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禁煙失敗後の1本目の味。

窪塚洋介について考えることが多くなって、煙草の味を思い出してしまった。顔は全然似てもいないしレゲエもそんなに聴かないわりに、人生の節目にはいつも窪塚洋介に憧れたり、窪塚洋介を思い出したりしている。これは発作なのか。

するとアメリカンスピリットの黄色いパッケージが頭に浮かぶ。窪塚洋介がアメスピを吸うかは知らないけれど、アメリカンというよりはスピリットの部分がそれっぽくて連想してしまうのかもしれない。

嗜好品として楽しむには、コンビニで手に入るモノの中ではアメリカンスピリットは上質の部類に入るような気がして。でも、黄色は昔吸っていたので、違うものにしようと決意する。

コンビニには僕がアメスピを吸っていた頃より多くの種類が並んでいて、店員のお姉さんに「アメスピのメンソールが吸いたいのですが、緑色のやつ多過ぎません?」と迷惑な問いを投げかける。

田舎だし暇だからか、微笑みながら緑色の全種類をレジカウンターに並べてくれた。ゆっくりと選ぶことで嗜好品という感覚が増す。惰性で吸いまくっていた頃は「アイコスミント」とか「28番」とか一瞬で購入していたのに、しっかりと選んで店員と会話までしている。

新たな自分という意味と夏の暑さも相まって爽やかな緑のパッケージを選ぶ。想像の中では、最高に美味しい煙が燻り、天高く昇っていく画が浮かんでいた。

次に煙草を吸うための環境を整える。

スターバックスに入りアイスコーヒーを頼む。バレンシアシロップを追加して、オレンジの酸味とほのかな甘さ、そして煙草の煙のマリアージュを楽しむことにした。(コーヒーにシロップを入れるという試みも、マリアージュという言葉の使用も初めてだ)

灰皿を受け取りテラス席へ出る。煙草のパッケージを慎重に開けて、一本だけ引き抜く。

火をつける前にゆっくりと香りを吸い込むと、当たり前だが煙草の葉の香りがした。そして微かにミントの爽やかさを感じる。

オーガニックだ。何やわからんが、健康そうな気さえしてくる。

コーヒーを一口、吸う。バレンシアが口にぱっと広がっていく。なんて爽やかなんだ!

はやる気持ちを抑えて、トントンと煙草のフィルターをテーブルに当てて、葉をぎゅっと詰める。そして誰かに見られているかのように慎重に煙草を咥えて、目を細めて火をつける。

(…目を細めるタイミングって、ここだっけ)と一瞬考えるが、躊躇せず煙を思い切り吸い込む。

全然煙がこない。

そうだ。アメスピはそうだった。なかなか火がつかない。格好悪いがもう一度火をつけ直して、思い切り吸う。

手に汗がじんわり滲んで、頭がくらくらする。ヤバい成分が身体中に回って自律神経を蝕んでいくような感覚に襲われる。

背徳感か?罪悪感か?それも含めて最高のはずだったのに。

駄目だ、気持ちがBADに振れる。今、僕は最高の瞬間を味わう予定だったのだ。何度も気を取り直そうとしても、そんなに美味くないという事実が押し寄せてくる。

確認するように吸い込むけれど、決して想像を超えてはこない。テーブルの上を蝿が歩く。おい、蝿。せめて飛べよ!と苛つく。すると蝿は飛んだ、が、僕のTシャツに止まる。払うと今度はジーンズに止まる。

一本を吸うためにこんなに準備をしたのに、結果はあんまりだった。僕はまた禁煙できるような気がする。

きっとまた吸うけれど、その時にはまた最高の瞬間を想像できるようなメンタルの時にしようと思う。


何が言いたかったかはよく分からないけれど、全部含めて


なんか良かった


という気持ちで満たされている。









書いた言葉がお金になるなんて、夢物語だと思っています。僕に夢を見せてください。もっと勘違いさせて、狂わせてください。