献身やあやめをざつと見渡して 飯島晴子

花の根元の網目模様が特徴的なあやめは、水辺ではなく山野に花を咲かせ、地下茎により繁殖し、ひと塊となって壮観な眺めとなる。高貴な紫が人目をさらい、よく見ると猛獣の虎の肌に似ていて引き込まれる。直立する葉や花の姿が毅然としていて、迷いを吹き飛ばしてくれそうな爽やかさが魅力である。自らの利益を考えず、自分の身を捧げようと気持ちを新たにする。思いに沈むこともあろう。それを払拭してくれるあやめである。

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