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ハーパーローカル「集合体」戦略

 スーパーマーケットはもはや絶滅危惧種です。同じスーパーマーケットに属するものの、「大型店・チェーンストア」と「ローカルスーパー」は、全く別の生き物です。

 「大型店・チェーンストア」の背後には、巨大食品メーカー、商社、設備機械メーカー、ゼネコンなど巨大企業が控えていて、業績が悪化して出店余力がなくなると法律を変えて、補助金をバラ撒き、設備機械の新規購入を促します。M&Aを仕掛け、寡占化、単純化しコントロールしやすくします。すでにコンビニはセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの上位3社で90%を超える超寡占企業です。

 一方で、「ローカルスーパー」は、業績が悪くなっても誰も助けてはくれません。M&Aされ、「大型店・チェーンストア」に隷属するか、刀折れ、矢尽きるまで戦って倒れるかどちらかです。
 人間であれば、病気になっても医者も見てくれません。ならば、病気にならないように食事に気を使い、適度な運動をし、ストレスを溜めず、免疫力を高めなくてはなりません。

 実は「ローカルスーパー」不振の原因は「大型店・チェーンストア」の真似をすることだったのです。「大型店・チェーンストア」が「グローバル」化を推進するなら、「ローカルスーパー」は、徹底的なローカル化「ハイパーローカル」に徹するのです。

 「グルーバル」を排した「ハイパーローカル」の集合体の店舗を作るのです。
世界中の人やモノ、お金や企業がつながっている現代、今後ますます「グローバル」化が進むと言われています。

「グローバル」という言葉が、頻繁に使われるようになったのは1989年以降のこと。ベルリンの壁が崩壊し、東西の冷戦が終結する世界情勢のなかで、「資本主義・自由経済」対「社会主義・計画経済」といった二項対立が消え、〝世界はひとつである〟という発想のもと生まれたのが、「グローバル」という概念です。

「グローバル」化を推進しようとしている人は、国家の上に「世界政府」を置き、「世界政府」が決めたことに、各国家の主権を超えて従うことが強いられます。今回の「コロナ騒動」はその実験でした。一国の首相の言葉よりも、WHO事務局長・テドロス氏の「緊急事態宣言」「パンデミック」「ロックダウン」に耳を傾けました。

 日本は安倍晋三首相(当時)の「名演技」で従うふりをしてお茶を濁して「小中学校の学校閉鎖」で済みましたが、中国やイギリス、フランスのように「ロックダウン」した国は悲惨です。尊い命が失われ、産業が破壊されました。

 また、大型トラックのタイヤ脱落は、10年で12倍になったと言われます。タイヤ脱落のほとんどが左後輪です。理由は、海外に輸出しやすくする目的などで2010年にタイヤの取り付け方式が国内規格(JIS方式)から国際規格(ISO方式)に変わったことがあるとの指摘がされています。
それまで採用されていた日本独自の「JIS方式」では、右側の車輪のボルトは「右ねじ(右回し)」、左側は「左ねじ(左回し)」でしたが、新たなISO方式では左右輪とも右ネジです。この新方式を採用したトラックの増加と比例するかのように、脱落事故が増えているのです。

 我々の業界でも同じことが起きています。メーカーや問屋が持ち込んでくる「売れ筋情報」とは、スーパーだけでなく、コンビニを含めた全国ベースの出荷データです。

 このデータによると、醤油の1位は「キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて丸大豆生しょうゆ」、ぽん酢は「ミツカン味ぽん」、焼肉のたれは「キッコーマンわが家の焼肉屋さん」、ドレッシングは「キューピー深煎り胡麻」になるはずです。

 ところが、特定の地域の繁盛店となると全く違うデータになります。このデータのことをローカルデータと呼ぶとすると、醤油の1位は、「鎌田醤油」、ぽん酢は「旭ぽんず」、焼肉のたれは「戸村」、ドレッシングは「安本産業燻製ナッツ」かも知れません。

 日本一の魚屋「角上魚類」では、輸入サーモンには力を入れず、新潟のご当地サーモン「佐渡サーモン」に力を入れています。扱い魚種も太平洋側より日本海側、冷凍より近海・天然「生」がメインです。岩ガキ、紅ズワイガニ、ホッコクアカエビ、マツカワなどは扱い量日本一ではないでしょうか。

 上野御徒町「吉池」では、チリ銀は扱っておらず、天然鮭(時知らず・秋鮭・紅鮭)の山漬け(魚を山のように積み上げ、上下を入れ替えながら数日かけて塩漬けにする北海道の伝統的な製法。発酵と熟成を繰り返し、旨みを引き出す効果がある)の専門店を看板に掲げています。吉池で一番売れる豆腐は「おかめ」でなく新潟五頭村杉の「川上とうふ」、納豆も「おかめ」ではなく鈴木食品の「白糸」です。餃子は「紀文」ではなく「丸上」です。

 千葉県で焼肉の名店と言えば「今久」。前沢牛をメインに扱う老舗の人気焼肉店ですが、通常の焼肉店の〆が冷麺やビビンバであるのに対して、「今久」の〆は「和牛100%ハンバーグ」なのです。このハンバーグ、ふわふわと豆腐のように柔らかく、1枚300gぐらいのものが一人でペロリといけます。

 「グローバル」ではなく「ローカル」で行くことが人気者になるコツなのです。ところがほとんどの「ローカルスーパー」が、「大型店・チェーンストア」に憧れているのか、恐れ戦(おのの)くのか「グローバル」を志向します。これが不振の根本原因なのです。

 大型店と売る商品を変えると不思議なくらい儲かりだします。

 超地域密着のことを「ハイパーローカル」と言います。日本全国の「ハイパーローカル」を集めた売り場を作るのです。これを「ハイパーローカル『集合体』戦略」と言います。

 そうすれば、経営体質が変わってきます。一例を挙げるとグロサリー部門の粗利益率です。御当地アイテム、キラリと光るアイテムを導入することで、サラダ油、上白糖、カレールウ、インスタントコーヒー、カップラーメン、飲料、スナック菓子などのNBの無駄な特売がなくなり、収益構造は大幅に改善されます。

 生鮮部門も、「野菜は食べ物である」「本物を売る」「冷凍ではなく生魚を売る」「養殖より天然物を売る」など政策転換すれば、客層も変わり、同じく収益構造も激変するのです。

 業績の飛躍的向上のコツをまとめると次の通りです。
①    野菜は食べ物。旬の産地を売り込む
②    果物はスィーツ。味で選ぶ、完熟品を売る
③    まがい物ではなく本物を売る
④    鮮魚は冷凍より生。養殖より天然
⑤    本鮪、ブリ、鮭を売る
⑥    ブリはイナズマ回転切り。1日50本売る
⑦    薄利多売ホントの意味(厚切り・売価をこまめにいじらない)
⑧    和牛一頭買いに挑戦する
⑨    究極の海苔べん、和牛カルビ焼肉弁当あたまのダブルは1日100食ずつ売れる
⑩    ご当地丼、牛すじカレーに挑戦する
⑪    NBよりご当地アイテム。NBの特売をやめる
⑫    「毎日が物産展」。価格ではなく時間を売る。楽しさを売る

 値入率を見直し、ロスを減らしてカツカツになりながら目標粗利益率を目指すより、楽しみながら、仲間と喜びを分かち合いながら「新しいことに挑戦する」と結果として粗利益率は目標を遥かに超えます。そして、売上げは倍増しているのです。
 

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