tacica TOUR 2023 "物云わぬ物怪" 感想 umeda TRAD
tacicaワンマンツアー物云わぬ物怪のセミファイナルの大阪公演。名古屋からの2days。ここ最近暖かい日が続いていたがようやく11月らしい寒さ。そして雨。
とはいえライブハウスの熱気はその寒さを吹き飛ばした。
感想①oi ocha
お決まりの遊戯のSEからの登場。相変わらず小西さんはオーバーオール。名古屋では黒のロンTだったが、今回はグッズのロンTを着ていた。中畑さんも今回は長袖のつなぎだった。
デッドエンドは猪狩さんに明るい色のピンスポが当たり、そしてまた最後もピンスポが当たって終わった。独りで行き詰まってしまった、まさにデッドエンドな雰囲気。
そこから間を空けずに小西さんのベースが始まる冒険衝動。今までの公演の中で一番ここの間が空いていなかった気がした。
今回のツアーで猪狩さんはMCでずっとCDについてや音楽業界について語られていた印象だった。でも悲観することなく、憂う事なく、前向きに語っていたことが頭をよぎった。
猪「楽屋にお〜いお茶が置いてあってさ。ローマ字が書いてあるんだけど、oi ochaってなってるんだよね。これだとおいお茶だよね。oの上に屋根みたいなのつかないんだね。俺は教わった気がするけど、あれって今もう教わらないのかな?」
小「多分もう、分かるだろって感じじゃない?」
猪「伊藤園側が、ってこと?」
https://www.senshu-u.ac.jp/School/nichigo/Letters/student/column_202009.html
こちらのコラムに詳細が載っていた。猪狩さんの言うように昔は^をつけることがあったが最近ではワープロの技術等の影響もあり、減ってきているとのこと。
感想②CDと配信
金糸雀、夜明け前と2曲続け様に演奏。
金糸雀で小西さんが途中ベースを抱え上げていて、まさしく"高い高い"だった。
夜明け前の"裸の僕へ息をしたんだ"の"だ"の部分の歌い方というか息を吐くような歌い終え方が魅力的に映った。その後の歌い出しは顔を振ってラスサビを駆け抜けて行く姿が目に焼きつく。
猪「また性懲りも無くCDを作りました。今回配信がファイナル後なのは僕がスケジュールをミスったからです。別に尖っているわけじゃないです。僕がそうだからかもしれないですけど、CD好きな人って、配信で出ようがCD買いますよね?」
「人のことを考えようって教育されてきたけど、分からなくて。なので自分がいいなって思うようなことをしてます。買いたいなって思う方は買っていってください」
アルバム1曲目の曲を、との紹介からディスコード。初っ端から大きな音を出してくる。1曲目のスタートダッシュに相応しい気がする。
ナニユエ、JADITEと続けて演奏。
JADITEのcメロ、特にドラム部分がライブ感の漂うアレンジになっていた気がした。
感想③小西悠太という人
猪「今、3人とも共通で、目配せで分かったと思うんですけど、寒いからエアコンいらないですって言ったのを後悔してます……」
中「小西くんが一番影響あるよね」
小「いや、大丈夫です」
中「どうする?つけてもらう?」
小「あ、えっと……」
猪「小西がグッズ紹介します」
グッズのパネルと実物を小西さんが受け取ったタイミングでエアコンが稼働。
小「クールダウンのつもりでグッズ紹介やります」
「半袖シャツはYUGEのジャケットが印刷されてます。可愛いですよね?可愛いですよね?」
半ば誘導尋問で観客から可愛いとの声が上がる。
「長袖も今回あるので。今自分が着てるんですけど、腕の部分にもプリントされているんですよ。半袖シャツと合わせて着てもいいかもしれないです。ついでにサコッシュを紹介します」
サコッシュは実物を持ってきていた。紐が調整できたり、紐を変えることができる点を紹介。
「表面はリップストップという技法らしいです」
中「らしい?」
小「リップストップです」と断言。
「あとこれって強度に強いらしくって」
中「らしい?」
小「強いです!結構タフなので、激しい現場に持っていってもいい代物です」
ミニタオルは実用性のあるちょうどいいサイズとの紹介。(ちょうどいいって言葉を多用しがち)
「さっき猪狩からも紹介があったシーでー……」
CDが言えずに噛んでしまう。
「CDもあるのでお時間ある方は是非、終わりに見ていってください」と言い直して紹介終了。
ここから猪狩さんによるツッコミ。
猪「酔ってんの?」
小「シラフ、シラフ」
猪「まだ日本に入ってきてない海外の酒でも飲んでるんじゃない?」
小「いや、そんなことは……」
猪「あと、強度に強いって何?」
小「え、言わない?」
猪「強度が襲ってくるの?それとも郷土料理の"郷土"?」
小「いや違う違う。強さの方」
猪「強度に優れているとかじゃない?」
小「いや、でも……」
二人で話す中、中畑さんが手持ち無沙汰そうにエアードラムで素振りしていた。それに気づいた猪狩さんが「中畑さん飽きちゃってる…… ドラム中畑大樹」と紹介。
