職能資格制度と官位相当制
古代の日本は国の制度を整えるにあたって中国から多くのものを取り入れましたが、人事制度もその一つでした。
役人の地位を位階(ランク)と官職(役割)で表すというシステムで、たとえば
正二位・内大臣
従五位下・治部少輔
といった具合で、ランクと役割が一目瞭然という便利なものでした。
(前半が位階で、後半が官職)
しかしこの人事制度、運用面では日中で大きな違いがありました。
中国は官職に位階が付く
本場中国では、官職に対して位階が設定されるという運用になっていました。
たとえば省庁のトップである官職「尚書令」の位階は「正二品」と定められていました。上から2番目の位なので、かなりえらい。
尚書令になった人は尚書令だから正二品扱いされて、えらい。
しかし尚書令を辞めたら、ただの人に戻るのです。
日本では人に位階が付く
一方、日本ではまず人に対して位階が設定され、その位階に応じた官職が与えられるというシステムでした。
「よし、石田三成を従五位下にランクアップしてやろう。従五位下となると、役職は何を割り当ててやろうかな。ん、治部少輔がちょうどいいな。よし、今日から石田三成は従五位下・治部少輔だ」
みたいな感じ。
これを「官位相当制」と呼びます。
位階は人に付くものなので、官職を失っても位階は残ります。
たとえば平清盛は「従一位・太政大臣」に任ぜられ、後に太政大臣の官職を辞していますが、従一位の位階は保持したままでした。
逆に、官職は据え置きのまま位階だけ上がるといったケースもありました。
何かに似ているなあと思ったら
職能等級制度なんですよね、官位相当制って。
職能等級制度は「従業員の職務遂行能力を査定し、その能力に応じた役割を割り当てる。給料は職務遂行能力をベースに設定する」というもの。
多くの日本企業では、この職能等級制度に基づいた人事制度が構築されています。
一方、中国の人事制度は職務等級制度。
すなわち「役割に対して職務内容と給与を設定し、人をそれに割り当てる」というもので、かつての中国の人事制度そのもの。
現在でもアメリカや欧州ではこちらが主流です。
日本人は昔から職能等級制度が好きだったんだなあ
人の能力を基準にするか、担っている役割を基準にするか。
どちらも一長一短で、一概にどちらが良いと言えるものではありません。
しかし、かつては官位相当制として、現在は職能等級制度として、昔から日本人は人を基準にした制度が好きというか、気質に合っているみたいです。
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