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ホームベーカリーと負けず嫌い

買ったはいいけど買ってしばらくすると物入れの奥に追いやられてしまうキッチン家電の一つがホームベーカリーらしい。ピンキリとはいえ、それなりのお値段はするのになんともったいない。

わたしもホームベーカリーを持っている。自分で大枚はたいて買ったわけではなく、母がネットで注文して入荷待ちしてる間に急死してしまったので、使われることのなかった遺産をもらったのだ(姉はすでに持っているらしかったので遺産争いもなく)。
こんなことでもなければホームベーカリーを使うことなんて一生なかったと思う。パンは大好きだけど、おいしいお店がいっぱいあるのになんで自作する必要があるの? それに作る時間もないしと思っていた。

さて、母が入荷を待っている間に材料はすでに届いていたらしく、そちらもありがたくセットで持って帰らせてもらってさっそく焼いたところ、思わず「うまっ」と声が出てしまった。
何十年か前にホームベーカリーが世に出回り始めた頃、知り合いがそれで焼いたパンを食べさせてもらったことがあったのだけど、申し訳ないがさほどおいしくなかったと記憶している。ということがあったのであまり期待していなかったのだけど、今回は想像よりかなりおいしかった。技術の進歩のおかげなのか。
あとはその知り合いは確かホームベーカリー用にブレンドされた粉を使っていたように思うけど、母が買い置いていたちゃんとした粉(スーパーキングだった)で焼いたからというのもあると思う。

でもだんだん焼いていくうちに最初の感動は薄れ、もっと楽においしくできないかということを探求し始めるようになった。
まずはイーストから天然酵母に変えた。天音酵母は確かにおいしいのだけど、焼く前に24時間かけて酵母を作らなければいけないので、思いつきで焼くことができない。
また、焼成はオーブンでやることを試した。油脂を使わないパンだと型からなかなか外れず、頭の血管が切れそうになるほど格闘してようやくというか不意にすぽんと抜ける。そうして苦労して外しても、生地をこねる羽根を付けたまま焼くのでどうしてもその部分に穴があいてしまう。ちょうど真ん中へんのいいところを使ってサンドイッチが作れない。それなら途中まではホームベーカリーに任せ、オーブンで焼くか、ということにしたのだ。
母がパン教室に通っていたこともあり、ちょっと手伝ったり教えてもらったりしていたから、生地の丸め方くらいは覚えていた。よかった。

まずは食パン型を買う。なんか種類がありすぎてめまいがしたけど、型から抜くのが大変! という事態は避けたかったし、いちいち油を塗るというのも面倒くさいので、少々高いけれど「スルトン」という真面目なんだか不真面目なんだかわからない名前の型をまずは買った。
少ししてから、パン屋さんで売ってるような角食も作りたくなったので、行ったことなかったので観光も兼ねて合羽橋まで出かけて型を買った。
焼成をオーブンにするだけでもだいぶおいしくなるが、少ししてからイーストをごく少量に抑えて焼くパンのをたまたまネットで見つけたので、それも買ってみることにした。
最終的に、少ないイーストでホームベーカリーの天然酵母生地コースで一次発酵までやってもらい、そのあとベンチタイム、二次発酵、オーブンで焼成という方法に落ち着いた。

今は下火になりつつあるけど、高級食パンも焼けるんでは? と思って、興味本位でメーカーが公開している高級食パンの配合を参考にしつつイースト少なめで角食型で作ってみたら、本物の高級食パンよりおいしいんじゃないかってのができた。
いや、食べてもいないのに自分のパンをうまいうまいと言っているのもアレなんで、味を比べるためにちゃんと買いましたよ高級食パン。ちゃんと負けてないということで安心した。感じ悪くてすいません。でも、高級食パンは食べ続けると飽きるね……。

お蔵入りにならない最大の原因はおいしくできること。
そのためには季節によって出来不出来が大きく左右されない安定した機種がいいと思う。夏はうまくできないものもあるらしいので。
粉はいいものを使う。富澤商店に売っている粉なら間違いないと思う。スーパーで売っている粉だとおいしくできなかった。
イーストは少量にする。ホームベーカリーに付属のレシピ集や一般的なパンレシピ本に載っているイーストの量は多すぎる。それでも普通においしいけど、少ないイーストで焼けばさらにおいしい。だから少ないイーストでも作れるように、ホームベーカリーに天然酵母のコースがあるのは便利。
面倒でなければ、一次発酵より先は手作業にしてオーブンで焼くとよりおいしい。

あと、これはわたしの場合だけだと思うけど、買った(買ってないけど)以上はちゃんと使わないともったいないし、それに加えて自分の失敗を認めることになるから一生懸命に使おうとする。
なにか物を手放そうと思ってもなかなか手放せないのは、「いつか使うかも」「もったいない」という理由のほかに、自分の選択が間違っていたということをなかなか認められないから。ぜんぜん使ってないのにね。
このホームベーカリーの場合は、もらってきたもののぜんぜん使ってないじゃんとディスり屋の姉に言われるのが悔しいというのもあった。

ケチと負けず嫌いが、物をお蔵入りさせないことに一役買っていると思う。これってなんか断捨離的なものにも通じるような……。

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