聞いてみた#10: 帖佐人形

鹿児島には桃の節句や端午の節句に贈られる「土人形」の文化があることをご存知でしょうか。

姶良市には「帖佐人形」という伝統工芸品があり、大正年間の最盛期には40もの窯があったそうです。戦時中にいったん人形作りは途絶えていましたが、その後昭和40年頃に帖佐人形保存会が立ち上がり再度作られるようになりました。

(写真は姶良市ホームページより)

現在、この帖佐人形を作ることができるのはたったお一人。折田貴子さんにお電話でお話をうかがいました。

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ーー 帖佐人形の歴史について教えてください。

もともとは400年以上前、島津義弘公が朝鮮出兵の折に連れ帰った陶工がこの地の郷士たちに伝えたもの、と言われています。かつては人形の行商などにも行っていたそうです。

ーー 折田さんの家は代々、帖佐人形を作られていたのですか?

戦時中にいったん途絶えていた人形作りを復活させようと、祖父(※ 折田太刀男さん)らが床下にあった型などを集めたりして、ふたたび作るようになりました。私は幼い頃から祖父の人形作りを見て、遊びながら教わったようなものです。

ーー 帖佐人形は節句のお祝いとして贈られるそうですね。

節句のほかにも、新築祝いで武者の人形を贈ると厄除けになるといって贈られたりします。結婚や転勤などの節目に贈られる方もいらっしゃいます。

ーー 現在お一人で制作されているということですが、後継者はいらっしゃいますか?

なかなかそこまで気がまわらないところもありますが・・・。
時々、小学校や病院などで講座として人形作りを体験して頂く場を設けたりしています。

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土をうすで突き、粘土を作るところから型入れ、乾燥、焼き、絵付けまでもちろん全て手作業。2ヶ月以上もの行程がかかります。それだけ手間をかけ想いを込めて作られた人形だからこそ、贈り物として重宝されたのかもしれません。

(写真は姶良市ホームページより)

鹿児島には帖佐人形のほかにも、宮之城人形や垂水人形など多くの土人形文化があります。

実は自分の出身地である旧薩摩郡東郷町でも「東郷土人形」と呼ばれる人形が作られていました。毎年この時期、東郷では「人形市」と呼ばれる市が立ち、それは賑わったそうです。帖佐人形と同じく、祝い事の贈り物として使われていましたが、現在では製作体験などで触れられる場を除いては途絶えてしまっています。

折田さんお一人ではありますが、帖佐人形は現在も作られ、購入することができます。子は国の宝。節句に際し、子どもたちの健やかな成長を願う気持ちは今も昔も変わりません。人の手で作る色鮮やかで素朴な人形は、贈る方の祝う気持ち、祈る気持ちをその形に載せたものなのかもしれません。

帖佐人形は姶良市の蒲生観光交流センターのほか、鹿児島市の県特産品協会ブランドショップ、鹿児島特産品市場「かご市」でも購入できるそうです。
もうすぐ桃の節句。大切なお子さんへ400年前から続く伝統工芸品の土人形を贈ってみてはいかがでしょう。


蒲生観光交流センター

鹿児島県特産品協会 鹿児島ブランドショップ

鹿児島特産品市場「かご市」



以下、購入いただいても追加の記述はありません。
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