葉ざくらの中の無数の空さわぐ 篠原梵

桜蘂が残る枝に、待ちきれない勢いで若々しい葉が顔をのぞかせる。赤みを帯びた桜蘂と若々しい葉桜の饗宴。艶やかな桜蘂は残り、日に日に成長する葉の陰に隠れて目立たなくなっていく。それもつかの間、一刻も早くこの世に出現したいという勢いに噴出する爆発的な葉のエネルギーに、すき間だらけの空間が瞬く間に埋め尽くされていく。風にゆれ、数えきれない葉のざわめきが聞こえる。葉の隙間からこぼれる空が騒がしい。

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