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花の命は

ずいぶんと昔のことだから記憶が曖昧なのだけれど、確か鹿児島の桜島だったかに観光に行った時、林芙美子の、「花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき」という歌碑を見た記憶があって、私はそれをメモ帳にささっと書き写した。確か小学校3年生くらいだったと思う。
父に、この歌はどういう意味?花はかわいそう、って意味?と尋ねると、「んー。そういうことだけでもないんだよ。この詩には前と後ろがあってね、家に帰ったら調べてごらん、本棚にあるかもよ」「えー、今教えてよ!」という私に、父は「自分で調べたら一生忘れられないもになるから。そしたら感想聞かせて」と言った。
めんどくさがりな私はそれから本棚には見向きもせず、何十年も経った。ただ、あの歌碑のことだけはずっと覚えていた。

そして何十年も経った頃、父は帰らぬ人となった。
私は今更、調べてみようと思ったが、本好きの父のおかげで、本棚どころか、そこは書庫のようになっている。
ごめんお父さん。インターネットの力を借りるよ。

風も吹くなり  
雲も光るなり
生きている幸福は
波間の鴎の如く
漂渺と漂い
生きている幸福は
あなたも知っている
私もよく知っている
花の命は短くて
苦しきことのみ多かれど
風も吹くなり
雲も光るなり

小学校3年生の私なら、きっと今も変わらず
“生きている幸福は あなたも知っている 私もよく知っている“ってとこが好き。
って答えたかなって思うよ。
そして、「花の命って、短くないんじゃない?」って質問してたし、「漂渺ってなんて読むの?」って聞いてたよ。

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