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GAIASEED4

杖を見つめる毛まんじゅう。


「自己紹介が遅れました。
おいら、ナチ・リブレって
言います」
「音の正体はこの種ですね」
アモス
「種?」

杖の中にある種がコロコロ
言っていたのだとナチは話す。

ナチ
「生きているこの種と
旅をされてるんですね」

フィユが目の色を変える
種は死んでると言うが、
ナチはちゃんと生きていると。

フィユ
「そんな筈ないわ!
種の力で母さんは
生きながらえたのよ‼︎」
ナチ
「落ち着いて下さい。
微かに生きてるんです」

フィユが正常を失い、
感情のベクトルを周囲に
撒き散らす。

行き交う人々が足を止めて
フィユを見る。

フィユ
「私の目の前で母さんは
消えたのよ!」

エレアと名乗るこの種の力で
母親は生きて行く事が
できたのだと言っている。

フィユ
「それじゃ何、
自分が生き残る為に
母さんの命を
切り捨てたとでも言うの?」
アモス
「⁈」
ナチ
「そうではない筈です」
「種には語る力も無いんです。
それは察して下さい」
フィユ
「こんなのあんまりだわ‼︎」

その場で泣き崩れる。
フィユの嗚咽に人々も
黙り込む‥

アモスが少し目を閉じ
そっとフィユに歩み寄る。

アモス
「やっぱり俺と同じ
だったんだな‥フィユ」

フィユが反応する。

アモス
「俺も一人で旅してた
訳じゃない。三年前まで
親父と一緒だったんだ」

震える唇を噛み締め、
重い口を開くアモス。

フィユがアモスを見る。

アモス
「教えてくれ。その‥
お前の母さん、
最後どんな顔してた?」

フィユが俯き、
当時の光景を思い出す


フィユ
「母さん、呼んだ?」

具合が悪く、横たわる母親の
寝室に様子を見に来たフィユ

そこには今にも消えてしまう
母親の姿があった

駆け寄るフィユ。

廊下で泣き崩れる父親。


フィユ
「母さん!駄目、消えないで‼︎」
母親
「良いのよ。私も長く
生きすぎたの。
前に話した事、覚えてる?」
フィユ
「え?」
母親
「エレアの事、宜しくね」

そして、最後の言葉


フィユの顔が見れて幸せよ‥


そこに母親の姿はなくなっていた。



フィユ
「‥笑ってたわ」
アモス
「俺の時もそうだった」
フィユ
「 」
アモス
「気持ちは痛いくらいわかるぜ」

静寂が訪れる

フィユは涙目で我に返り
振り返るアモスの背中を見る。

アモス
「おっさん、案内頼む」
巨漢
「あ、ああ‥」

フィユが
涙を拭い、立ち上がる
すると‥

うつ伏せに失神した
巨漢から抜け出た
小柄のゴブリンが涙目で
立ち上がり大声を発した。

ゴブリン
「レディース&ジェントルマン‼︎」

フィユが目を丸くする。
アモスも迷惑そうに
視線を向けた。

ゴブリン
「辛い過去は数あれど、
涙を笑いに変えて早10年‼︎」
「少年、それがしは
テムジンと申す。
その語り、強さに
感慨をうけたぞ」
アモス
「 」
テムジン
「そこで!少年に
ジャグリング対決を申し込む!」

何処から出したのか、
幾つもボールを手に
アモスに投げつけた。

慌ててボールを受け取るも

アモス
「はあ?何言ってんだお前‥」
巨漢
「面白そうだな。
坊主、付き合ってやれよ」
アモス
「な⁈」
巨漢
「笑いに変えるなら、
楽しんでけよ。
今日はフェスティバルだ
湿っぽい話題は、こんな
ストリートでするもんじゃねぇ。
嬢ちゃんもな」
フィユ
「‥‥‥」
テムジン
「少女!」

テムジンがボールを投げる

フィユ
「へ?わ、私も⁈」

投げたボールを
フィユの頭の上の奴が上に
高く弾き飛ばした。

テムジン
「そう!こう
投げるんであります!」
アモス
「ああクソ!やってやる‼︎
見てろ‼︎」


みんなが笑う。

暗く悲しみに満ちた思いから
解放されていくのを
ギャラリーの歓喜と共に

孤独な旅路から人々との
関わりの中で

フィユは慌てながらも
少しずつ感じ取り初めていた。

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