四月尽ふり向かざるに樹が匂ふ    神尾久美子

雨がよく降る。日射しも強くなり、草木の成長ぶりがおびただしい。四月に噴き出した芽が立派に葉を広げ、幾何級数的に葉の数を増やし、日ごと膨張する。植物の生育ぶりを身近に観察したいので、気に入った草木が植えられている。庭を散歩して、その育ち具合を愛でる。手の届く範囲で管理したいのに、その境界を越えてくるので、敏感にならざるを得ない。知覚が反応しているときに、嗅覚が刺激された。刺激の強い四月がもう終わる。

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