北海道にいきたいの R20108
と、彼女は言ったのだ。
何を言っているのか、一瞬理解ができなかった。
「援助してくれないかな?」とも言った。
やっぱり、何を言っているのか、もう一つ理解ができない。
昨年、彼女は、趣味活動のチームで北海道に行ったのだ。
二年連続で行くなんて?
それに、この状況でぼくに金銭的援助を頼むのか?
約2カ月の短期間の別居を経て、戻ってきた彼女であるが
結局は、どういう理由か、やむを得ぬ事情で戻ってきただけのことなんだろうな。
心が離れてしまっては、戻るのに時間がかかる。
というか、これまでの経験で、元に戻ったという話のほうが稀だ。
という理由で、ぼくはどこかあきらめているのだが、100%ではないあたりが優柔不断のA型だ。
子供もまだ小さいのだ。親は二人そろっていたほうがいい。
そもそもぼくには、別れる理由もない。
普通の夫婦に戻れたら、それがベストだ。
数えるほどだが、こういう話はしたのだ。
答えは、「ノー」 だったが。
「同じ空間に居たくない、一秒でもこの部屋に居たくない」
文字にしたら、なんとも酷いことを言われていたものだ。
彼女には、そういう言葉をぼくにぶつけるほどの、たまった感情があったのだろう。
そんな彼女が戻ってきている。
苦渋の決断だったのだろう。
リビングに二人いても、会話もない。
一人はクロスワードを考え、もう一人はPCのキーボードを叩いている。
明日は、人気映画のレイトショーを見に行くそうだ。
一緒に見に行けるかもな、と淡い期待を抱いたが、軽くかわされカウンターを食らった。
うたた寝している彼女のスマホは、おそらくLINEの通知を告げるバイブが数回鳴った。
明日の映画の待ち合わせ内容でも、届いているのだろう。
バカバカしい。ほんとに。
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