intervew with 河原崎聡 #2

NG: 音楽をやってる人で、自分のやっている音楽だけで食っていけなくて困ってる人は沢山いますよね。おれも悩んでいる一人です。でも一人で悩んで考えあぐねていてもしょうがないんで、どうやったら音楽で生きていけるか、信頼しているミュージシャン達とアイデア出し合って、シェアしてみようと思いました。こうやって試行錯誤している過程も発表していったら面白がってくれる人もいるかもしれない。
 ミュージシャンがアイデアを出して切磋琢磨している活動そのものもミュージシャンのコンテンツにならないかなと思って、このインタビューを企画しました。

 
 例えば、インディ-ズロックバンドのフォーマットだと、CDなり音源をリリースしてイベントをやる。日本中のライブハウスを回って、CDとTシャツなどのグッズを売ったりして収益を得ていく方法があります。

 ジャズミュージシャンの経営モデルはきっと全然違いますよね。
 
 
聡: ジャズミュージシャンは、先生になる人は多いよね。講師業。個人でレッスンを請け負って。ミュージックスクールに所属したりして定期的な安定した収入を得ながら、自分の音楽活動をやっていく。

 あとはライブで稼ぐ。物販っつってもそんな…
 
 
NG: ジャズの人は物販出してるイメージ無いですよね。
 
 
聡: そんなステッカーやらTシャツやらっていうジャンルじゃないでしょ。
 っていうか、なんでTシャツ買うんだろうね。
 
 
NG: モッシュとか起こるくらい激しく盛り上がるロックのライブ会場の場合は、汗で自分の服がビショビショになるから、ロッカーで物販のバンドTに着替えるっていうのはありますね。
 
 
聡: おー!粋だね。そんな直接的需要があるんだね。
 
 
NG: そういったライブ会場の直接的な需要と供給は今でももちろんありますが、だんだん形骸化して、猫も杓子も「ライブ会場の物販と言えばTシャツ」という風潮になったのではないでしょうか。

 もちろんTシャツ作るのが原価的にコストパォーマンスに優れているからという理由も大きいと思います。
 
 
聡: なるほどなるほど。ジャズは聴いてる人もなかなか汗かかないしなー。
 
 
NG: ジャズミュージシャンのCD音源も、本人が版権を持っていないカヴァー楽曲が収録されている場合がほとんどなので、自分たちに入ってくる収益が少なくなっちゃうと思うんです。
 
 
聡: 純粋にライブチャージの上がりなんじゃないかな。あとはさっき言ったレッスン。その合わせ技でご飯食べていけないミュージシャンが他の仕事してる。

 
 
NG: ライブチャージに収入すべてを依存するとなると、必然的にチャージの値段は上がってきませんか。
 
 
聡: そうなりがちに思うかもしれないけれど、人によると思うな。

 もちろん大御所のミュージシャンはチャージも高いけれど、

 例えば、気軽に聴きに来てほしくてチャージの値段を上げない人もいる。ライブを何本も本数やってペイしていく。
 
 逆に安売りしたくなくて、値段は下げないという人もいる。技術に裏打ちされたクオリティ高い演奏を継続するためには多少高いライブチャージが必要という考え方。それでもお客さんが来てくれるのなら問題ない。
 
 だから一概には言えないと思うよ。

 
NG: おれはジャズみたいな、「スーツにシャツ」のイメージがあるジャンルの音楽でも、気軽に物販やってもいいと思うんです。

 なにも無理やりTシャツ売ろうと言ってるわけではないですよ。音楽が好きで応援してくれている人は、何かしらの形でミュージシャンを支援したいと思ってくれている。オーディエンスがアクセスできる仕組みがあれば、もっとアクセスしたい、知りたい、と思う人が数珠つなぎにつながるはず。
 
 ジャズミュージシャンは、Tシャツなどを売る土壌が無い、CDが売れてもあまり収益にならない。
 ならば、逆に考えれば現在の音楽家全体がぶち当たってる「お金にならない」問題を最初から前提として抱えているのがジャズミュージシャン。

