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雨にも負けず。いや負けてもいいし

駅から自宅までの道中、雨は頭にくるくらいざんざん降りだった。
おまけに風も強く、背中の方角から吹いてくるもんだから、リュックサックとふくらはぎのあたりがびっちゃびちゃで気持ちが悪い。
おまけに靴下もぬれ始めた。朝は小雨だったから、無印良品の撥水スニーカーとやらを履いてきたのは、やっぱり間違いだった。
あと5、6分で家だから、もうちょっとの辛抱なりよ、と自分に言い聞かせながら、意味もなく前のめりで歩いた。

家に帰る途中に大きめの公園がある。
そこに近づくにつれ、雨の音とともにセミのものらしき鳴き声が聞こえてくる。

公園にはたくさんの木があるから、昼間はもちろん、気温が下がらない東京の夜も、セミの大合唱は一日中止むことはない。
民族によってはセミの鳴き声は騒音としか思えないらしいけど、そんなひとがこの公園の近くに住んでいたら気が狂っちゃうかもしれない。

それにしてもセミさんたちってすごい。大粒の雨が地面を叩きつける音に負けじと、じーじーとかみんみんとか鳴いている。
雨の日くらい休むのかと思っていたけど、雨が降ろうが槍が降ろうが彼らに休みはないらしい。モーレツ社員。
……ではない。雨だからといってサボっていたら、鳴かぬままに一生を終えてしまう短い一生なのだから、雨にも負けず鳴くのである。
などと、人間は勝手にセンチメンタルに考える。

などとどうでもいいことを書いていたら、雨が小止みになった。
すると、さっきまで静かだった近所のセミが、これ幸いとでかい声で鳴き始めた。
公園のセミと違って、こっちのセミたちは雨の間サボってた、いや休んでたのね。

やりたきゃやる。やりたくなきゃやらない。
そこのところは、セミもネコも一緒なのかしらん。
さて、人間は……?

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