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「しないことを決める」ことは差別化の特効薬

 2年半のコロナ禍で「デリバリー」と「キャッシュレス」が物凄いスピードで普及しました。飲食店の中では売上げの3割がデリバリー、スーパーマーケットでは8割がクレジットカードや〇〇Payというお店もあるそうです。

 私はこれに、強い危機感を抱いています。私の師匠は須田泰三先生で、私が駆け出しのころからずっとカバン持ちをさせて頂きました。須田先生は、「配達」「掛け売り」「スタンプ(現在で言うとポイントサービス)」を固く禁じました。例外はありません。

 私が依頼を受けたスーパーマーケットが、ポイントカードを止めないと須田先生の耳の入ると、「ワタナベ君、私があれほど言っているのになぜ止めさせないのか」と何度も叱られたことがあります。

 「配達」をすれば、店頭が乱れるからです。陳列や清掃、接客など基本的な部分が疎かになります。

「掛け売り」を止めるのは、回収に時間と労力を取られるからです。万が一取りはぐれたら、その分、他の商品の売価に転嫁しなければなりません。まじめに現金で支払ってくれるお客に損をさせることになるのです。

 当時の経営者の中には、「代金を回収に行って取れるか取れないかそのスリルとサスペンスが堪んないんですよ」と言う人がしました。そんな人に須田先生は、「趣味なら仕方がないが、世の中のためにならない店はない方がよい」と叱っていました。

 事実大型店のクレジットカードなどの手数料や、ポイント5倍、10倍、20倍などポイント乱発の経費は増大しています。増大する経費を賄うために、大型店は仕上がり30%以上の粗利益率を必要とするに至ったのです。これに対して、アオキスーパー(愛知)は14.6%(総経費率13.6%)、オーケー(神奈川)22.0%(総経費率15.69%)です。どちらが世の中のためになるのか、火を見るより明らかです。

 ポイントカードを導入し、ポイントを乱発すれば、定番価格、特売価格とも吊り上げなければなりません。アンカー商品(お店の安さの基準となる商品)信じられないくらい高くなります。

 「キャッシュレス」も物凄いスピードで普及していますが、停電や東日本大震災のような災害時には全く機能しません。最近、停電や新幹線の運休が多い気がします。不測の事態(テロ)を心配する人が増えています。

 私は、真の商人がいなくなったのではないかと危惧しています。商いのこころは「誠」です。仕入先に無理難題を言うことや、ライバル店と駆け引きをすることがあるかもしれませんが、お客に対しては誠意を尽くす、お客を裏切る行為は決してしないことです。

 英語に「商い」という言葉はありません。「trade」は「取引」と訳されます。騙すより騙されるほうが悪いと明言する人もいます。「bisiness」は「事業」の意味ですが、目的は収益の拡大です。自らの収益を減らしてでもお客を儲けさせようという考えはありません。

 「店はお客様のためにある」とは、お客が喜ぶこと、お客が儲かることを最優先すれば、お客とお店は一体となって、結果としてお店は栄えると言うものです。

繁盛への階段は続く

 「商い」のこころが廃れて、小賢しいビジネスマンが増えた気がします。過度に「デリバリー」「キャッシュレス」「ポイントサービス」に依存しすぎると日本は日本でなくなります。国民は家に閉じ込められ、商品選択の自由はなくなり、会社は外国人に乗っ取られ、職は奪われてしまうかも知れません。

 ネットで、「クレジットカードが使えないスーパーマーケット」を検索してみてください。日本全国に数店あります。そして実際にその店に訪れて、買物をしてみてください。価格、品質、品揃え、接客・・・。すべてに感動があるはずです。ほとんどが“超”のつく繁盛店です。

 時代に逆行するかもしれませんが、「しないことを決める」ことは、差別化の特効薬なのです。

 「大型店を真似することをやめる」ことは地方スーパーが繁盛店になる第一歩です。「冷凍食品の使用をやめる」「煮物をやめる」「サラダをやめる」ことは弁当店が繁盛店になる第一歩です。「フィレーを仕入れることをやめる」そして、内臓・骨・皮を売ることが、鮮魚店で繁盛する第一歩です。「輸入牛をやめる」「輸入豚をやめる」「輸入鶏をやめる」と精肉店は爆発的に売れ出します。


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