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【読書レビュー】『魔眼の匣の殺人/今村昌弘』(東京創元社)(2020年9月8日)

おはようございます。
森貴史です。
皆様、いつもスキやコメントを頂きありがとうございます。Twitterも含めて、全部読まさせて頂いております。

さて、本日の読書レビューは昨年話題になったこの作品です。
おおよそ10分くらいで読めると思います。
楽しんで下さい。

◆◆

2017年のミステリー賞を総ナメにした、今村昌弘氏の『屍人荘の殺人』の続編。
人里離れた施設の予言者が主人公・葉村譲と剣崎比留子を始めとする来訪者達に「あと2日でこの地で4人が死ぬ」と告げた。
閉じ込められた葉村達を混乱と恐怖が襲うーー。

SHOWROOMの生配信時代を知っている人は少ないかもしれませんが、以前そこで『屍人荘の殺人』のレビューをさせて頂きました。
実写映画を観る前に原作を読んでおこうと思ったのです。そのタイミングで田舎の図書館での予約順番がようやく回ってきたのも何かの運命かもと思い、相当ハードルを上げてレビューさせて頂きましたが……そのときの僕の結論はーー「期待し過ぎてしまった」という……まぁいわゆる酷評というヤツですね。

軽くおさらいしますと、『屍人荘の殺人』のときは、「斬新な設定と新しいタイプのクローズドサークルに上手く乗り切れなかった」「殺人のトリックの驚きが少なかった」
そして何より「探偵兼ヒロインの比留子に魅了を感じなかった」と、お前誰だよ!とツッコまれそうなダメ出しをしていたのです。

今作に関していうと、今作の結論は「前回よりも遥かに楽しめた!」といえます。
そして今回は、剣崎比留子がちゃんと〝探偵兼ヒロイン〟になっているところがポイントアップに繋がったといえます。

本作の特徴としては、前述した外界と隔離された場所に閉じ込められた「クローズドサークル」(前回と同じく)、そして〝殺される人数をあらかじめ主人公達に示しておき、誰が死んで誰が生き残るのか? を予想しながら楽しむ「パニックホラー」の要素も兼ね備えています。
因みに前作でも、昨今の「パニック映画」には欠かせないが、ミステリーものにはあまりお目にかかれない、ある〝要素〟が含まれていたので、今村さんは「パニックミステリー」作家といえるのかもしれない。

今作の見どころは、大きく言うと二つ。
一つ目は、ミステリー初心者の人でも分かりやすいように、解説に余念がないこと。主人公・葉村のミステリー愛好者という肩書きを活かして、ミステリーに明るくない登場人物らに、その都度置かれている蒸気やミステリーの定番等を事細かく説明してくれるのです。まさに葉村は「主人公」であると同時に、「作者の代弁者」としての役割も果たしているのです。

そしてもう一つ。全ての可能性をきっちりと潰してくる、こと。
今作の〈推理編〉では、事件が起きると登場人物達は色んな可能性を見つけ出し、一つずつ着実に可能性を潰していくわけですが、ミステリーをよく読む読者ならば考えるであろう、疑惑を納得がいくまでチェックしていく。ここまで念入りに推理すれば、意地の悪い読者は推理おける矛盾点、いわゆる〝穴〟を見つけようとする気すら起きなくなる。
まさに、考えに考え抜かれたストーリーということが説明出来る。

また、何度も言うが比留子がちゃんと探偵兼ヒロインとなっていたのも嬉しい。前作では、本当に〝ただの〟強い女性といった印象だったが、今回は探偵としての脆さ、一人の人間としての弱さ、他にもヒロインに欠かせない主人公への信頼感、時折魅せるボケっぷり……と色んな顔を見ることが出来て、ファンは勿論、〝美少女探偵〟キャラが好きな人は大いに評価すると思う。

最後のオチにはビックリしたし、印象に残るセリフは沢山ありました。
今作は本当に本格ミステリーとしても、一つのエンタメとしても大いに楽しめました。
第三弾への期待度はグーンと上がりましたね。楽しみです。

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いかがでしたでしょうか。
この文章が、本を読むきっかけになってくれたら嬉しいです。

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