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GAIASEED3

大滝ストリート

アモスが
フィユの手を取り
岩礁から飛び出す
手袋がすっぽ抜ける
のではないか心配だが
フィユの方も握り
返してくれたので
無事地上に着いた。

街の近くまで空間圧縮
一気に距離を縮める

奇岩の奥で
低い轟音が聞こえる

アモス
「街が近いな」
フィユ
「この音、滝?」
アモス
「それもデカい滝だぜ」
「フィユ、聞こうと
思ってたんだけどよ」
フィユ
「何?」
アモス
「何で追われたんだ?」

フィユは視線を落とし
真顔で答える

フィユ
「寝てる間に倒せると思ったの」

いやいや‥
スルーもしねえでこの荒野を生き残れると思ってたのかよ。

俺が居なかったら
旅はあそこで終わってたな‥

フィユはそれ以上
何も話さなかった。

町は広い
大通りが賑わっている

沢山の人々が行き交う

イベントや露店も多い。

滝は低い音を立てて
町を囲む様に流れる

アモス
「デケエ‼︎」
フィユ
「う、うん‥」

圧巻だ

フィユも言葉に
出来ずキョロキョロする。

アモス
「フィユ、行こうぜ!稼ごう!」
フィユ
「稼ぐって‥どうするの?」
アモス
「アレだよ。俺が相手する」
フィユ
「相手‥って」

異種族の巨漢
アモスが巨漢の前に立つ。

巨漢
「三戦三回勝利が条件だ」

その抜刀はするなと言う。

フィユ
「大丈夫?」
「体格も全然違うのに」
アモス
「ま、見てな」

fight‼︎
掛け合いで始まる。
アモスは消えた。

巨漢は混乱する。
刹那、尻に何かを
突っ込まれた

言葉にならない
絶叫がギャラリーに響く
誰もが尻を押さえる光景。

巨漢の尻に刺さったのは
アモスの一太刀‥
抜刀はしてないが
えげつない。

フィユも青ざめる。

アモス
「一戦突破」
「抜くぞおっさん」

アモスが太刀に触れる
その感触だけでも
悶絶する巨漢。

アモス
「二戦目どうする?」

巨漢は涙目で首を横に振った。

アモス
「変わり誰かやるか?」

刺さった一太刀を抜く。

巨漢
「あっ‥‼︎」

二戦目、筋肉質のゴブリン
頭にたんこぶが出来て
横たわる。

アモス
「次」

三戦目
筋肉質の巨漢が
ゴブリンの上に重なり
横たわる。

ゴブリン
「‥‥っ‼︎」
「‥‥っ‼︎」

アモスは背中で胡座をかく。
ギャラリーの歓声が響く。

巨漢から降り、
一息つくアモスの後ろで
巨漢の男が尻を押さえながら
立ち上がる。


「強いな坊主、我流か?」
アモス
「親父ゆずりだ」

「容赦無えな‥」
「褒美だ、泊まってけ」
アモス
「おっさん?」

「うちの宿な」
アモス
「フィユ!やったぞ」
フィユ
「え?私も良いんですか⁈」

「連れか。気にすんな」
アモス
「ありがとな、おっさん!」

「見ない顔ぶりだな?
どっから来た坊主」

アモスは説明する。


「荒野方面?
よくデカいのから
逃げて来れたな‥」

男はアモスに勝てない理由に
納得した。

アモス
「荒野で逃げてた所
助けたんだけどな」

「やるじゃねえか!
こりゃ敵わん訳だ!」

フィユが気まずそうに
視線を逸らす。
迷子でしたなんて言えない
表情で。

アモス
「フィユ、後ろの奴何だ?」
フィユ
「え?
「きゃ‼︎だ、誰⁈」

「わあ!し、失礼しました」

全身毛で覆う
ぬいぐるみの様な姿
六つに分かれた耳が伸び、
体の半分はある伸びた太い尻尾
突き出た耳に合わない
ヘルメット姿のマスコット 
小さく短い足。

「腰の杖を見て珍しいと
思いました」
フィユ
「尻を眺めてたんじゃないの?」
「ぶつわよ」

「杖からコロコロ音
がしたんです。
あと、ぶってます」

フィユが痛そうに
手をふるふるする。

アモス
「その耳、だから
聞こえるのか。じゃあ」
「死んだ奴の声も聞けるのか?」
フィユ
「⁈」

フィユの表情が険しくなる

毛まんじゅうが深妙な
顔立ちで答えた。


「彼女の前でそれ言いますか?」
「引いてますよ」
アモス
「‥‥‼︎」

マズイ、言い過ぎた時には
フィユは軽蔑の眼差しで
視線を逸らす。

フィユ
「アモス、やめて‥」
アモス
「‥すまん、悪かった」

毛まんじゅうが二人を
フォローする様に語る。


「ここまで来るのに、
色々あった事は察します。
声の濁りが感じられました」
アモス
「お前‥」

毛まんじゅうが穏やかに
微笑み、そっと答える。


「本音は違う。
裏返しの言葉は
出てしまうものですよ
人間だもの。そうでしょ?」
アモス
「‥‥不器用なんだ俺」

「理解は大切です。
責めてはいませんから」
「宜しければ、
その杖を見せて頂いても
良いですか?」
フィユ
「こんな杖を?」

フィユは目を細め
本気でこの杖を
見ようとしていたのかと
気付くと、毛まんじゅうに
そっと杖を出した

じっと見つめる
毛まんじゅうが
そっと答えた。

それは‥

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