 ライブの演奏性や個人のパーソナリティーがモノを言うジャンルだからこそ、違った角度からのアプローチで面白いことができるんじゃないかな?と考えました。

 ひとつはこのインタビューを全文掲載して、その後にライブの録音をインターネット上に上げる。もし、我々のこの演奏を聴きたかったり、面白がってくれたら、投げ銭の形でミュージシャンにお金を払うというのはどうでしょうか。

 あとひとつはヒップホップモデル。NGがDJして今回のイベント用にジャズのミックスCDを作って会場に持っていきます。
ヒップホップのミュージシャンは自分自身のデモを他の人が作った音楽と並列においてミックスCDとしてプレゼンテーションしますよね。自分の他の収録曲のクリアランスを得ていないのに、あわよくばそのミックスCDで収益を上げたりもしている。

 今回は版権をクリアしていない音源の入ったミックスCDを販売する気はありませんが、イベントモチーフの絵葉書を売りますので、買ってくれた人にはもれなくミックスCDが付いてくるというアイデアはいかがでしょう。

 ちょっとトリッキーな案ですが、今回のJAZZ at 夜更けで試してみます。 

聡: 多分ね、ジャズの良いところでもあり、悪いところでもあると思うんだけど。非常にマイノリティーな音楽。そのなかで自分との戦いを見てくれっていうところはある。確かに音楽以外のプレゼンテーションに興味が無い、大切さに気づいてない人たちもいると思う。

 ただ、おれはどんなに巧くても自分の見た目を気にしないミュージシャンは嫌だ。ライブに足を運んでくれた人たちがただ演奏だけを望んでいるんじゃないって思うな。
 今、若手はすごく巧いんだ。技術的に巧い若手と対峙するときに、技術力以上の個性が求められる。それもやはり自分との戦いなんだけど…。


  
NG: 今回のライブで自分はDJと会場進行に徹して、演奏はしません。自分の音楽を売るのではなくて、サトシさんの音楽とそれを包むイベントの時空間を楽しんでもらおうと思っています。
 なのでサトシさんがやりたいっていうか演奏を通して望んでいるイメージを実現したいと思うんです。
 
 
聡: そうね…音楽的な技術は日々学んで努力しているけれど。
 
 考えてることは…みんなと一緒。
 
 
NG: はあ。どんなことを考えているんですか。
 
 
聡: え?ここに来る人みんなと一緒だよ。
 
 
NG: …言葉にするとなんですか。「お酒飲みたい」とかですか。
 
 
聡: お酒飲みたい…あわよくば…、あとは…友達になりたい…か。

 「いい夜を過ごしたい」っていうのは、ここにいるみんなと一緒じゃない?
 
 
NG: なんかおれ、野暮なことを聞いてるみたいですね。聞いてないミュージシャンの本音が出てきそう…

 例えば、10月29日にジャズライブをやってるお店が東京に100軒あるとします。サトシさんのライブはその100軒の中でナンバーワンの演奏の予定です。ナンバーワンジャズマンとして一番の売りはなんですか?
 
 
聡: 「親身になります」…かな。
 
 
NG: えッ!!!!酔っぱらってますか?
 
 
聡: あと「ぼくに親身になってください」。
 
 
NG: すげえこと言ってる気がするけど、いいと思います。親身になりましょう!!突然だけど!
 
 
聡: こちらがホストだけどね。本音よ。
 
 
NG: 破壊力ありますね。年上の男にいきなり「親身になってください」っていわれるとビックリします。
 
 
聡: みんな一緒なんだよ。変わらねえんだ。友達になってください。
 
 
NG: じゃあ10月29日「JAZZ at 夜更け」でともだちたくさん作りましょう!!!
 
 
聡: うん!そう!!そういうことして!!!当日は本当によろしくお願いします。



10/29(土) JAZZ at 夜更け

蔵前 夜更けの人々

東京都台東区浅草橋3-24-7 1F


tenor sax 河原崎聡

guitar 青木武俊

DJ & Hosted by NG

charge¥1,500- +drink

1st set 20:00~ / 2nd set 21:00~



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