中「よろしくお願いします」
猪「すいません。中畑さん」
中「小西くんってさ、拍手貰うと必ずありがとうございますって言うよね」
観客から拍手が。
小「ありがとうございます」中畑さんは大笑い。
猪「甘んじて受け入れてるよね」
小「ありがとうございます」
猪「他人に優しく、自分にも優しく」
中「鑑じゃん!人の!」
小「ありがとうございます!」
暖かい拍手が溢れていた。
感想④日常こそ宝物
幽霊のいない街からリスタート。
猪狩さんから放たれる言葉はどうしてこんなに美しいと思えるのだろうか。日常を切り取ったような歌詞が胸の奥に突き刺さる。
余韻そこそこにordinary dayへ。
tacicaのライブはもちろん、弾き語りでも定番の曲となっているこの曲。
日常、なんてことない日、ありふれた日。そんなタイトルの曲をtacicaが奏でると、まるで特別な装いに変わり、荘厳的な雰囲気を醸し出す。
猪「昨日の夜、名古屋から大阪に来た。3人でラーメン食べに行こう、ってなって、前に行ったことのあるラーメン店に行ったら混んでてやめた。それでもう一ヶ所行ったことのある店に行ったら、別のラーメン店になってた。そこで食べたんだけど、あんまり美味しくなかった」
小「人並んでたんだけどね」
猪「だから多分俺らの舌がおかしい……」
以前ソコハカツアーで美味しくないラーメンなんてなくない?と話していたのを思い出す。
MC後には猪狩さんがカウントを取ってから始まる諦める喉の隙間に新しい僕の声が吹く。
aranami、アロン、と暴れん坊の曲が続く。aranamiのドラムの激しさはここ最近の中でピカイチだった。まさしく荒波の如し。
アロンは小西さんを凝視してしまう。演奏はもちろん、コーラスでも声を張っていた。
盛り上がりを見せた会場に人鳥哀歌のイントロのギター音が鳴ると、歓声が起こる。しかし、その後演奏が続けられず、ごめん、と猪狩さんが謝って仕切り直して演奏。珍しく焦っている感じの猪狩さんだった。
猪「ネガティブな情報が目だったり、耳だったり、頭の中に入ってくるけど、そういうの忘れるように、また新しい曲を作ってまたライブをやっているんだろうなと思います」
最後に荒野を行くを演奏。
"踊り疲れても"が"踊り疲れたよ"と歌われていた。CD音源にはないアウトロ追加で締められた。
感想⑤200万のギター
猪「アンコールありがとう。……もう話すことは特にないんですよね」
「梅田、暖かいですね。気温的なことじゃなくて。割とよく来るんだけど色々装いが変わってるね」
「大阪って楽器屋が盛んで、島村とか三木とか。三木楽器が東京の御茶ノ水にスモールズっていう店を出してて。狭いんだけど厳正されたギターだけ置いてある店で、ずっと探してたニールヤングのギターが置いてあった。あれ、いくらだったっけ?」
小「200万くらい」
猪「だから、もしそれを今後持っていたら、あの……」
中「CD売れたんだなって思うよ」
小「もしくは色々諦めてるかもね」
猪「ギターの本数減ってたりね。パンツ一枚で弾いてるかもしれない」
「ギタラバっていうイベントが先週仙台で、今週大阪なんですよ。僕らと同じで」
猪「前回のsingularityの時からなんだけど、手売りをしたいと思っていて、終わりに物販に立ってます」
すると、観客から先に買っちゃった、との声が。
猪「それは……ありがとうございます。別にもう一枚買う必要はないので。大丈夫ですか?返品とか……。みんな買ってくれるの信じてます」
「嘘です。買いたいと思う人が買ってくれれば」
買ってくださいとは言わない。昨日の名古屋でも同じようなことを語っていたが、買うに値する満足なCDだと思う。
アンコールはぼくら、アースコードの2曲。
昨日のDANの特別感が際立つ。退場しようとすると、アースコード終わりにステージを去った猪狩さんがちょうど物販の所へ駆け寄っていくのが見えた。
終演後に会場外で中畑さんが知り合いのスタッフの方と話していた。話し終えて、また会場へ戻っていく際にすれ違ったファンの方に向けて笑顔で手を振っていた。
セットリスト
遊戯
デッドエンド
冒険衝動
金糸雀
夜明け前
ディスコード
ナニユエ
JADITE
幽霊のいない街
ordinary day
諦める喉の隙間に新しい僕の声が吹く
aranami
アロン
人鳥哀歌
荒野を行く
en.ぼくら
en.アースコード
おわりに
この公演は今までの4日間以上に猪狩さんの声がはっきりと出ていた気がした。tacicaの楽曲の魅力のひとつに言葉の美しさと力強さがあると思う。それがまさに直接、身体全体に伝わってきた。
また、今回は開演前と終了後に鹿の仔と会う機会があった。不思議なくらいに盛り上がり、数時間にわたって語り合って語り合っても語り足りない1日だった。
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