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魔法の学校


 うずまき舎は本屋のようでいて、本屋ではない。というややこしいことを常日頃つぶやいていますが、では何のつもりか?というと「じぶんのおはなしを探しにくるところ」である。と、お答えすることもあります。来た人のその時の状況、心情によりまして、これも一概ではありませんが、こんな山奥まで来て、本を買うことだけが目的だとしたら、今日び、ネットでポチった方がいいにきまっています。

 『魔法の学校』はドイツの児童文学者、ミヒャエル・エンデが最後に残した短編集の中の一編です。子どものころの憧れの職業は、ムツゴロウ王国スタッフと魔法使いでしたので、今からでもぜひ入学したいのが魔法学校。最近有名なホグワーツは無理そうでも、エンデの魔法学校は、このものがたりの中に登場する先生の言っていた「ほんとうの望み」について理解できさえすれば、入学できそうです。

「さてと、きみたちにいよいよさいしょに、そしていちばんだいじな『望む力』の規則を教えよう。」
 先生はたちあがって、黒板にこう書きました。
1.ほんとうに望むことができるのは、できると思うことだけ。
2.できると思うことは、自分のお話にあうことだけ。
3.自分のお話にあっているのは、ほんとうに望んでいることだけ。

『魔法の学校』ミヒャエル・エンデ 岩波少年文庫

 ところが、この「望む力」を持ち続けることは、実は簡単ではないのです。先生によると、我々の住んでいる「普通の国」においては、自分のお話を持っていなかったり、持っているのに気がつかない人が大半だというので、こちらで本物の魔法使いに出会えないのもしかたありません。

 では、こちらの世界に魔法使いがいないのか?といえば、実はそうでもなくて、実際、飛行機がない過去から来た人がいるとすれば、飛行機が飛んでいるのを見て、これは魔法だと思うでしょうし、今は、たくさんの人が使っているスマートフォンだって100年前の人が見たら、魔法の道具としか思えないのではないでしょうか。

 要は、まずはどこかに、こんなものができたらいいなと望み、それを作ろう、それはかならずできる。と強く信じていた人がいて、周辺にも、それが実現できると信じる人が増えていったことで、作られてきたものごとだって「魔法」に含まれるのではないかと思うのです。

 そう考えて見ると、芸術家、ミュージシャンの中にも魔法使いのような人はたくさんいて、活躍している人の話を聞くと、魔法学校の先生が言っていた3つの条件をすべてクリアしている人ばかりです。

 「じぶんのほんとうの望みは何か?」という問いかけと、子どもの頃からよく問いかけられた「将来なりたい職業は何か?」という問いかけは、同じようでいて、本質から違うのだということに、そもそも気がつけるかどうか。じぶんの人生をなにか他のものに奪われている感じがするならば、あなたが、いまいくつであっても、魔法学校の扉を叩いてみてほしいのです。


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