悪意と白衣の間に

白衣に悪魔が宿った瞬間のお話。
純白の衣に耳を包み、天使の如く傷付いた者に見返りもなく手を貸す者・・・。しかし、その者に仮に悪意がある物だったらどう思うか?

医療は有史以来古今東西多くの場所にて浸透しており、医療従事者は「白衣」を身に纏う。

この白衣は「見た者を安心させる為」である。

検温や注射の時間、そして復讐の時間も・・・

ここ(病院)に来る人は皆、どこかが重症なのだ。悪態をつく患者さんもいる病院内で、白衣を身に纏っていても患者に安心感を与えられるとは限らず、目の敵にされる時もある。

「私は家に帰る。タクシーを呼べ」

とあるご老人の患者さんが白衣を身に纏った者に、物申したセリフだ。しかし、彼にはまだ治療が必要だったのだ…。

「まだ帰らないでください○○さん。」こう伝えても一向に聞こうとせずついにはスタッフに抵抗仕出す始末。

白衣を纏った者はこれに対して、という名の処置を施すのだった。

「○○さん、あんまりわがままが過ぎるとね・・・彼の方を夜向かわせますよ?」

この「彼の方」とは誰か?それは、この病院に勤める死神である。

なんだこれは、それでは白衣を纏った者がわがままな患者に対してやったただの脅迫ではないか。

この病院に勤めている院長が一番上の位なのではなく、この世の生死を司る神、すなわち「死神」が夜な夜なお前を黄泉の国へと誘うぞと子供騙しのおどかしをするだけなのだ。

もちろん、こんな事いった白衣を纏った者は、その白衣を翌日より脱ぐこととなった。

だが面白い事に、その1ヶ月後の事・・・

その病院に白衣を脱いだ者が心を病み入院する事となるのだった。

そして、白衣を纏った者へとまた自分が誰かにされたような悪態をして返すのであった…。(完)