスマスから年末年始にかけては、お客さんの財布の紐も緩むので、書き入れ時になるのが一般的だ。しかし2023年の秋~冬は、そこが不振だったというわけだね。

一体なぜだろうか?というのは、僕もよく分析できていないのだけど、とにかく2023秋~冬商戦は不振だった、という声をよく聞く。

とくに秋~冬商戦に売り上げのウエイトが大きい業種の場合、ここ数年続いたコロナ禍の自粛で、かなり厳しい経営状態に追い込まれていたところも多い。行政の支援策があったとはいえ、それはあくまで最低限の延命策に過ぎなかったわけだ。

そうして迎えた2023年、5類移行後初の秋~冬、「今年は売り上げが回復するぞ」と意気込んで、いろいろと経費を費やして施策を打ったものの、いや売上伸びてないぞど。

これが一つ二つの企業さんであれば、それこそマーケティングの失敗かなと思うのだけど。マーケター目線でいろいろな事例を軽く分析してみても、施策の失敗というよりも、外部要因(社会経済環境)の影響が大きいんじゃないかなあ…と思えるケースのほうが目立つ印象だ。

追記:
さてこんなことを書いていたら、ニュースが一つ目に留まった。

やっぱりねえ。そうだよねえ。現場は前から知ってたよ。
余談だけど、こういうことがあるから、政治家のみなさんに「現場の声を聞いてくれ」と常々言ってるのです。そのほうが情報早いんだもん。

2023年:業績拡大の見通しがないのに賃上げをせざるをえなかった

もう一つよく聞くのが、「業績拡大の見通しがつかないのに、賃上げをせざるをえなかった」という話だ。

去年の春、春闘をキッカケに賃上げのムーブメントが起きたのは、この記事の読者の皆様には良くご存知の方も多いだろう。そこからやや遅れて、中小企業にも「賃上げをしないといけない」という“空気”が漂ってきたのだ。

"空気”というあいまいな経営判断

ここで注意していただきたいのは、その理由が”空気”だということだ。去年の初夏ごろによく聞いたのは、「賃上げの“空気”ですよねえ」「賃上げの”流れ”ですよねえ」といった、中小企業経営者の、なんともやるせない感じの声である。

明確な理由や経営上のメリットを勘案しての判断ではなく、”空気”や“流れ”という、めちゃくちゃボヤっとした曖昧な何かで、賃上げに踏み切った。そういう中小企業が意外とあるのだ。

しかし、業績拡大の見通しもつかないまま賃上げだけすれば、そりゃあ経営が苦しくなるのは当然である。

そしてやっぱり物価高騰(仕入れ値・原材料費・為替etc)

そんでもって、やっぱりよく聞くのが物価高騰である。
仕入れ値が上がった。原材料費が上がった。ドル決済がキツい。まあそんな感じの話だ。これについては、企業も個人もみんなそうだろうから、あれこれ書かなくて良いだろう。

ただ一つ加えるなら、「5月からガソリン値下げ対策もなくなるらしいっスよ」という話をすると、みんな絶望的な顔をする。あの表情を直視できますか?と総理に問いたいところである。

もっともマズいこと:追加的な施策を打つ余力/気力が無くなりはじめている

これは企業経営の基本だが、「何もせずに業績が回復する」ということは、通常ありえない。業績が厳しい時こそ、何か追加的な施策を打つ必要がある。しかし、何をするにも原資が必要である。その原資を確保する余力がなくなってきている。

つまり、厳しい状況にあるのに、そこから脱出するための施策を打てない。
とにかく一円でもお金を掛けたくない、掛ける余力がない。
余力というか、“気力“である。

そういう状況が、足元にジワジワと広がってきているのを感じる。

もちろん、こうした厳しい中小企業を支援するために、行政も様々な補助金や助成制度を展開している。しかし問題は、そういった制度を利活用して『何をするか』と、『その結果として業績が回復できるか否か』である。

そもそも制度自体があまり知られていない…という問題もあるのだが、それ以上に、ここ2~3ヶ月はマインドの問題を感じている。

『何をやってもうまくいくと思えない』

物価高騰が主要因なのか何なのか、もうちょっと丁寧な分析は必要だと思うが、ともかく色々と話を聞いていると、事業環境が悪すぎて『何をやってもうまく行くと思えない』というのが、おおかた苦戦中の中小企業経営の素直な気持ちじゃなかろうかと思う。

なので、補助金や助成金があると知っても、「それを使って挑戦しよう」という踏ん切りがつかない。

こうなってしまう原因には複合的な要因があるし、僕自身の職責としても他人事じゃあないのだが。

解決策は簡単に出ない

じゃあどうすればいいのか?というと、そんなもんは、浅知恵でどうにかなるもんではないので、専門家の皆様に敬意を表しつつお任せしたいところではあるが。

ただ、現場からなんとなく思うのは、「中小企業をもっと支援しろ!」だけでは、どうにもならないんじゃないかなあ…と。なんとなくそんな気はしている。

日経平均株価は史上最高値を上回ったが、企業倒産件数の増加率も31年ぶりの高水準

まあいかんせん、Twitter(X)上の皆様は株価が上がったと仰っておられるが、しかしその裏で企業倒産件数の増加率もけっこうなもんであることには、あまり注目されておられないような気がしている。

2023年の全国の企業倒産(負債総額1,000万円以上)は、件数が8,690件(前年比35.1%増)、負債総額は2兆4,026億4,500万円(同3.0%増)だった。

(…中略…)

2024年4月にゼロゼロ融資の民間返済がピークを迎え、資金繰りが一段と厳しくなる企業が増えるとみられるだけに、2024年の企業倒産は「1万件」の壁を超える可能性も出てきた。

2023年の企業倒産 件数の増加率は31年ぶりの高水準、4年ぶりに8,000件台に
東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1198286_1610.html

そもそも株高の要因も、米ハイテク企業の成長にひっぱられたり、米国金融政策のあおりで投資が日本に逃げてきてたりで、結局のところアメリカの「経済的植民地」であることを痛感させられるような話だ。

7前日の米ハイテク株が上昇した流れを引き継ぎ、指数寄与度の大きい半導体関連株などに買いが先行している。その後、上げ幅は一時300円を超えた。

日経平均、反発で始まる 史上最高値を上回る
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL070JB0X00C24A3000000/

そもそも本来の経済成長とは、「モノやサービスが売れる(売れるモノやサービスを開発できる)」ことと、「企業の評価(株価)や、労働者の賃金が上がる」こととの、再帰的な相互作用の結果である。

日経平均株価は国の経済力と相関関係にはあるが、しかし因果関係ではないのだ。

おわりに:

結局なんとなく、まとまらない話になってしまったが、とりあえず今回は現場の肌感をなんとなく書いてみたよ、ということで。

以上です。