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リンと仲間たち


「リン!」
誰だ、俺を呼ぶのは。俺はまだ大人じゃないぞ。
そう念じると声は聞こえなくなった。

リン、それが俺の名前だ。鈴虫のリン。
もうすぐ脱皮して大人になれるんだがな。
成虫になったら他の奴らとバトルする。
子孫を残さないと俺の存在は無駄になる。

ところがだ。4日前から餌の供給がない。
飼い主がくたばりやがった。虫しか友人のいないひ弱な奴だったが俺たちの世話をしてくれてた。

「おい!リン!」俺はその辺のやつを呼んだ。
リンが2匹いるじゃねぇかって?
あたりメェだ。虫に名前があってどうするよ。
ここにいる奴ぁ全員リンだ。

「俺に喰われろ!」
「嫌だ、助けてくれ」
構わず頭からかぶりつく。

さて、このケースの中ではこれから共食いが繰り広げられる。
勝者は誰かわからねぇが生き残ってやるぜ!

リンだ。あれから6匹仲間を喰い殺した。
いよいよ成虫へと姿を変える脱皮だ。
俺の肉を狙ってる奴らが見張りまでつけてやがるぜ。

俺は脱ぎかけの後ろ足で食いつこうとする他リンを蹴りまくった。
脱皮しながらの闘いは苦戦だったが前足が一本もげただけでなんとか終わることができた。

あとは食いつこうともしない腰抜けだらけだ。

おや?
俺はいつの間にかこのケースで一番のリンになっていたようだ。

さぁ、このケースには雌もいる。
子孫を残す闘いだぜ!

【続く】

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