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「住」のTransformation

ガソリン自動車が初めて作られたのは日本でいうと明治維新くらいの時代なんだそうで。つまり自動車産業はざっと150年の歴史があるわけですね。

車といえば馬や人が引いて動かすもの、という時代に、人々はガソリン車をどんな目で見たのでしょうか。先進的な感覚を持つ人は、「車を馬が引くなんていう時代は終わる、これからは自動車だ」と早々に乗り換えていったでしょうし、懐疑的な見方の人は「機械が動かす車なんて得体が知れない」と敬遠したのかもしれません。

想定外の感染症に後押しされる形ではありますが、現代ではテレワークやDX(Digital Transformation)が急速に進められようとしています。業種的にテレワークなんて無理だよとか、対面であることに意味がある、という仕事も当然にしてあるわけで、様々な議論が行われています。

単純になんでもリモートでやればいいとか、デジタル化すればいいというものでもないでしょうけれど、たとえば自動車の誕生に置き換えて連想してみると、

・馬が引く車は時代遅れ、これからは自動車だ

というのは、「1箇所に全員出社して仕事するのは非効率だ」くらいの、割とざっくりした話だと思うのですね。

実際に自動車産業がその後どうなったか、はわざわざ書くほどでもないことですが、たとえば

・燃料の供給拠点が各地に必要になるよね

とか

・誰でも勝手に乗り回したら危ないから、免許制度が必要なんじゃないか

とか

・自動車を作る工場の周りに、関連部品を作る会社が立地するような街ができる

とか

・事故が起こったときのために、専用の保険があるべき

とか、どこかのタイミングでそういうことを発想した人がいたはずなのですね。世界初のガソリンスタンドと言われているのはドイツで世界初のガソリン車が作られてから3年ほど後に、薬局が販売したものだそうです。日本での運転免許制度のスタートは1903年、明治時代ですね。日本初の自動車保険は1914年、第一次世界大戦の頃です。これらをガソリン自動車誕生のタイミングで全て想定しておく、というのは到底無理な気がします。

これは単にひとつの産業の歴史というよりも、関連産業が広がっていく中で人々の暮らしや価値観が変化し、それまでに無かった仕事が生まれたり、ライフスタイルが多様化していったりしている流れでもあります。

リモートワークやデジタル化といったものは急速に広まっていきそうな感覚がありますが、同じように一面的な変化であるはずがありません。

とりあえずリモートでもある程度のことは可能だよね、というのは昨年から我々が体験したことですが、自動車産業に例えてみると、まだ「ガソリンで走る車が作れました」くらいの段階のはず。その先に、自動車で言うところのガソリンスタンドや免許制度や自動車保険や旅行産業に物流、あるいは工場立地を前提にしたまちづくりやモーターライゼーションによる空洞化、さらにEVや自動運転の時代などなどなど…を、どのタイミングでどのように想定できるか。これからやってくる波を乗りこなすには、あらゆる方向にアンテナを張っておいたほうがよさそうです。

さて、このnoteはMBCラジオ「RadioBurn+」のマガジン用に書いているものです。この番組では「移住」というテーマをたびたび扱ってきました。ここにきて、移住の定義ってなんだろうなあ、という気がしてきています。

移住、ということば自体が、「住む」とは原則どこか1拠点に軸足を置くこと、というニュアンスがありませんかね。その拠点を移すから移住、みたいな。その拠点から会社に出向いていくから「出社」なのであって、働き方が変わりDXが進んだ社会では、そもそも移住という単語自体が過去のものになっているのかもしれません。DXとともに「住」のTrasformationはどうなっていくのでしょうか。

というような話をできるスキマがありそうな気がしませんが、きょうは移住の話。よかったら土曜18時から生放送、MBCラジオ「Radio Burn+」、RadikoやYouTubeライブでもどうぞ。




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