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OPTION B: 逆境、レジリエンス、そして喜び【読書記録#04】

前の投稿から1ヶ月以上空いてしまった。
今もいくつか読書中のものがあるが、一つ読み終わったので、印象に残ったことを記録していく。

読んだのは、metaの元COOのシェリル・サンドバーグの「OPTION B」。
あの「LEAN IN」の著者の本だ。
彼女はLEAN INを出版した後の2015年にパートナーと死別していて、この本ではその悲しみに対するレジリエンスについて書かれている。

と言っても、ただの自分語りではない。彼女に起きた出来事・気持ちの揺れ動きを中心に添えながら、同じような困難を経験した人のエピソードやそれに対する心理学的な解説などが書かれていて、とても学びが多い本だった。
何より、この本が一貫して、「WE」というスタンスであることが、「誰だって困難な出来事に出会ってしまうことがあって、心が沈むことがある。でも皆そこから回復する力を持っている。あなたにも。」というメッセージが込められているようで、すごく好きだった。


苦難から回復することを妨げる「3つのP」

「オプションAはもう無理なんだ。ならば、オプションBをとことん使い倒そうじゃないか」

本書より抜粋

この本のタイトルについて、本の冒頭でこんな風に触れられている。誰だって理想とする人生像があるが、その中にトラウマになるような困難を自ら描く人などいないだろう。でも現実世界において、完璧な人生なんてありえない。理想通りにいかないことなんてザラにある。そんな時に、"Option A"が選べないことを嘆くのではなく、"Option B"を自分の手で掴み、その選択肢でできる最高の人生を送ろう、というものだ。

しかしながら、Option Bを自ら自覚的に選ぶことは、おそらく悲しみの渦中にある時にできることではない。だから、悲しみから早く立ち直る必要があるが、そこには苦難から回復することを妨げてしまう「3つのP」が存在する。

3つのP
苦難からの立ち直りを妨げるもの
 ・自責化(Personalization)
 ・普遍化(Pervasiveness)
 ・永続化(Permanence)

本書より要約して抜粋

これは、苦難が「自分のせいで」起き、「自分の人生を全部ダメにして」、「これから永遠に改善することはない」と思い込むことだ。
つまり、逆を言えば、こういうことである。

つらいできごとが「自分ひとりのせいではない、すべてではない、ずっとではない」ことに気がつけば、立ち直りが早くなる

本書より要約して抜粋

アドラーの課題の分離の考え方とも近い感じがする。

悲しい気持ちを受け入れる

そして、深い悲しみに直面した時の周囲の反応で印象に残ったのは、「尋ねない友人」のエピソード。関係性にもよるが、人は、悲しみの中にいる他人と対面するときに、どうしてもその悲しい話に触れてはいけないと思いがちだ。これは心理学的には、マム効果(悪い情報を伝えることを避けようとする心理傾向のこと。)というらしい。ただこれによって、当事者は救われているかというとそうではなく、却って傷付くというのだ。

苦しむ人がなによりも知りたいのは、こんな気持ちになるのは異常ではないこと、そして自分には、支えてくれる人がいることである。
(話題に触れずにいれば)その2つを全否定することになる。

本書より要約して抜粋

人は感情を持った社会的な生き物だから、自分の感情を他者に受け入れてもらうことはとても大切な営みなんだろう。

もう一つ、いいなと思ったのが「砂の足跡」という話。これはキリスト教の中の教えのようだ。

参考:https://ieji.org/archive/footprints-in-the-sand

拙い要約をすると、神様と一緒に歩んでいると思った人生を振り返った時に、所々1組の足跡しかない期間があった。その期間は全て、すごく苦しい時期だった。神様に「なぜ苦しい時に一緒にいてくれなかったのですか?」と問うと、「その時は私があなたを背負っていたから1組の足跡しかないのです」と答えたというもの。

苦しい時って、支えてくれている人たちの存在が見えなくなりがち。でも、実は誰かが支えてくれている。そんなことを思い起こさせてくれる話だ。

悲しみからの回復は1歩ずつ

完璧を目指さなくていい。いつもいつも自分を信じなくていい。いまは少し、次はもう少し貢献できると信じればそれでいいのだと。

本書より要約して抜粋

「立ち直り」と言っても、よっこらせと1日で直ぐに立ち上がれるようなものではない。時に、他人から見たら「まだ引きずってるの?!」と思われることもあるだろう。それが大きな悲しみであればあるほど。
そんな中でも「1歩ずつの前進」を繰り返せば、いつの間にかちゃんと前に進めているものだそうだ。
本の中で紹介されていたのは、スキー場で間違えて上級者コースに迷い込んだ時のこと。斜面を見下ろすと到底自分で降りれるとは思えないが、ターンを10回だけすることを決めて、10回繰り返す。その後、もう10回やって見る。これを繰り返すと、いつに間にか山を降りられたというもの。どんな時もちょっとだけやってみよう、とする希望を持てるお話だった。

そうして、悲しみを乗り越えると人は成長する。このトラウマ後の成長のパターンが4つあるそうだ。

トラウマ後の成長
 ・人間としての強さを自覚する
 ・感謝を深める
 ・他者との関係を深める
 ・人生により多くの意味を見出す

本書より要約して抜粋

Option Bを使いこなすというのは、こういった成長を自分の糧にしていくことなのだろう。

喜びを見つけようとするとき、私たちはとかく卒業や出産、就職、親戚の集まりなど、大きな出来事に目を向けがちだ。
でも幸せにおいては、大きさよりも頻度の方が大切なのである。

本書より要約して抜粋

本の中でジャーナリングについてもよく触れられていて、その日「上手くできたこと」を3つ書くという方法が紹介されていた。そこから、ある程度回復してきたら、その日の「喜びの瞬間」を3つ書く、というのが良いそうだ。

レジリエントな子どもを育てるには

本の最後の方には、レジリエントな子どもを育てるための視点としてこんなことが綴られていた。

レジリエントな子どもには共通点があった。
自分の人生をコントロールしているという強い感覚を持っていたのである。
自分の運命を支配するのは自分だと信じ、ネガティブな出来事を脅威ではなく、挑戦や好機と捉えていた。

本書より要約して抜粋

子どもは子どもで自分の人生をサバイブする必要がある。だからこそ、自分で人生の手綱を握っている意識を持つことが大切なんだろうな。

取り止めもない読書記録になっちゃったけど、総括として、すごく温かみを感じながら元気付けられる本だった。今困難にぶち当たってなくても、誰だって人生色々あると思うと、色々学びがある本だと思う。シェリルがたくさんの人に支えられていることと、それがシェリルがこれまでたくさんの人を支え元気づけられていたからこそなことが端々から感じられた。そして何よりそれは、シェリルだけじゃなくて、この社会に生きている私たち皆が、支え支えられ合えると感じられる本だった。

LEAN IN、もう一回読みたくなったな。

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