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内田鋼一 陶展@桃居

「内田急須展」とも呼べるほど急須やポットが充実の内田鋼一さんの個展に行ってきました。つい先日、森岡書店銀座店で赤木明登さんと対談をされたばかりの内田さん、とんぼ返りでの東京個展です。一昨年の桃居での展示でも急須類は少しありました。ただ、それも瞬く間に売り切れてしまったので、内田さんの作品が気になる茶器好きの人は必見の展示です。

2013年は灰釉の急須がありましたが今年はその手がなく、白泥・加彩・プラチナ・無釉、そして新作の黒錫(くろすず)の急須・土瓶・ポットが揃っていました。その他に湯呑や隅切盆、大壺などもあるものの大半は急須類です。

内田さんは「巧い」「作りたい形を形にできるのがすごい」と評される轆轤成形の名手。その人が新作の黒錫のポット・急須では、手びねりの作り方を採っています。

その指作業の跡が表面の凹凸として残っています。これはやはり意図があってのことで、黒錫釉の色にはこの表面の感じが合うと選ばれたそうです。

ということは、黒錫釉をかけたものを作りたいという動機が先にあったのでしょう。なぜ黒錫だったのか。それは古い道具からインスパイアされたことが展示風景から分かりました。

その代表が、この黒錫のプレートと缶筒とポットの組み合わせ。プレートと筒は内田さんの私物の古い物とのことですが、それと並んで置かれたポットがまったく違和感なく馴染んでいます。完結した世界観がこの空間にはあります。

既にある物に合う物。こういう狙ったところを狙ったとおりに現実の物にしてしまうのが内田さんの技量のすごいところです。

そして、その感心してしまうような作品を無限にある可能性の中から選んで作ろうと狙うセンスも内田さんが評価される理由だと感じました。

ちなみにこのポットは今回の作品の一番大きいポットでした。横にある急須と比べると分かりやすいですが、大きさからくる存在感と丸みのある形のバランスにも内田さんのセンスを感じます。

一点一点に異なる意匠が施された作品はとても全部載せることができません。人気の作家さんなので、作品が少なくなる前になるべく早く行かれることをおすすめします。

内田鋼一陶展は西麻布の桃居で6月16日まで。桃居の次回の展示は19日からの長谷川奈津さんの個展です。

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