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素人の飲食店考

今朝サンドイッチをつくった。ハムとレタスとチーズをトーストした角食ではさむごく普通の。とてもおいしかった。
これ、わたしは具材を組み合わせてはさんだだけで、自分でつくったものは一つもない。具材もパンもだれかの手によってつくられたものなので、おいしかったのであれば、それはそのだれかたちのおかげである。

以前、割烹と居酒屋の中間みたいな店のカウンターで飲んでいた。カウンターの向こうは火を使わない調理場みたいになっていて、そこで板前風に見せかけたたぶんバイトの女の子が、ペットボトルに入ったドレッシングを別の容器に移し替えていた。
たしかメニューには「手づくりドレッシング」と書いてあったなと思いつつ、べつにそれを咎めようという気持ちもなく、やや酔ってぼーっとした心持ちでその動作を眺めていたら、先輩らしき板前(風)のひとが小声で「(カウンターの)下でやって」とその女の子に指示した。
そんなこそこそするくらいなら、わざわざ「手づくり」なんて書かなくてもいいのにと思う。余程の店でない限り、すべてを店内で一からつくってるなんてこっちも思っていない。

チェーン店で出される食事はほとんどすべてが工場でつくられて、店舗では仕上げをするだけだからバイトでもすぐ作れるようになると聞く。
そういうチンするだけのものがいろんなメーカーから出されているし(前にカフェで働いていたときそういうののカタログをコーヒー豆の業者さんからもらったことがあってなかなか面白く読んだ)、小規模店でも導入している店はけっこう多いと思う。
だから仕上げで失敗しなければ、品質のばらつきはないはずなんだけど、友人がどこかのファミレスで半分凍ったパスタが出てきたと言っていたので、人間がやる限り完璧なことはないっぽい。

最近はコンビニでも飲食店に負けないおいしさのものがたくさん売られている。昔はスーパーのお惣菜はおいしくなかったけど、この頃は結構おいしくなっていて、デパ地下のお高いものと遜色ないものもある。
安い居酒屋チェーンでの飲むときは、つまみは期待しない、ここは酒を飲むところと割り切っていたけど、いつの間にか食べ物がかなりおいしくなっていた。
だからコンビニの食べ物がおいしくなっても不思議じゃない。多くの飲食店が工場でつくられたものを提供し、わたしたちはそれを普通においしいと思ったり「外の味」と思ったりして食べているんだから、それと同じものをコンビニ用にすればいいだけなんだよね、たぶん。
こうなると、感染症のことを抜きにしても、純粋においしい食事を楽しむために外食する意味がなくなっちゃうのかも。コミュニケーションのためとかエンターテイメントとしての外食って感じになるなのかな。

ところで家の近所にあったカフェがコロナ禍前に廃業した。清潔だし居心地も悪くなかったんだけど今ひとつ繁盛せず、店長もなかなか厳しいということをもらしていた。
その店が撤退したあとにやはりカフェが入ったんだけど、そこは大繁盛している。一度行ったことがある。味、サービスともに可もなく不可もなくという感じではあるけど、インスタ映えするデザートがあって、みんなそれ目当てで来るらしい。インスタ映えするメニューがある店は、今のところは生き残れるという印象がある。
店側ももちろんその効果を狙っているからか、こっちはインスタ狙いで行ったわけではないのに、お店のひとが気を利かして「写真撮りますか」とか言って待っててくれるのも、え、そんなのいいのにと思う。

わたしはお酒も飲まなくなったし、胃腸も弱くなってしまったし、インスタにも興味ないんで、金曜日の夜におひとりさまが座り心地のいい椅子でボリューミーでない食事ができて、その後お茶を飲みながらずっと本を読んでていいお店があったら、それで採算が取れる程度にお値段が高くても行くんで、そういう店だれかつくって。

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