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技術を持っている人は「事業化が難しい」って話

先日念願の「新規事業立ち上げセミナー」を開催することができた。
初めての開催でそれなりに安い価格ではなかったし、オフライン限定だったにも関わらず富山、大阪、滋賀などからたくさんご参加いただいた。
アンケートでも満点をいただいて、また自分としても改善点も見つかって第二回、第三回と開催していきたいと思っている。

お話しを聞きながらやはり感じたのは「技術を持っている人ほど事業化が難しい」ということである。
その理由について考えてみた。


技術はもちろんアドバンテージ

ビジネスを行うにあたって技術があるということはもちろんアドバンテージである。
僕みたいに縫製技術がない人というのは何か作ろうとするとまずは技術のある人を探すし、そこにはコストが発生する。
だから小さなビジネス、例えば年商2000万円とかを作っていくのであれば自分が技術者となってしまうのが1番早い。

客観的に見るとそうなのだけれど、
人間には脳みそが存在していてどれだけ意識していても「主観」と「客観」が存在してしまう。

そして主観的に考えてしまうことが相対的に多く、それが原因により技術を持っていることがビジネススタートアップの妨げになってしまうことがあるのだ。


交換価値と使用価値

セミナーの冒頭で「お金とは何か?」について話をした。
私たちはお金を使ってビジネスを行うにも関わらず「お金」というものが何かよくわかっていない。

ただの紙切れでもあるし、信用の証でもあるし。。。

なんとなく理屈ではわかっていても何かよくわからない。

ものやサービスには交換価値と使用価値が存在する。

使用価値はわかりやすくて「使う時の価値」である。
例えば砂漠の中で喉が渇いている時は1リットルの水は100万円でも売れるだろう。

交換価値というのはそのものを交換する時の価値で抽象的人間労働によって測られる、例えば「水を井戸から汲んで濾過するのに一日かかったからこれくらいの価値だ」といった抽象的な労力に対する価値である。


使用価値はいわゆるお客様が求めているものに対する価値だからわかりやすい、しかし交換価値というのはそうではなく「主観」をベースに価値が決められる。

つまりどうやって使われるかは関係なく「これくらい苦労した」という抽象的な価値に依存する。

職人がビジネスを始めるときにこの「交換価値」を優先して考えてしまうのがうまくいきにくい最大の要因である。


SNSで巻き起こる「安いもの買い」への批判

SNSをやっていると「こんなの高くて買えない」という投稿に対してそれを作る側の(製造業に関わる人)からの批判的な意見をよく見かける。

・じゃあ自分で作ってみろ
・それでも安い方だぞ
・常識を知らない!

こんな意見が大半である。
私もものづくりをしている人間だからこの批判に関しては痛いほどにわかる。

しかしこれは「交換価値」にフォーカスした考え方である。
抽象的人間労働の価値はそんなものじゃない!という職人を中心とした考え方である(もちろんそれは悪くない)

しかし実際に考えてみると批判がされている側の「こんなの高くて買えない」という意見は使用価値にフォーカスを当てていて実際その人自体が顧客だった場合は購入に至らない場合が多い。

もちろんその人自体が顧客層ではない!と切り捨ててしまえばそれまでなのだけれど市場調査としては非常に面白い。


技術を持っている人がビジネスをするには

技術を持っている人がビジネスを成功させるにはどうすればいいだろうか?
もちろん一人で集客も財務も経営もできるのであればそれはそれでいいと思う。
だけどやはり得意や不得意はあると思う。

基本的には「不得意よりも得意を伸ばせ」と思うタイプではあるけれど、それでも1人で運営していこうと思う場合は最初の半年間だけ専門家を入れて前に進めることをお勧めしている。

人は習慣化するには半年くらい時間がかかる。
だから習慣化のために専門家を入れて「いやでもやらなきゃいけない」という状況を作らなくてはいけない。

どうしても主観で「交換価値」をベースに考えてしまうのであれば客観的に「使用価値」をベースに考えてくれる人をそばに置いて半年間走ったほうがいい。

僕の場合それが1番うまくいったと感じるのは僕という使用価値の人間と、姉という縫製職人で交換価値をベースに考える相反する、尊敬し合える仲間がいたことである。

もし僕が会社を始めた時に姉がいなかったらと考えるとゾッとする。
きっと市場をベースに価値を決めて、その結果職人さんをただただ疲弊させるだけの何も生まない経営者になっていたと思う。

少なくとも私たちは「お客様(販売価格)」という使用価値と「職人さん(交換価値)」の両方のバランスが必要なビジネスをしているので、その場に置いて2つの異なった考え方が必要であるし、僕は本当に運が良かったと考えている。


今後の展望

ヴァレイという会社では「服を作るまで」のお手伝いをたくさんやらせていただいてきた。
しかし、どれだけ素晴らしいものができてもそれが売れていかない苦しさを味わってきた。
お客様には「売れなかった」という失敗体験が残ってしまう。
だから私は「作る」ということの次にそれを売ることをサポートできるように。
もっというと「自走できる」ということを目標にスタートするブランドやビジネスをサポートしていきたいと思っている。

そのための最初の一歩がセミナーだったししっかりと手応えを感じることができた。
近日中に皆様をサポートできる体制を作ることができたらと思っています。
(楽しみにしていてください!)


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