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【詩】七つの水と或る女の罪

無限定な
しかし確実に存在する
透明な宇宙の水は
太古より幾度となく
人間たちの耳朶を震わせて囁く
安穏とは程遠い彼岸へといざなうように

あの日も女は
七つの水の揺らめきの中で
背徳に身を沈めた
その罪を揺らめきに押しつけて
ただただ暴力的に
損ないつづけた

だがもとより女にとって重要なのは
七つの水の行方であって
背徳だの罪だの
ましてや人間など
ほんの些末なもの

古い古いその水はしかし
絶望的な美で女を叱咤し
急き立てつづけ
痛めつづけ
女がほうけるまで
逆襲に徹した

罪深き女は思う
この水はかくまで無罪な顔をして
甘美な謎かけばかり繰り返す
一体何を目論んでいるのだろう……

女は未だ 
古き水の復讐に気づかない

血とも涙ともつかぬものを垂れ流しながら
まさにいざなわれるようにして
かの謎が解けなかった愚かな女は
贖罪のためという名目一つすら持たず
やがて自ら彼方へと旅立った


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