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論破するのではなく仲間を増やす

 「不振が3年、赤字が2年続いたら手術しないと治らない」これは須田泰三先生の箴言です。店主はどんな手順で、どう改革していいのかわからないので、私に相談があります。

 私はお店を見て、「この店生きているか」「再生の余地があるのか」を瞬時に見分けられるよう須田先生に仕込まれました。生きていると店だったら、心構えを変え、売る品、売り方を変えれば、必ず再生できます。

 再生のコツは、まず同士を「2.5人」募ることです。「2」は息子であったり、先代から仕えてくれている番頭さんだったりします。初めての新卒社員だったりします。役職は部長と店長であったり、店長とチーフだったりします。店主と心を一つにする実戦部隊です。 

 「0.5」は奥さん、または経理と総務を支えてくれる人です。精神面で店主を支えてくれる人です。

 まず、店主と「2.5人」に現状の問題点、改革後のイメージ、そのために何をすべきか、改革後どうなるのか、お話をします。ほとんどのお店が、「これしかない」と覚悟を決めてくれます。
 
 10日か2週間ぐらい時間をおいて、パートさんを含めた全従業員を食堂などに集めて、「このようにお店を変えるよ」と説明会をします。「大型店の真似をやめること」「利は元に有りの仕入れ政策」「率の商売と額の商売」など「弱者の戦略と戦術」を解説します。3時間ほど話して、その日は解散。

 後日、店主が従業員に感想を聞くと、「それは人口の多い街中だから成り立つ商売で、人口が少ない自分たちの町では成り立つはずがない」「安売りをして潰れた店があるという話を聞いたことがある」「客層が変わり、常連さんが来なくなるのではないか」不安ばかり、「変える必要なんてないじゃないか」など苦情も続出します。

 そして、部門別に部門戦略・部門戦術の講義を行います。部門戦略・部門戦術は「ちょっといい」のではダメです。丸っきり変えることが不振店脱却の特効薬なのです。すると、「僕はついていけません。辞めさせていただきます」と言うチーフや担当者が続出します。店主は、ひやひやの連続です。全部門の講義が終わると幹部が半分になるからです。

 店主は辞めるのだけは留まってほしいと説得します。「いくら説得しても時間の問題でいずれ辞めますよ」と私は店主をなだめ続けます。

 それよりも繁盛店の売場や商品の映像をそれこそシャワーを浴びるように残ったメンバーに流し続けるのです。すると、2番手、3番手の中から、「社長、僕もできそうです。やらせてください」と言う人が続出します。パートさんに中からも、「みんな楽しそうですね。私もやってみたい」と言う人が現れます。

 従業員全員を説得して、全員が賛同することを待つより、仲間を増やすのです。仲間の数が閾値(クリティカル・マス)を超えると、全員が賛同するのです。閾値は従業員の1割か2割です。

 全員を説得するより、仲間を増やすことに全力投球するのです。仲間を増やすには、先輩の繁盛店を見せること、繁盛店の映像のシャワーを浴びせることです。

 さすれば、お店は変わります。

同心円型経営


 



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