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海辺で暮らす私の日記 2



生活のログ


7/1(土)
今日は先月から楽しみにしていた企画に出かけた。
囲炉裏や縁側のある昔ながらの日本家屋に、この辺りの地域の珈琲屋さんや焼き菓子屋さんが集まる企画。
郷土菓子と水出しコーヒーと笑顔で溢れ、あとはライブペイントもやっていた。
爽やかな風と青い空とアイスコーヒー。すっごく素敵な時間だった。

コーヒーを飲みながらふと顔を上げると視界はこれ


そこから川べりの公園に移動した。日が傾くまで本を読みたかったから。
ちょうどいい東屋を見つけて陣取る。
穏やかな昼下がり、川を流れる水音と、時折通りかかる親子連れと。一生懸命に何かを叫ぶちびっ子の可愛い声と。
透明人間になった気分で読書に耽った。

16時、特等席で本を読む
桃を煮るひと


さっきの企画で買った焼き菓子を開けた。
この季節の季語だというお店の名前はとても美しいなって思った。
まるで旬の食材を大切に食べるみたいに、大事に口に運んだ。この季節を乗り越えるためのエネルギーが詰まっているみたいだった。口の中でホロホロと崩れるその食感はまるで、砂のお城がサラサラと崩れていくようだった。

食べられる季語


夜はいつもの居酒屋で飲んだ。マスターのお母さんが亡くなった話を聞いた。



7/2(日)
朝起きて気づく。あれ、午後から美容院予約してる?
昨日飲んで帰ってきて、深夜2時に謎テンションで美容院を探したらしい。そしてポチッとしたらしい。
確かに(湿気で髪の毛広がるな〜うねるな〜)と思ってはいたけど、夜中の勢いってすごい。
午後、初めましての美容院に出向いて髪の毛のことを相談した。結局縮毛矯正に頼ることにして3時間をそこで過ごした。
薬剤を塗られて待つ間、(知らない場所で何してんだ私…誰がこうなること想像した…?)と思ったら可笑しくなった。たぶん鼻の穴膨らんでいたと思う。
夕方、私にしては過去イチの金額をお支払いして美容院を出る。
確かにサラッサラだ! スッキリ〜!
こんな豪遊があっても良い!
夜、答えの出ない事をぐるぐる考えて疲れる。
たぶん早く寝た方がいい。


7/3(月)
仕事終わりのスーパーでデリカコーナーに立ち寄る。そこで食パンを眺めてふと思い出したこと。
5枚切りの食パンを買って帰り、(5回分の朝ごはん、食パンに何を乗せよう…)とわくわくしながら眠りについていた大学時代の私、なんて心が豊かなんだろう…。
あの頃は就職試験が差し迫り、むやみに勉強を頑張るしかなかった時期だった。
過去問はあるものの模試は無く、手応えがまるでないまま知識のインプットに励み続けた。
翌春に大学卒業を控えているけど就職が決まっているわけではない、そんな何者でもない自分がすごく心細くて、あ〜はやく、何者かになりたい、と焦るだけの日々だった。
そんな時に私、食パンをどうやって食べるかを夢みていたのね。シラスをまぶしたり、韓国海苔を敷いてみたり、シンプルに目玉焼きを乗せてラピュタパンにしたり、生活を疎かにせず心のゆとりを保ち続けていたんだね。
なんて豊かな生活をしていたんだろう。
そこで唐突に気づいた。
私は、心の豊かさを失わずに生きていきたい。
目に見えるものだけじゃ無く、目に見えないときめきを大切にしたい。
3枚切り〜8枚切りに徐々に薄くなる食パンを眺めながら、とっても大切なこと、自分の人生の芯にしたいことに気がついた。
7月3日は食パン記念日🍞



7/4(火)
私の好きな作家さんは、高速のサービスエリアでソフトクリームを丸々1人で食べた時、失恋を実感したらしい。
私にとってそれはソフトクリームではなくパンだな、と思いながら出張先でお昼ご飯を食べた。
この土地にはソウルフードの大きなコッペパンがある。何かの動物みたいにふわっふわで小学生の筆箱みたいに大きなコッペパンに、惣菜系のおかずを挟んだり、甘いクリームや果実のジャムを挟んだり、あれとこれとを組み合わせたり、と好きにカスタムできる。組み合わせは何十通り!が売りの大好きなパン屋さんに並んだ。
この街に来るときはよく2人で並んで、惣菜系のパンとスイーツ系のパンを買ったなぁ、いつも私が食べたいものを優先して選ばせてくれたなぁ、そして買った2つを半分こずつにして食べたなぁ。
今は1人で並んで、2つは多いから1つだけ厳選して選んで、大きなコッペパンをまるごと食べなければいけない。あぁ、私、独り身なんだなぁ。



7/5(水)
仕事が楽しい日。私はいつだってミツバチのような働き方をしていたい。
人と人との間をふわふわ飛んで必要な情報を仕入れたり、人手が必要なところで手を貸したり。
それでいてフラッと気軽に立ち寄れる空間のオーナーとして、その空間を守る務めもある。
絶妙な濁し方をするならこんな感じ。
夜、気になる人とのラインにやきもきする。私、いつからかこの人に執着してない…?やだな。
その後、勝手にその人をカテゴライズし勝手に人柄を決めつけようとした烏滸がましい自分に気がついて、大反省した。



7/6(木)
今日もご機嫌だった。サイコ〜に気持ちよく働いた。楽しかった瞬間や、(あ、素敵な表情)と気づけた瞬間が多すぎて幸せ。
夏みたいにあっつい日だった。
帰り道の車内も暑くて、(あち〜〜)と思ってコンビニでアイスコーヒーを頼んだ。レジの店員さん、優しくしてくれてありがとう。
それをゴクゴク飲みながら港公園へ。案の定おじいと柴犬が散歩してて、こんばんは〜今日暑かったですね〜と2人(?)のもとに向かう。
日が傾いて海が優しい色になるのを眺めながら、高校野球の話をしたり、美人な柴犬におやつをあげたり。
「100円でできる最高の贅沢」の最適解はこれだ。


7/7(金)
夜中の1:30、部屋が暑くて目が覚めた。
寝室の窓を開けると東の水平線近くに白く輝く星を見つけた。網戸越しでもはっきりわかる明るさだった。
彦星か織姫、どっちだったんだろう。
取り立てて七夕らしさのない1日だった。
大学生までは結構真剣に(何を願おう)と考えていたし、友達とも「短冊に何書く?」とか話していたのに、そんな日々を遠く昔に感じる。
それが寂しくて、会う人会う人に「今日は七夕ですよ、何をお願いしますか?」なんて聞いてみた。
「私小学生の頃に『すべての動物と仲良くなりたい』って書きました」って答えてくれた人がいて、「か、かわい〜〜」とのけぞってみたりもした。
退勤後、車のフロントガラスの汚れに気づいてワイパーを動かした時、ウォッシャー液が切れたことに気づいた。
ウォッシャー液の補充方法が分からない。
それどころか自分でボンネットを開けたこともない。
職場にいたら誰かしら教えてもらえそうだけど、もう退勤しちゃった。ガソスタに言って聞くのも良いけど、聞くだけ聞いて帰るのも悪いなぁ…どうしよう。
少し考えてから港公園に向かう。いつものおじいがいるかも…いたら教えてもらおう…と淡い期待を胸に。
公園に着くと、2人とも腰掛けて夕方の会合を始めていた。ふふふ。2人のシルエットは遠目に見ても可愛らしい。
2人に色々と教えてもらって無事に補充。
いつもみたいに缶コーヒーで乾杯して、夜が始まるまでおしゃべりした。
会う度おじいが私にドッグジャーキーを渡してくれるおかげで、柴犬とも少しずつ距離が縮まってきたように思う。
話の最後、二十四の瞳という昔のドラマと、恋吹雪という演歌を勧められた。


7/8(土)
職場に忘れ物をして、月曜まで放って置けない…と朝イチで取りに行った。
金曜にもらった手作りチョコタルト。あま〜〜い。きっとこの甘さは青春の味。包装して、保冷剤と一緒に持ってきてくれるその思いやりにありがとうと思う。
そこから、大好きなお姉さんと百貨店に。3つ上の同期採用のお姉さんはいつだって私の憧れ。凛とした姿勢と柔らかい考え方がいつも好き。
今日は訳あって、一階の化粧品売り場で2人してフルメイクしてもらった。
プロすごい、ちょっとお高い化粧品すごい。顔がパッと明るくなり、いつもよりピンク強めなメイクもすごく自分に合っているように感じた。お化粧って、本来はこんな風にワクワクするものなんだよってプロに教えてもらった気分。
スキンケア一式を買い揃えてスッキリした。大人になったな〜私。
お姉さんとコーヒー飲みながら、私の失恋の話をポツポツとした。一通り話して反省と後悔が残っていると伝えると「何百回でも言いますけど、今すぐに会いに行ってその気持ち伝えた方がいいですよ」ってズバッッッと言ってくれた。
お姉さんは私に会う度、勇気や安心感をくれる。時には背中を押してくれる。年に数回しか会う機会がない私達なのに、その短い時間で知らないうちに空いていた心の隙間を埋めてくれる。芯の強い女性って本当に素敵。
私はどうしたいんだろう。元彼に会いにいきたいのか、よく分からない間柄になってきた気になる人との進展を望むのか、はたまたしばらく恋愛から遠のいていたいのか、どうしたいんだろう。わからない。

百貨店のオムはこなれ感たっぷり





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